役職定年制・役職任期制のメリット・デメリットを解説

カテゴリ:
tag:
公開日:2017.11.20

役職の登用を決定する制度には、年齢に応じて定年を定める「役職定年制」と、一定期間の任期を定める「役職任期制」の2種類があります。国内の企業では、役職定年制を採用する企業が多いですが、組織の新陳代謝を高める意味合いでは役職任期制が優れており、どちらを採用するかには一考の余地があります。今回は、役職定年制・役職任期制を導入する目的、またそれぞれを比較した場合のメリットとデメリットについて解説します。

役職定年制と役職任期制の違いとは?

この2つの制度はどちらも会社の役職に就く社員の入れ替えを定期的に行うことで、会社に新しい風を吹かせることに目的があります。しかし、これら2つは社員の会社の役職に就く期間をどのように定めるかという点で異なります。

役職定年制とは

役職定年制とはある一定の年齢に達するまでを役職の任期とする制度です。設定された年齢に達すると役職から外れることになるので、一定年齢以上の社員は役職につくことがありません。役職から外れた後は再び平社員として勤務することになります。

役職任期制とは

役職任期制とは任期を予め定めて社員を役職に登用する制度です。任期が満了すると任期中の役職の成績が評価され、その評価に応じてその社員の再任、降職、昇進、異動が決定されます。

 

各制度のメリット

両制度に見られるメリット

両制度とも「人件費の抑制」、「組織の肥大化の抑制」、「組織の新陳代謝の促進」が期待できます。これはどちらの制度も役職の任期を定めて役員の入れ替えを行うからです。

役員の入れ替えが行われないと、役職がいつまでも同じ社員で埋まったままになり、会社に貢献する能力があっても、他の社員は役職に就くことができません。これらの社員を役職に就かせるために新たな役職を設けると、役職が増えた分だけ人件費がかさんでしまいます。また、役職が増えると意思決定にかかる時間が伸びてしまいます。役員が定期的に入れ替わることが決まっていれば、役職を無理に増やす必要もなくなり、また新たな役員が選ばれることにより会社の運営にも新しい風が吹くようになります。

それでは各制度の違いによってどのようなメリットが生じるのでしょうか。

役職定年制のメリット

役職定年制では定年退職の年齢になる前に役職から外れることが決まっています。これは若手の社員にとって確実にチャンスが回ってくることになるので、仕事へのモチベーションに繋がります。また、役員が役職から外れた後も退職せずに会社に勤務することで若手を支えることができ、若手の育成をする機会が生まれます。

役職任期制のメリット

役職任期制では任期が終わるごとに役員の適・不適が評価されます。この評価によって昇進、降職などが決まるので、競争意識が高まり社員のモチベーションに繋がります。また、評価を厳密に行うことによって実力主義・能力主義の強化が図れます。

 

各制度のデメリット

役職定年制のデメリット

役職定年制を導入すると、役職に就いた後の社員のモチベーションをかえって下げてしまうことが懸念されます。
役職に一度就いてしまえば大きなミスをしない限り、役員としての業績に関わらず任期は決まってしまいます。どれだけ業績を上げても、定年を超えて役員をすることはできないということが、モチベーション低下につながります。また、役職を経験した後に平社員として勤務することは、賃金の低下や社内における影響力の低下が感じられることとなり、役職退任後のモチベーション低下を生みます。
さらに、実力のある役員や適任な後継者のいない役員などに対して、例外を認めてしまうと、不公平な制度となってしまうというデメリットも挙げられます。

役職任期制のデメリット

役職に就いている期間の業績が評価され、それをもとに自身の進退が決まるとなると、役員への精神的負担は大きなものとなります。また、評価基準が明確でかつ厳密に評価されなくては、役員の不安がさらに大きくなります。さらに役職に就いていない社員から不信を買うことになります。
また、短い任期中に実績の評価、役員の再任・異動が決まるため、徐々に実力を発揮する人材は登用されにくくなってしまいます。さらに、短いスパンでの役員の交代に、会社の方針が定まりづらくなることも懸念されます。

 

どちらを採用するべき?

ここまで役職定年制と役職任期制のメリット・デメリットを紹介してきましたが、どちらの制度を採用するのが良いのでしょう。

以下に、それぞれの制度のメリット・デメリットをまとめました。

 

メリット

デメリット

役職定年制

・人件費の削減

・組織肥大化の抑制

・組織の新陳代謝の促進

・若手の意欲増加

・若手の育成

・役員の意欲低下

・役職退任後の意欲低下

役職任期制

・社内での競争意識

・実力主義の促進

・役員への精神的負担

・厳密な評価の必要性

・有能な人材の登用漏れ

・会社の方針の不安定

役職定年制では社員のモチベーションを保てるかどうかという点に懸念があり、役職任期制では能力評価に伴う問題が見られます。これらを解決するためには以下のような案が考えられます。

役職定年制のデメリットへの対処法

役職を退いた後にもモチベーションを保つためには、仕事にやりがいを感じる必要があります。対処法として、退任後の社員の、会社における役割をハッキリとさせるための意識改革をすることが考えられます。そのためにも、退任後の活躍の場が用意されているとよいでしょう。
また、転職によるキャリアアップを支援する制度を設けることで、社内だけでなく社外を視野に入れて仕事をすることができ、モチベーションを上げることに繋げる方法もあります。

役職任期制のデメリットへの対処法

まず、役員にかかる精神的負担の軽減するためにも評価基準の明確化はしなくてはなりません。また、役員が降職となった後のケアも必要です。降職となると、自信の喪失からモチベーションの低下を招くおそれがあります。
一方、人材登用の幅を広げることや会社の方針の安定と改革を同時に図る方法としては、役職によって任期の長さや評価基準を変えることが考えられます。これにより能力の発揮の仕方が違う人材を、適材適所に登用することが期待できます。

このように各制度の弱点に対策を立てて運用することで、制度のより効果的な運用が期待できます。年齢をある程度重視するか、実力主義を進めていくか。どちらが適切なのかは、会社によって異なります。したがって、どちらが会社の方針と合致する制度であるかを吟味する必要があるでしょう。

 

まとめ

役職定年制と役職任期制のどちらもが、新しい人材を役職に登用することが望めます。役員だけでなく、社員全員のモチベーションを高めることで、会社全体のやる気を引き出していくような組織運営を目指すことが望まれます。

こちらも読まれています:

この記事が気に入ったら いいね!しよう
somu-lierから最新の情報をお届けします

この記事に関連する記事