知らないと恥ずかしい?人事担当者なら知っておきたい労働基準法

カテゴリ:総務のおいしい話 投稿日: 2016.8.28 tag: , , ,

働いている人の中でも「労働基準法」を知っている人は少ないことでしょう。しかし、人事労務担当になった場合、その役割を果たすには労働基準法を避けて通る訳にはいきません。ここでは、労働基準法の基礎的な知識と思い違いをしやすい点などを紹介しながら、どのような法律かをご紹介します。

 

そもそもどんな法律?労働基準法のキホンの「キ」

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労働基準法は使用者と従業員の労働関係に関する定め(ルール)、あるいは労働時間や賃金などの労働条件に関する最低基準を定めた法律です。とかく労働者は使用者よりも弱い立場になりやすいものですが、労働基準法は「労使対等の原則」に立ち、労働者としての権利、勤労権を守ることを目的としています。

労働基準法が定めているのは、次のような働く上で重要な項目の最低基準です。そのため、自社の就業規則などにおいて労働基準法のラインを上回る条件にすることは問題がありません。しかし、基準を下回ることは許されず、労働基準法に違反すると罰則の対象となります。

・労働契約

・賃金

・労働時間や休憩、休日

・時間外労働と割増賃金

・就業規則

・年次有給休暇 など

 

あなたは大丈夫?間違いやすいポイントはここ!

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ときどき「私は週1日の勤務だから有休がないの」、「うちの会社は定額残業代だから何時間、残業しても給料が変わらないんだ」という人がいます。これらの人は、労働基準法に照らし合わせると思い違いをしているようです。それはどの点か?説明できますか。

 

  • 週1勤務でも「比例付与」で有休が取れる!

週20時間程度の短時間勤務の人でも、週にたった1日の勤務でも、次の条件をいずれも満たす常用労働者であれば、「比例付与」によって年次有給休暇の取得が可能となります。

・所定労働日数が、週あたり4日以下、あるいは年間に216日以下の場合

・週の所定労働時間が、30時間未満の場合

付与される日数は、「原則的な付与日数×週の所定労働日数÷5.2」で求めます。

 

  • 慣例的にしていることが適正とは限らない

定額残業代制度は、一定の要件を満たしていれば労働基準法の違反にはなりません。しかし、定額残業代の中に含まれている残業(法定時間外労働)の時間数を超えて働いた場合は、超えた分の割増賃金が別に必要になります。そのため、定額残業代でも、給料が同じとは限りません。

定額残業代制度を導入するには、残業代とその他の賃金を明確に分け、定額の中に含まれる残業代は何時間分なのかなどを就業規則などに明らかにしておくことが重要です。

また、業務開始前の準備作業や朝礼、機械の点検や仕事に必要な制服への更衣に要する時間は、過去の判例をみると労働時間とみなされています。さらに、昼休みに電話番や来客の対応をさせたときなど使用者の指揮命令下にあった場合は労働時間と判断されるため、注意が必要です。

「これまでずっとそうだったから」という理由は通りません。自社の所定労働時間と労働基準法で定めている法定労働時間の違いなどをきちんと理解し、「残業代の未払い」が生じないように気をつけましょう。

 

あいまいな知識は危険!特例も多い労働基準法!

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  • 原則をしっかり押さえて特例や例外にも注意する

あいまいな知識、不確かな情報を確認もせずに思い込みで使うのは危険です。よく調べたら特例や例外があった、特別措置が適用される期間だったなど、後で気づくのでは困ります。しっかり確認する癖をつけましょう。

たとえば、法定時間外労働に対する割増賃金は「2割5分以上」ですが、1か月の時間外労働が60時間超となったときには超過分の割増賃金は「5割以上」になります。この割増率の引き上げは、中小企業への適用は平成28年7月時点では猶予されていますが、近い将来、猶予が廃止されるとの見方が有力です。中小企業の方は、今後の法律改正に十分、注意してください。

ところで、このような特例を見逃さずに適切な支払いをするには、何が必要でしょうか。法律を理解し、労働時間と判断されるものを知る、また、勤怠管理によって労働時間を正しく把握することが求められます。そのためには、自社の勤怠管理方法が適切かといった視点も必要でしょう。そして、月に60時間を超える残業をしなければならないのはなぜか?業務の量や偏りなどの問題がないかを検討し、長時間残業の削減に取り組んでいく姿勢が大切です。

 

  • 管理・監督者の割増賃金はすべて不要か? 

