日本企業の成長・飛躍のための外国人留学生採用戦略

カテゴリ:
tag:
公開日:2019.6.11

本記事は、杉田昌平氏を講師として2019年5月30日に開催いたしました「外国人材受入れのための法務・労務-共生社会における企業の役割」セミナーの内容の一部を抜粋したものとなります。

ぎょうせい様セミナー

はじめに

現在日本は、少子超高齢社会にあり、企業は、優秀な人材を獲得することに苦慮しています。しかし、入管法の改正によって、外国人材を積極的に採用することが可能になりました。今後は、企業の発展・飛躍のためには、外国人材に活躍してもらうことが不可欠だと思われます。

そこで、今回は、少し視点を変えて、日本に留学している外国人の採用の道筋について解説します。制度の全体や詳細については、『改正入管法対応外国人材受入れガイドブック』(2019年、ぎょうせい刊)に解説しております。

在留資格制度

外国人には、1人1つの在留資格が付与されます。この在留資格は、①働くことができるものと、②働くことはできないものがあります。そして、外国人材は、原則として、在留資格の範囲でしか報酬を得る活動ができません。

例えば、留学は、大学等に行って勉強する資格であり、働くことはできません。また、技能実習は、技能実習のための研修・座学ための資格ですが、高度専門職や特定技能の仕事をしてはいけないのです。一方で、高度人材と言われる在留資格(技術(理系)・人文知識(マーケティング、経理など)・国際業務(通訳など))は、ホワイトカラーの仕事のための資格ですが、特定技能や技能実習でするべき活動を専ら従事することはできません。

つまり、通訳として採用したものの、飲食店で主として店員として働いてもらうことは、資格外活動となってしまいできないのです。ですから、採用する企業は、自らのニーズに対応した在留資格を持つ者を採用する必要があります。

個別の在留資格――高度専門職

高度専門職は、取得するのが最も難しい資格です。

  1. 高度学術研究活動
  2. 高度専門・技術活 動
  3. 高度経営・管理活動

の3つがあります。

高度専門職は、年収、年齢、出身大学など様々な項目にポイントがふってあり70点以上かつ報酬年額合計が300万円以上で資格を取得できます。

資格の性質上、これまでは、大学院修了者が多かったのですが、日本の大学で修士号を得ていれば、該当します。しかも、これまでは、13の大学のいずれかを修了した者について20ポイントが付与されていたのですが、現在は、100大学以上に拡大しました。つまり、今後、留学生は日本で非常に就職しやすくなります。

しかも、高度専門職は優遇措置があり、最初から5年の在留資格が認められます。また、在留資格で認められている活動範囲が広く、様々な職種に携わることができるのです。ですから、企業におけるジョブローテーション制度にも対応でき、様々な職種を体験することができます。

個別の在留資格――技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務は、技・人・国(ぎじんこく)と略され、高度人材という類型の中で最も多い資格です。

技術とは、大学等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連し理科系の業務行う活動です。理系の関連の大学・学部を修了し理系の関連の仕事に携わるときには、技術の在留資格を有することとなります。

人文知識は、経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的知識を必要とする文化系の活動です。文系の関連の大学・学部を修了して文系の関連の仕事に携わるときには、人文知識の在留資格を有することになります。

国際業務は、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等の外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性に基づく一定水準以上の専門能力を必要とする文化系の活動です。外国人材特有の感性を生かす場合には、国際業務の在留資格を有することが必要になります。

なお、大学の学部新卒で日本で就職する留学生は、「留学」からこの「技・人・国」に資格を変更することが多いと思われますが、日本の大学に限らず、外国に所在する大学の学部新卒でも取得することができる可能性があります。

また、「技・人・国」は、前述の高度専門職よりも資格を取得しやすいと言えます。特に2019年4月から企業の申請がしやすくなりました。厚生労働省の認定を受ければ、手続の負担は軽くなっています。

個別の在留資格――特定活動

入管法に規定されている在留資格は、日本で行う活動を類型化したものですが、現実には全ての活動を類型化することは不可能です。そこで、類型化が難しい活動について、上陸又は在留を許可する場合に与えられる資格が「特定活動」です。

一定の日本語能力を有する日本の大学学部課程を卒業しまたは大学院課程を修了した者について就労可能な特定活動が開始されます。

特定活動という在留資格は、以前は、技術は理系の業務、人文は文系の業務という制約がありました。現在では、学習内容との関連性はゆるやかになり、法務大臣の告示で活動が認められると特定活動として在留資格が認められるので、勤務できる仕事の範囲が広がるのではないかと思われます。

企業に期待される役割

外国人材は非常に日本に期待しています。留学生も、技能実習生も、日本で稼いで故郷で家を建てたい、家族を楽にさせたいと思っているのです。ですから、きちんと給料を支払って、経済的基盤を安定させてあげる必要があります。こういったことがその後の失踪を防ぐことになると思います。

また、外国人材の職業社会、役割をきちんと与えてあげて活躍できる場を提供してあげれば、企業としても発展できるのではないかと思います。

改正入管法によって、労働市場に大きな門戸が開かれました。外国人材の方に経済的基盤、社会的基盤、キャリアアップの基盤を提供できるのは受入企業の皆さんだと思います。

ぜひ、新たな制度を活用して企業の成長・飛躍のきっかけとしてください。

関連記事:
人事・労務担当者が知っておきたい外国人材受入れのポイント
企業の人事・労務担当者が「特定技能」や「技能実習」で外国人材を受け入れる際に押さえておくべき初歩のポイント

こちらも読まれています:

ぎょうせい様セミナー
この記事が気に入ったら いいね!しよう
somu-lierから最新の情報をお届けします

この記事に関連する記事