裁量労働制とは?裁量労働制の導入によるメリットとデメリットについて解説

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公開日:2023.9.1

裁量労働制とは、従業員が実際に働いた時間ではなく予め定められた時間を、労働時間とみなす制度です。裁量労働制を導入することで、労働者は自分の業務が早く終わった場合でも、予め定められた給料がもらえるため、自分の業務を早く終わらせるモチベーションが上がり生産性が向上します。しかし、業務が集中した場合、長時間労働が強いられてしまうといったデメリットも挙げられます。

    

裁量労働制の基本を確認しよう

裁量労働制とは

裁量労働制とは実際に働いた労働時間ではなく、あらかじめ企業と従業員の間で規定した時間を働いたものとみなして、その分の賃金を支払う制度です。例えば、みなし労働時間を8時間と定めたのであれば、実際の労働時間が4時間であっても10時間であっても同じ8時間分の賃金が発生します。なお、裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

専門業務型裁量労働制について

専門業務型裁量労働制とは業務の性質上、仕事の進め方や時間配分などを大幅に従業員の裁量にゆだねる必要がある業務に対して、労使間で事前に定めた時間を働いたものとみなす制度です。弁護士・建築士・税理士・研究者・編集者・テレビの制作者など、19の業種が専門業務型裁量労働制の適用対象として定められています。

企画業務型裁量労働制について

企画業務型裁量労働制とは企業の本社などにおいて事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務を行なっている従業員に対して、事業場に置かれた労使委員会で決議した時間を働いたものとみなせる制度です。専門業務型裁量労働制は専門性の高い業種を対象にしており、対する企画業務型裁量労働制は専門性の高い職種に対して適用されます。

   

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裁量労働制のメリット・デメリット

メリット1:人件費を管理しやすい

裁量労働制を導入すると人件費を管理しやすくなります。裁量労働制で従業員を勤務させれば、一部の例外を除いて時間外労働による残業代は発生しません。みなし労働時間で給与を計算するので、人件費の管理や予測がしやすくなるのです。また、給与計算の負担が軽減されるので、コア業務に集中できる効果も期待できます。

メリット2:優秀な人材にアピールできる

裁量労働制では能力に応じた柔軟な働き方ができるため、優秀な人材に対してアピールできます。効率良く仕事を終わらせて、成果を上げたいと考える方は少なくありません。裁量労働制であれば自身の裁量で働く時間を短縮することも可能であるため、能力の高い人材が集まりやすくなります。

メリット3:生産性向上につながる

裁量労働制で働けば、職場の生産性向上にもつながります。裁量労働制では仕事が早く終わったとしても、給料が減額されることはありません。ただし、仕事が終わらずに長時間働いてしまっても、原則として残業代は出ないため働き方には工夫が求められます。従業員としては仕事を効率的に進めようとするモチベーションが高まるため、生産性がアップするのです。

デメリット1:長時間労働が発生するリスクがある

裁量労働制で成果を出すために働いていると、長時間労働になってしまうケースもあります。裁量労働制は働く時間を短縮できる可能性もありますが、求められている結果を出すには時間がかかる場合も少なくありません。長時間労働が常態化してしまうと、従業員の健康を害す恐れもあります。企業としては従業員の勤怠管理を徹底して、労働の実態を常に把握するようにしましょう。

デメリット2:導入に手間がかかる

企業が裁量労働制を導入するには、労働基準法に基づいた手続きを行わなくてはなりません。必要となる手続きの流れは以下の通りです。

  1. 労使協定の締結または労使委員会の決議を実施する
  2. 労働基準監督署へ届け出を行う
  3. 就業規則の変更と届け出を行う
  4. 対象労働者からの同意を取得する(企画業務型裁量労働制の場合のみ)

こうした一連の手続きは厳格かつ煩雑であるため、手間と時間がかかります。裁量労働制の導入を検討する場合には、時間にゆとりを持って対応しましょう。

   

裁量労働制を導入する際の注意点

健康・福祉確保措置を講じる必要がある

裁量労働制を導入する企業は、健康・福祉確保措置を講じることが義務づけられています。健康・福祉確保措置の具体例は以下の通りです。

  • 健康診断の実施
  • 産業医による保健指導
  • 健康状態に応じた配置転換
  • 健康問題に関する相談窓口の設置
  • 年次有給休暇を連続して取得することの促進

裁量労働制で働く従業員に対する企業からの労務管理が十分に及ばずに、長時間労働や深夜労働が慢性化しているケースが発生しています。従業員の健康を守るために健康・福祉確保措置を徹底して実施しましょう。

36協定の締結が必要なケースもある

裁量労働制を導入したとしても、36協定の締結が必要なケースもあるため注意しましょう。36協定とは法定労働時間を超えて従業員に残業をさせる場合に必要な労使協定です。裁量労働制の場合は基本的には働く時間を自由に定められるため、残業という考え方がなくなります。ただし、以下のケースでは36協定を締結したうえで、割増賃金を従業員に支払わなければなりません。

  • みなし労働時間が8時間を超える場合
  • 休日労働を行った場合
  • 深夜労働を行った場合

裁量労働制を導入しているとしても、労働基準法に合わせた勤怠管理を徹底しましょう。

    

まとめ

裁量労働制が企業の働き方にマッチすれば、生産性の向上や人材の確保などの効果が期待できます。一方、従業員の勤怠管理に問題があると、長時間労働の常態化といった問題も発生しかねません。裁量労働制を導入する場合には労働基準法に定められたルールを改めて確認して、企業と従業員の双方にとって最適な職場環境を整えましょう。

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