2008年、ファーストフード店の店長が起こした裁判を機に「名ばかり管理職」という問題がマスコミで取り上げられたのを記憶している方も多いでしょう。管理・監督者は労働時間や休憩、休日に関する原則が適用されず、時間外労働の割増賃金も発生しないという特徴があります。しかし、労働基準法のいう管理・監督者の要件をきちんと満たしていない「名ばかり管理職」が多く、実際には割増賃金が必要となるケースが少なくないのです。

さらに、労働基準法で定めた管理・監督者に該当する場合でも「割増賃金は一切、不要」といった認識は誤りで、深夜労働に当たる部分は割増賃金の対象となります。とかく、裁判に発展すると、企業側は割増賃金に見合うような「管理職手当」を支払っているという立場をとりますが、多くの場合、就業規則などに明記していません。もし、管理職手当に一定の割増賃金額を含めているとすれば、就業規則などで予め明らかにしておくことが必要になるでしょう。

 

  • 女性の管理・監督者は産前産後の保護規定に注意 

管理・監督者の規定は、女性の場合も男性と同じように適用されます。しかし、妊娠や出産をしたときには産前産後の保護規定(労基法、66条)が優先されますので注意が必要です。そのため、管理・監督者を含め妊娠中の女性労働者から「請求」があった場合は深夜業だけでなく、時間外や休日に労働させることもできません。

 

「36協定」の知識もしっかり押さえる!

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事業者が時間外労働を合法的に行わせるには、労働基準法の36条に規定された「36(さぶろく)協定」の締結と届け出が必要です。36協定は、「法定労働時間」を超えた時間外労働、あるいは「法定休日」の休日労働に関する労使協定で、締結後に労働基準監督署に36協定書を届け出ることで効果を発揮します。

なお、残業には「1か月、45時間」などのように残業時間の限度が定められているので社員を制限なく働かせてよい訳ではなく、割増賃金が不要になる訳でもありません。また、複数の事業場があるときは事業場ごとに締結し、届け出を行う必要があるので注意してください。届け出先は、それぞれの所轄、事業場がある所在地を管轄している労働基準監督署となります。

 

改定にも注意!最新の法律適用でトラブルを回避

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  • 定年後の再雇用では業務が同じなら賃金も同じ?

定年退職した人の再雇用における賃金について、平成28年年5月、東京地裁で一つの判決が出されました。「業務内容や責任が同じで、賃金に差があるのは違法」とし、不合理な差別を禁じている「労働契約法」に違反するという判決です。しかし、再雇用に限らず、定年間近になると賃金が下がるという企業も少なくないようです。この判決は平成28年7月現在、確定していないようですが、今後の再雇用者の賃金にも影響を与えることでしょう。

労働問題について出された判決が、自社にすべて当てはまる訳ではありません。しかし、人事担当者としては労働問題に関する判決には関心を寄せ、労働基準法をはじめ労働関係の法律を遵守するという労務コンプライアンスの重要性をいつも意識に置きましょう。

 

  • 改定などの変化を正しく把握して仕事に活かす

現在、過労死や労災などの健康問題、失業の問題や所得の格差なども含め労働に関する問題は深刻となっており、社会情勢に合わせて法律の成立し、また、改定も行われています。今はネットで多くの情報が検索できますが、古い情報でトラブルを発生させないように、常に新しく正確な情報を入手するようにしましょう。引用してある情報の場合は、手間はかかりますができるだけ元の情報で確認し、正しい情報を使うことをお勧めします。

 

まとめ

労働基準法は労働者の弱い立場から「労使対等」への立場にもっていくために、これまでにも多くの改定がありました。労働基準法はやや難解な上に改定も多いので、人事担当者を悩ます法律といえるでしょう。しかし、労働基準法が定めているものは労働者一人ひとりを守るための「最低限の基準」です。人事担当者が知らなかったことで適切な対応ができず、労働者が不利な立場にならないように気をつけて働きやすい環境を整えましょう。

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