セクショナリズムとは?原因と生産性向上のための対策を解説

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公開日:2023.6.21

セクショナリズムとは、業務の一部分を自分たちのチーム内で完結させ、他部署や社外の人々とのコミュニケーションを減らしてしまう傾向のことです。これは組織内外の関係や業務遂行において、公平性や透明性、効率性などを損ねる恐れがあり、経営上の問題となります。セクショナリズムに陥らないよう、人事異動や情報共有を通じて、全従業員の協力と共感を得られる組織づくりを心掛けることが重要です。今回は、セクショナリズムについて、その意味や原因、生じる問題とその解決策について解説します。

セクショナリズムとは?

セクショナリズムは組織内の割拠主義

セクショナリズムとは、組織内の各部門が互いに協力し合わずに自分たちが保持する権限や利害にこだわり、外部からの干渉を排除しようとする排他的傾向のことをいいます。割拠主義などと訳されることもあります。セクショナリズムが社内で進んでしまった企業では、従業員は自部署の利益だけにしか興味を持つことができません。組織全体の目的や利益を考えられないので、結果的として企業に不利益をもたらす現象であるといわれています。また、セクショナリズムには大きく分けて以下の2種類があります。

無関心型・非協力型セクショナリズム

「無関心型セクショナリズム」とは自分の所属する部門や部署以外のことは関心がなく、協力もしない態度を指します。自担当や自部門で起きる出来事だけに関心があるため、他のセクションに興味がありません。何かトラブルや変化があっても、自分の所属する部門や部署に関係がなければ気にしないことが特徴です。他の部門から協力の要請があったとしても、手を貸しさないケースもあります。

批判型・排他型セクショナリズム

「批判型・排他型セクショナリズム」とは、他の部門や部署に対する敵対心が先行してしまい、批判的な態度が出てしまうことを指します。例えば、自分が所属していない他部門でトラブルがあり、自分たちにも影響が出そうな場合では、迷惑だという気持ちから嫌悪感が言動に出てしまうのです。場合によっては、他の部門の批判や排除のために行動したり、誹謗中傷など直接的な攻撃を実施したりするケースも生じます。

   

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セクショナリズムが生じる原因

部署内の仲間意識が強く他部署に敵対意識を持っている

部署内の仲間意識が強く他部署に敵対意識を持っていると、セクショナリズムが生じる原因になりかねません。部署内の仲間意識が強い場合は同じ部署のメンバーとは互いに協力し合いますが、他の部署のメンバーとは協力しなくなる傾向があります。さらに敵対意識を持つことで、協力関係を築くことなく自分たちの権限や利害にこだわるようになるでしょう。

人事異動が少なく部署間の流動性が低下している

人事異動が少なく部署間の流動性が低下している場合も、セクショナリズムが生じやすくなります。人事異動が少ないと各部署で同じメンバーとともに長く仕事を行います。その結果、部署内の仲は深まりますが、他の部署への理解が低下する可能性があるのです。また、各部署の独自の文化や価値観が強固になる可能性があり、視野が狭くなってしまうケースも考えられます。

成果主義や相対評価制度が対立構造を作っている

成果主義や相対評価制度は個人の業績を評価し、報酬や昇進に反映させる制度です。これらの制度は個人のモチベーションを高めて生産性を向上させる効果がありますが、部署間の対立構造を生み出す可能性もあります。例えば、成果主義などが浸透していると各部署は自分の業績を良く見せようとして、他の部署との競争も起こります。この競争が激化してしまうと部署間の対立構造が生まれ、セクショナリズムにつながる恐れがあるのです。

   

セクショナリズムによって生じる弊害

全社視点が欠落し生産性が低下する

セクショナリズムの傾向がある職場だと、全社視点が欠落して生産性が低下する恐れがあります。セクショナリズムには大きく分けて2つの種類があるとお伝えしましたが、どちらのタイプでもこの弊害が生じます。事業において、複数部署が合同となって取り組むプロジェクトも珍しくありません。そうした際に他部署が不利益になるような行動が目立ち、業務の連携が損なわれることで、生産性低下の原因となるでしょう。

部署間の連携が損なわれ顧客視点が欠落する

セクショナリズムによって部署間の連携が失われることで問題となるのは、顧客視点の欠落です。セクショナリズムがあると各部門は自分の利益を優先してしまうため、他の部門との協力が不足してしまいます。顧客のニーズを把握して顧客満足度を向上させるための連携が困難となるでしょう。例えば、営業部門は利益を上げることだけに集中して顧客サービスに力を入れなくなったり、開発部門が新製品の開発だけに集中して既存製品のサポートに力を入れなくなったりといった問題が起こりやすくなります。

従業員のモチベーションやメンタルヘルスが低下する

セクショナリズムは従業員のモチベーションやメンタルヘルスにも悪影響が生じる恐れがあります。セクショナリズムがあると所属部署の利益を優先するため、人間関係に亀裂が生じやすくなるでしょう。そうした状況が続くと部署間の対立やいじめといった問題も起こりやすく、従業員のモチベーションやメンタルヘルスが低下する可能性があります。また、自分の意見が通らない、自分の仕事が評価されないなど、マイナスな感情が生まれやすいというデメリットもあります。

   

セクショナリズムの解決策

人事異動を増やして人材の流動性を高める

セクショナリズムを解消するためには、人事異動を増やして部署間の流動性を高めることが有効です。人事異動を増やすことで、従業員は他の部署の仕事や考え方に触れることができます。これにより、部署間の相互理解が深まり、他部署への無関心や排他的といった態度の改善が期待できます。また、人事異動は従業員の視野を広げ、新しいスキルや知識を身につける機会も創出されるでしょう。

対立を生むような評価制度を改善する

セクショナリズムを改善するためには、評価制度の見直しも必要です。例えば、成果主義を導入している場合には、個人や部門ごとの評価だけでなく、組織全体の目標達成に主軸を置いた評価項目を追加すると良いでしょう。また、相対評価制度の場合には評価基準を明確にして、公平に評価を行う姿勢が必要です。従業員のモチベーションを高めて生産性を向上させる評価制度を構築しましょう。

経営理念を共有し全社視点を持たせる

経営理念を共有して全社視点を従業員に持たせることも、セクショナリズムの解消に効果的です。そもそも、経営理念とは企業の存在意義や目的を明確にしたものであり、企業活動の指針ともいえます。経営理念を共有することで従業員は組織全体の目標を意識し、自分の仕事が組織にどのように貢献するのかを考えられるようになります。

   

まとめ

セクショナリズムは企業にとって大きな問題です。従業員の生産性やモチベーションが低下するだけでなく、メンタルヘルスへの影響も軽視できません。加えて、生産性の低下や組織全体の目標を達成しにくくなるなど、企業にとって不利益をもたらす原因となります。こうしたセクショナリズムの発生を予防するためにも、企業としては人材の流動性を高めたり評価制度を改善したりといった対策を行いましょう。

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