残業時間の上限に法的制限が課されます! 働き方改革関連法での変更点を解説

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公開日:2019.1.25

働き方改革関連法が成立したことで、時間外労働の上限に法的制限が課せられることになりました。従来は36協定を結ぶことで、実質的に時間外労働が無制限でしたが、適用後は原則として「月45時間、年360時間」に制限されます。適用は大企業には2019年4月、中小企業には2020年4月から始まり、違反には罰則が課されます。今回は、働き方改革関連法施行後の労働時間の制限と、罰則内容について解説します。

働き方改革関連法とは

働き方改革関連法は実際の法律の名称ではなく、雇用対策法や労働基準法など労働者を保護するための複数の法律の改正を指します。労働者の保護と、より柔軟な働き方の推進のために、中小企業への割増賃金率の猶予措置の廃止や、高度プロフェッショナル制度の創設など、いくつもの大きな改正点があります。本記事では、残業時間の上限規制廃止に絞って解説します。

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改正前の残業時間の上限規制

そもそも労働基準法では、原則として法定労働時間を超える労働を禁止しています。法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間です。この時間を超えると時間外労働として扱われますが、時間外労働なしでは多くの企業は立ち行かないので、あくまで例外措置として時間外労働が認められています。

この例外を利用するには、労働者と使用者(企業)の間の同意が必要です。この労使協定は36協定(サブロク協定)と呼ばれ、使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者と、延長時間を定めます。その際、延長時間の上限は1日、1ヶ月、1年と期間ごとに定めます。その同意を示す書面を、事業所を管轄する労働基準監督署長に提出することで、この時間外労働の例外措置が適用されます。

36協定における延長時間の設定については、時間外労働の限度に関する基準告知、いわゆる限度基準告知で目安が示されています。ただし、限度基準告知は省令であって、あくまで法的拘束力はありません。この限度基準告知には、「特別条項」というものが定められており、特別な事情があると認められる時に限り、限度基準告知で示された限度時間を超える時間を延長時間として労使協定で定めることが認められています。この「特別条項」は恒常的に使えるものではなく、1 年の半分を超えてはいけないという制限がありますが、この特別条項による延長時間については、どの法律や省令においても限度が定められていません。

したがって、この残業時間の上限が設定されていないという点が、過労死を減らせない原因となっていると多くの批判を集めていました。また、長時間労働について労働基準監督署が指導する法的根拠がないという問題点も指摘されてきました。

 

改正後の基準

施行される改正後の法律では、「特別条項」適用の有無にかかわらず、法定労働時間の上限が定められます。適用されるのは大企業の場合は2019年4月から、中小企業の場合は2020年4月からです。

特別条項なしの場合

1ヶ月あたり45時間、かつ1年あたり360時間という基準が、省令ではなく法律で定められて法的拘束力を持つようになります。さらに、この上限を超える労働をさせた使用者には罰則を科すことで強制力を持たせます。

特別条項ありの場合

今回の改正によって、労使協定に特別条項がある場合にも適用される上限が法律で定められます。時間外労働時間の限度は、1年あたり720時間かつ1ヶ月当たり100時間となります。ただし、原則として定められている1ヶ月45時間を超えることができるのは、6ヶ月までとなります。

これらの条件に加えて、以下の条件を守ることが定められます。

  • 2ヶ月から6ヶ月で平均した法定労働時間が80時間以内になること(休日労働を含む)
  • 1ヶ月で100 時間未満であること(休日労働を含む)

改正前の法律では休日労働を含まないのに対して、改正後は休日労働を含めて計算する点に注意しましょう。なお、特別条項に当てはまらない労働時間の計算を行う場合は、休日の労働時間はこれまで通り含みません。

 

改正後の罰則

改正後の法律はこれまでと違って法的拘束力を持ち、なおかつ使用者に罰則が科されます。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 

上限規制の適用されない業種

以下の業務については、改正後の法律においても上限規制が適用されません。

  • 新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務
  • 工作物の建設等の事業
  • 自動車の運転業務(例えばタクシーの運転手やトラックの運転手など)
  • 医師
  • 厚生労働省の定める業務

医師を除けば、上限規制の適用されない業種はこれまで限度基準告知で定められたものから特に変更ありません。

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まとめ

法定労働時間の上限を法律で定めることは働き方改革関連法の目玉のひとつで、多くの企業にインパクトを与えると考えられます。残業時間がもともと多い企業には業務に大きな影響をもたらし、さらには違反した場合の罰則もあるので、企業には早め早めの準備が求められるでしょう。

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