【人事担当必見!】入社・退社のときに必要な手続きはココがポイントだった!

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公開日:2016.4.1

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春になると入社や退社、人事異動があります。人事の仕事の中で入社と退社に関連して行う手続きは数が多く、とても負担が大きい仕事になります。ミスのないように、入社日や退社日を迎えるため、入社と退社の際に一般的に必要となる手続きのポイントをまとめました。

入社・退社を管理するときのポイント!

入社・退社の際は、雇用保険や社会保険などの法律に基づく手続きのほかに、社内の規則に沿った手続きが必要となります。経験がある人にとってはそれほど負担ではないことも、初めての人にとってはイメージがつかみにくく負担に感じやすいものです。

しかし、チェックリストを作ることで漏れをなくし、決められた方法で期限内に提出するなど、ポイントさえ押さえておけば手続きを問題なく終えることができます。

入社・退社のそれぞれについて「本人が行うこと」と「事業所の担当者が行うこと」があり、また、「法律に定められたもの」と「社内のルールに基づくもの」に分けることができます。バラバラに理解するよりも、一つのまとまりを作る方が理解しやすくなるでしょう。

 

入社の際に必要な手続き

新しく人を雇用したときには労働基準法をはじめ、雇用保険や健康保険などに関係した手続きが必要です。

労働基準法

労働基準法は労働契約や賃金、また、労働時間や就業規則などについて定めており、勤怠管理のうえでも極めて重要な法律です。

本人が提出する書類

  • 卒業証明書
  • 成績証明書
  • 入社誓約書
  • 身元保証書

入社時に必要な書類と提出期日は就業規則で確認し、漏れのないように提出を依頼しましょう。

事業所が行うこと

  • 労働契約を結ぶ
    まずは、「労働条件通知書」を交付して労働契約を結びましょう。労働条件通知書には労働契約の期間や賃金などの「絶対的明示事項」と呼ばれる5項目を明示しなければなりません。また、「相対的明示事項」として賞与や休職、表彰などを明示することもあります。働き始めてからの労使間トラブルを防ぐために労働条件通知書による書面での明示が必要です。
  • 労働者の記録を作成する
    さらに、労働基準法は労働者名簿などの記録についても定めています。労働者名簿や賃金台帳、勤怠管理に必要な出勤簿やタイムカードなどの作成が必要です。なお、退社日などの「起算日から3年間」の保存義務があります。

関連記事:
労働者名簿・賃金台帳・出勤簿 法定帳簿をきちんと整備していますか?

 

事業所が行うこと

  • 「雇入れ時健康診断」の実施

労働安全衛生法により、正規労働者のみでなく、一定の条件を満たした短期労働者を含めて人を採用した場合には「雇入れ時健康診断」を実施する必要があります。しかし、3か月以内の健康診断書を提出すると省略が可能です。

労働保険と社会保険

労働保険には労働者災害補償保険法と雇用保険が含まれ、社会保険の主なものは健康保険と厚生年金保険です。このうち、一日のみのアルバイトを含めすべての労働者が加入する労災保険は労働者からの保険料徴収はなく、入退社時の手続きは特に必要がありません。

本人が提出する書類

  • 年金手帳(あるいは年金証書)
  • 雇用保険被保険者証(前職がある場合)
  • 事業所が行うこと「資格取得届」の提出

労災保険を除く、雇用保険、健康保険、厚生年金保険は一定の加入条件を満たす場合はそれぞれの「資格取得届」を提出する必要があります。手続きを進めるには「年金手帳(あるいは年金証書)」を提出してもらうことが必要です。基礎年金番号の確認後に年金手帳は返却するためコピーをとっておくとよいでしょう。前職がある場合は「雇用保険被保険者証」を回収し、被保険者番号を確認して退社時まで保管します。

雇用保険

事業所が行うこと

  • 「雇用保険被保険者資格取得届」の提出
    「雇用保険被保険者資格取得届」を入社した月の『翌月10日まで』に「所轄のハローワーク」に提出します。

健康保険と厚生年金保険

事業所が行うこと

  • 「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」・健康保険被扶養者(異動)届」の提出
    「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」は入社した日から『5日以内』に「年金事務所」に届け出をします。また、健康保険については被扶養者がいるときは「健康保険被扶養者(異動)届」も必要です。
  • 「国民年金第3号被保険者届」の手続き
    さらに、60歳未満の配偶者が国民年金第3号被保険者になることを希望した場合は「国民年金第3号被保険者届」の手続きも行います。

なお、労働保険や社会保険の手続きは電子申請も可能なので利用するとよいでしょう。

税金関係

本人が提出する書類

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得の源泉徴収票(前職がある場合)

事業所が行うこと

  • 住民税・所得税の手続き
    事業所の担当者がかかわるのは住民税と所得税です。住民税は前職がある人にはこれまでの徴収方法(一括納付、または特別徴収)を確認し、市町村で手続きをします。
    また、所得税は扶養する親族がいる場合は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を基に給与の源泉所得税を算出します。
  • 「源泉徴収簿」の作成
    さらに、「源泉徴収簿」の作成も必要です。前職がある人には、以前の職場から「給与所得の源泉徴収票」が本人に交付されているので入社の時点で提出してもらいましょう。「年末調整のときに回収すればよい」と考えると本人が「紛失した」など支障を来すことが少なくありません。

