過重労働の予防は企業の義務!勤怠管理を通して予防を図る

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公開日:2016.7.28

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過重労働によって引き起こされる健康障害は過労死や過労自殺などにつながることがあり、深刻な社会問題となっています。使用者には社員の安全配慮義務があるため、労働時間をきちんと管理して適切な対応をすることが重要です。ここでは、過重労働の危険性や予防のために必要な勤怠管理について解説します。

 

そもそも過重労働とは?具体的にはどんなリスクが?

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労働時間が長い、または過度な心理的負担を受けるなどの過重な労働が続くと、最悪の場合、過労死や過労自殺の割合も高くなることが知られています。長時間労働などの過酷な労働環境では脳出血などの脳血管障害や心筋梗塞などの心疾患、また、うつ病などの精神障害を発症し、自ら命を落とすことも少なくありません。

かつて過労死は、40代や50代などの主に中高年にみられる問題でした。しかし、現在では20代、30代の若年層が仕事のストレスなどに起因して亡くなることが増えています。

  • 厚労省がいう「過労死ライン」とは?

厚生労働省は、命にもかかわる危険な時間外労働の基準、いわゆる「過労死ライン」を6か月平均で、月に80時間を超える場合として注意を促しています。1か月でみた場合には、100時間を超える場合です。また、時間外労働時間の削減や従業員の健康管理に関する措置の徹底を図るために、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」も策定されました。

さらに、平成26年11月には議員立法で「過労死等防止対策推進法」も成立し、事業場における過労死や過労自殺を予防するための対策が推進されています。ける過労死や過労自殺を予防するための対策が推進されています。また、2020年には残業時間の上限に法的制限が課されるようになり、原則として月に45時間、特別条項を定めた場合は月に100時間未満が限度となっています。

 

厚生労働省発表の重点監督にみる長時間労働の実態

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厚生労働省は、平成27年11月のに「過重労働解消キャンペーン」として5,031事業場に対し、重点監督を行いました。その結果、実施した事業場の7割を上回る3,718事業場に何かしらの労働基準関係法令違反があったとしています。このうち、是正勧告がされたのは「違法な時間外労働」が2,311事業場(全体の約46%)、「賃金不払い残業」は509事業場(約10%)でした。

また、違法な残業が認められた2,311事業場のうち、もっとも長い労働者の時間数を調べたところ、100時間を超えていたのは799事業場に及びました。さらに、150時間超は153事業場、38の事業場では200時間を超えていたのです。

過重労働による健康障害に関する防止措置については、675の事業場(約13%)が必要な措置を行っておらず是正勧告を受けています。さらに、防止措置が不十分で改善指導を受けたのは2,977事業場(約59%)に及び、健康障害に対する防止措置の不十分さが目立ちました。

  • 使用者の安全配慮義務が問われている

労働契約法の第5条には使用者の安全配慮義務が定められていますが、社員の生命はもちろん、健康や安全に対する使用者としての配慮が法的にも問われるようになりました。労災の認定件数の増加だけでなく、裁判によって会社側の問題が指摘され、高額の賠償金を支払うケースもあります。

また、過労死ではないものの、休職者の増加、特にメンタルヘルス不調によって休職する人が増えています。中には長期間の休養を要することもあり、欠員状態が長引くことで他の社員の健康障害にも影響して悪循環が起こるなど休職者への復職支援や職場改善は難しいことが少なくありません。その点からも、健康障害が起こってからの対応ではなく、予防することが極めて重要といえます。

*過重労働による健康障害防止のための総合対策について

 引用元URL

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/111208-3.pdf

 

労働基準法の遵守を!過重労働の予防は待ったなし!

