労務担当者が気をつけるべき労務リスクまとめ<前編>

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公開日:2017.9.18

企業は「ヒト」の集合体として成り立っているため、労務関連のトラブルを抱えるリスクはどの企業からも切り離せないものです。近年は長時間労働やハラスメント、情報漏えい等の問題が注目される中で、労務リスクの管理への関心も高まっています。労務関連のトラブルを避けるためには、問題が顕在化する前に労務担当者がチェックを行い、適切な対策を講じることが必要となります。

今回は、企業の労務担当者が気をつけるべき労務リスクについて、まとめて紹介します。

長時間労働をめぐるリスク

欧米諸国と比較して労働時間が長いとされてきた日本において、長時間労働の是正が喫緊の課題と認識され始めています。長時間労働は、従業員の肉体的・精神的健康状態に悪影響を及ぼし、結果として過労死や過労自殺に繋がるリスクが懸念されます。

2017年現在、従業員の労働時間は、労働基準法の時間外・休日労働に関する協定届、通称「36協定」によって規制されています。これは、

  • 1日8時間、週40時間を超えて従業員が労働する場合
  • 法定休日に労働する場合

に、書面によって協定を締結し、所轄の労働基準監督署に提出することを企業に求める制度です。

しかし、女性の活躍をはじめとした、近年の労働力の多様性確保の要請を実現するためには、仕事と育児や介護の両立、ひいては更なる長時間労働の是正が必要となります。
そのため政府は、2019年4月に取りまとめられた働き方改革関連法において、36協定でも超えることのできない罰則付きの時間外労働の限度を、具体的に定めました。
これにより、特例の労使協定を結んだ場合でも下記のような労働時間の上限が定められます。

  • 2ヶ月もしくは6ヶ月で平均した法廷労働時間が、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならない
  • 単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならない
  • 時間外労働時間の限度は1年あたり720時間かつ1ヶ月当たり100時間とする。ただし、原則である1ヶ月当たり45時間を超えることができるのは6ヶ月までである。

長時間労働の是正については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
知らないと恥ずかしい?人事担当者なら知っておきたい労働基準法
過重労働の予防は企業の義務!勤怠管理を通して予防を図る
働き方改革実行計画が決定!Vol.2 〜長時間労働の是正について〜

また36協定等の締結については、下記URLからダウンロードできる「お役立ち資料」で詳しく解説していますので、是非参考にしてみてください。

関連記事:
労使協定の結び方マニュアル

 

 

残業代不払いをめぐるリスク

厚生労働省の調査によると、2015年度の不払残業代は約100億円にものぼるとされ、管理職による強制や従業員本人の判断による、「サービス残業」が横行していることがわかります。

関連記事:
2015年度の不払残業代は約100億円!—監督指導による賃金不払残業の是正結果について

残業隠しや過少申告による残業代の不払いは、以下のような問題に繋がるリスクが懸念されます。

  • 労働基準監督署による是正勧告
  • 遅延利息や付加金の支払い
  • 訴訟による企業イメージの低下

残業代不払いの問題を起こさないためには、社員教育に加え、適切な勤怠管理システムの導入など、勤務時間を正しく管理できる社内の仕組みを作ることが大切になります。

残業代不払いのリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
判例から見る!残業代未払いが企業に与えるリスク
残業代はすべて割り増しに?労働基準法で定める割増賃金とはどんなもの?
年棒制でも残業代の支払いが必要?!年棒制の性質や注意点について解説!

 

労働契約に関するリスク

契約の締結や労働条件の変更、解雇などに係る労働契約は、労働基準法・労働契約法等の法律の範囲内で定められ、労働に関する項目を書面にて明示することを求められます。

適切な労働契約が結ばれていないと、以下のような労務トラブルを招く恐れがあります。

  • 従業員区分が定義されていないことによる、賞与、退職金等支払い対象の拡大
  • メンタルヘルスによる休職等、特殊な状況を想定していないことによるトラブル
  • 定額残業制度の不備による、残業代支払い範囲の拡大

労働契約に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
無用なトラブルを防ぐ雇用契約書の交わし方
労働契約法改正!5年以上働くと無期労働契約が可能に
【改正】労働契約法(2)無期労働契約への転換
【改正】労働契約法(3)不合理な労働条件の禁止

 

労働基準監督署調査のリスク

労働基準監督署による立ち入り調査(以下、労基署調査)においては、労働基準法等の法令に違反していないか詳しく調査され、違反が発覚した場合は行政処分や刑事告訴に繋がるリスクがあります。突然、労基署調査が来る可能性に備え、普段からどのような点を調査されるか把握し、対策を練る必要があります。

労基署調査では、主に以下のポイントが調査されます。

  • 就業規則が適法かつ実態に即しているか
  • 労働時間の管理が適切に行われているか
  • 賃金支払いに不備はないか
  • 安全衛生管理が行われているか

労基署調査に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
労働基準監督署って、どこを見るの? 労基署調査、徹底攻略!

 

労働災害のリスク

従業員に対する安全衛生管理を怠った場合、業務上の事由または通勤による負傷や死亡等の労働災害が発生するリスクが高まるため、注意しなければなりません。労働災害の発生は、従業員が被害を受けるのみでなく、以下のポイントにおいて企業に多大な不利益をもたらします。

  • 人材の喪失
  • 補償による金銭的負担
  • 信用の失墜

労働災害を未然に防ぐためには、安全衛生に関するリスクを事前に評価するなど、災害を防ぐための適切な管理体制を構築する必要があります。

企業の安全衛生管理や、万が一労働災害が発生した場合の対応については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
労働安全衛生マネジメントシステム導入のススメー安全衛生計画作成マニュアル
労働者死傷病報告を適正に提出していますか?「労災かくし」は犯罪です!

 

まとめ

労務関連のトラブルは多く発生しており、従業員や会社の利益を守るためには、トラブルが発生する前に、そのリスクを回避する努力をする必要があります。

今回まとめた記事を参考にし、労務リスクを適正に管理できる仕組みを構築しましょう。

関連記事:
雇用のルールを完全マスター!労働関係制度まとめ<前編>
雇用のルールを完全マスター!労働関係制度まとめ<後編>

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