関連記事:
源泉徴収票、支払調書―法定調書の範囲について解説

法律の定め以外に必要なこと

新しく人を採用し、業務を支障なく行えるようにするには法律に定められたもの以外に多くの準備が必要になります。多種にわたりますが、新入社員が気持ちよいスタートを切れるように歓迎の意味も込めてしっかり準備しましょう。

本人が提出する書類

  • 通勤に関する申請書
    通勤経路や通勤手段、交通費を確認します。

事業所が行うこと

  • 給与の振込口座の確認
    入社前の確認が望ましいです。
  • 社員証や社章、名刺、組織図などの準備
    紛失のないように留意してください。
  • 制服、作業着などの準備
    事前にサイズ確認が必要です。
  • パソコンの準備
    メールアドレスを含めすぐに使えるようにネット環境を整備してください。
  • その他
    業務用携帯や事務用品などを準備します。

関連記事:
雇用のルールを完全マスター!労働関連制度まとめ<前編>
雇用のルールを完全マスター!労働関連制度まとめ<後編> 

 

退社の際に必要な手続き

退社の際にも法律に則った手続きや社内で決められた事項に基づいて行うことが数多くあります。また、退社の場合、退社した後に連絡が取りにくくなるケースも多く、返却や提出が必要になったときになかなか対応してもらえず担当者が困ることも少なくありません。この点が入社時と大きく異なる点です。退社前に済ませておくことを確認し、漏れのないようにしましょう。

本人から回収するもの

  • 健康保険証
    本人と扶養親族の分もすべて回収します。
  • 社員証
  • 社外秘資料
  • 制服・パソコンなど会社からの貸与物

雇用保険

事業所が行うこと

  • 「雇用保険被保険者資格喪失届」の手続き
    本人が「離職票」の交付を希望しているときや59歳以上の人が辞めるときには「雇用保険被保険者離職証明書」の作成も必要です。資格喪失届に離職証明書を添えて所轄のハローワークに提出するとハローワークから「離職票」が交付されるので本人に渡してください。なお、被保険者喪失届の提出期限は『翌日から起算して10日以内』です。

関連記事:
退職時の書類、「離職票」と「退職証明書」の違いとは?

健康保険と厚生年金保険

事業所が行うこと

  • 「資格喪失届」の提出
    退社の事実が発生してから『5日以内』にそれぞれの「資格喪失届」を提出することが必要です。
  • 「健康保険脱退証明書」の作成
    また、国民健康保険への切り替えなどに必要な「健康保険脱退証明書」を作成し、本人に渡します。
  • 「健康保険任意継続」の手続き
    なお、「健康保険任意継続」を希望する人も少なくありません。健康保険に2か月以上の加入などの利用条件を満たす人には希望を確認してください。手続きは年金事務所で行います。

税金関係

事業所が行うこと

  • 「給与支払報告に係る給与所得異動書」の提出
    住民税を「特別徴収」の方法で給与から天引きしていた場合は、市町村に「給与支払報告に係る給与所得異動書」を提出する必要があります。
  • 「源泉徴収票」の交付
    所得税の「源泉徴収票の交付」は退職の日から1か月以内です。

 

退職後の履歴書等の個人情報の保管に関する注意点

入社時の準備のところでも説明しましたが、労働基準法では雇入れや退職に関する書類の保管義務や期間を定めており、保管期間は「3年間」となっています。しかし、最低限度の保管期間で破棄してしまうと支障を来す可能性もあり、一方、むやみに長期間にするのはマイナンバーも含め個人情報を適正に管理するうえでは好ましくません。

厚生労働省は個人情報に関する指針の中で、継続した個人情報の安全管理や利用目的以外の利用禁止などの留意点を示しています。「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」などを参考にして個人情報管理について社内で検討しておく必要があるでしょう。

なお、民法の債務不履行で生じる損害賠償債務の時効を考慮した場合、10年間の保管が必要であろうといった指摘もあります。

関連記事:
労務担当者が気をつけるべき労務リスクまとめ<前編>
労務担当者が気をつけるべき労務リスクまとめ<後編>

 

必要な書類・手続きのチェックリスト

入社・退社それぞれの際に必要な書類、手続きのチェックリストを作成しました。是非リストを参考に、入社・退社時に必要な手続きを漏れなく行いましょう!

入社時

退社時

 

まとめ

入社と退社のときには多くの手続きがあり、やや似たようなものもあるため混乱しやすい面があるでしょう。しかし、チェックリストを参考にして一つひとつ確実に行っていけばこなせる仕事ともいえます。

提出先が遠方などの場合、手続きに出向くことは負担が大きいものです。電子申請などの新しい手続き方法も活用し、労働者の入社・退社の手続きをスムーズに行いましょう。

引用元:
厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針について

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