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平成26年11月に成立した「過労死等防止対策推進法」のほか、厚生労働省は過重労働を撲滅するために長時間労働削減推進本部を設置するなどここ数年、取り組みを強化しています。その一つとして、長時間労働削減推進本部では月の残業が100時間超の事業場に対して行っている重点監督を、月80時間超の事業場に拡大することが検討されているのです。また、平成27年4月には過重労働撲滅特別対策班が全国で二つの労働局(東京、大阪)に設置され、悪質な企業への厳しい取り締まりが始まっています。

  • 社員の健康を守るには労働時間を適正な方法で削減する

先ほど紹介した平成27年の重点監督の結果からもわかるように、実態として厳しい労働環境の中で働いている人がいます。過重労働を防ぐには企業が労働時間を定める労働基準法などの法令を遵守し、恒常的な長時間労働とならないように具体的な対策を図ることが必要です。

過重労働によって引き起こされる健康障害を防ぐために、厚生労働省は事業者にいくつかの講ずべき措置を定めています。その一つが時間外や休日の労働時間を削減することです。

時間外労働や休日労働が月に45時間を超えた場合、脳や心臓の病気を発生する可能性が高く、労働時間が長いほどその可能性が高いとされています。そのため、36協定、いわゆる「さぶろく」協定によって月45時間を超える時間外労働が可能な場合にも、月45時間以下にするよう求めています。このように労働時間の削減を図るには、適切な勤怠管理方法で実態に即した労働時間を把握することが必要です。

健康障害は徐々に進行することもあれば、何らかの出来事を契機に急激に悪化することもあります。「今は大きな問題となっていないし、うちの会社は大丈夫だろう」と対策の検討を後回しにしていませんか?現状を改善するにはどうしたらよいか、必要な対策を検討するには時間が必要になるでしょう。大きな問題が起こる前に、対策を後回しにせずに検討を始め、具体的な対策を講じることが大切です。

  • 労働安全衛生法による義務を果たして予防する!

労働安全衛生法では、月80時間を超える時間外・休日労働をした社員に疲労が蓄積し、社員から申し出があった場合は医師による面接を行うことが使用者の義務とされています。また、常時50名以上の社員を雇用している事業場では、平成27年12月よりストレスチェック制度も始まり、使用者の義務が増えました。新たな制度の実施で人事労務担当者の負担も大きいでしょう。しかし、法に則り適切に実施して社員の健康障害を予防しましょう。

 

過重労働をどう防ぐ?勤怠管理の注意点とは?

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社員の勤怠管理として出勤簿などに捺印するだけといった方法を採用している事業場は少なくないでしょう。この方法では、実態に即した労働時間を把握していないことになります。健康障害を予防するために時間外・休日労働時間の削減を目指すには、自社の勤怠管理方法を見直して、まず適正に労働時間を把握することから始めてください。

  • 注意!管理・監督者の労働時間の把握も必要

管理・監督者は時間外労働の割増賃金を支払う必要がなく、労働時間を把握していない企業も多いのではないでしょうか。しかし、管理・監督者であっても深夜労働の割増賃金は必要です。さらに、厚生労働省は裁量労働制の労働者、あるいは管理・監督者に対しても労働時間を適正に把握するよう使用者に求めています。時間外労働など適正な勤怠管理は、残業代を適切に支払うという目的とともに、社員の健康や安全を守る上でも極めて重要であると理解しましょう。

 

勤怠管理方法の見直しも重要!より簡単により正確に

労働時間の集計を手作業で、あるいは勤怠データをパソコンに入力してexcelなどの表計算ソフトで行っている場合は、集計結果が出るまでに時間がかかるでしょう。ある部署では残業が多い、または、休みがちな人が多いなどについていち早く知ることができれば、業務量の再配分や応援体制など必要な手当てを早めに行うことができます。そのため、できるだけ早急に、実態把握ができる勤怠管理方法が望ましいでしょう。

従業員の正確な労働時間の把握のために人事担当者の作業量が多くなってしまい、担当者の時間外労働が増えてしまったら本末転倒です。人間がしなければならない仕事とパソコンやシステムを利用することで効率化が可能なものを分けて仕事を割り振ることが、時間外労働の削減につながります。

まとめ

過重労働は「他人事」という認識ではなく、自社に起きている問題点を探り、改善点を検討するという具体的な行動が必要です。また、勤怠管理を通して労働時間を的確に把握することは、適切な給与の支払いができるだけでなく、社内や個人に起きている問題点の早期発見にも役立ちます。この機会に、勤怠管理方法が自社の実態を正確に、また、早急に把握できる方法なのか、勤怠管理方法の適切さについても検討するとよいでしょう。

 

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