中抜け問題を解消!就業規則への適切な記載ポイント

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公開日:2021.4.13

在宅でテレワークを行う場合、従業員が業務から一定時間離れる中抜け時間が発生することがあり、勤怠管理が複雑になります。従業員の中抜けが多い場合には、中抜け時間を休憩時間として取り扱って始業や終業時間をずらすか、時間単位年休として取り扱うなどの対応が求められます。どのようなルールを定めた場合でも、就業規則や労使協定の見直しは必須となるため、確認してみましょう。今回は中抜けの意味や勤怠管理上の取り扱い、就業規則や労使協定の記載ポイント、テレワーク時やフレックスタイム制における中抜けの取り扱いについて解説していきます。

中抜けの概要

そもそも中抜けとは

就業時間中に、労働者の都合によっていったん労働から離れ、再び労働に戻るまでの時間を、中抜けといいます。中抜け時間に家の用事を済ませたり、子供のお迎えに行ったりするなど、中抜けには従業員のワークライフバランスを向上する効果があります。中抜けは、従来は人手が必要な忙しい時間帯が朝と夕方に集中する飲食業界や旅館業界、午後と午前の診療時間の間が空く傾向のある医療業界でよく見られる制度でした。現在、新型コロナウイルス感染症の流行拡大によりテレワークが広く導入され始めたことで、その他の業種についても中抜け時間について考慮する必要がでてきました。

勤怠管理上の取り扱い

業務中の中抜けを認める場合、中抜け時間は休憩時間と同じような扱いになるため、使用者が業務の指示をすることはできません。また、中抜けした分の時間、終業時刻が繰り下げることで所定労働時間を確保することになるため、勤怠管理や現場への周知が必要になります。そのため、誰が、いつ、どれくらいの間、中抜けするのかを明確にし、周知する必要があるでしょう。また、あまりに長い中抜けの時間を認めてしまうと、その分終業時刻が遅くなり、就業時間が深夜時間帯(夜10時以降)に及んでしまう可能性もあります。そのような場合は深夜割増手当を支払わなければならないため、企業が認める中抜け時間の上限を定めることも大切です。

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就業規則や労使協定の記載ポイント

始業・終業時刻の変更がある場合

労働基準法では、就業規則の作成に際し、第89条第1号から第3号までに定められている事項 (始業・終業の時刻、休日、休暇、賃金、昇給、退職、解雇などの、いわゆる絶対的必要記載事項)について必ず記載しなければならないとしています。そのため、中抜けの制度を新たに導入する場合は就業規則の変更が必要です。中抜けについては遅刻や早退、欠勤に関する事項に追加で規定すると良いでしょう。一般的には、「勤務時間中に私用で業務から一定時間離れる場合は、事前に所属長に許可の申し出と承認が必要である」という旨を記載し、始業・終業・休憩時間の明記のあとに、「ただし、業務の都合ややむを得ない事情により、これらを繰り上げまたは繰り下げする場合、前日までに従業員に通知する」と記載することで対応できます。

時間単位の年次有給休暇を付与する場合

年次有給休暇は日単位で取得することが原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、労使協定が締結されていない場合でも、半日単位で与えることが可能です。しかし、中抜けの時間に有給休暇を充てるためには、時間単位年休について定めなくてはなりません。時間単位年休については、以下のような内容について労使協定を締結し、就業規則に記載する必要があります。

  • 時間単位年休の対象労働者の範囲
  • 時間単位年休の日数
  • 時間単位年休1日の時間数
  • 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

また、時間単位年休の日数は5日以内で設定することや、時間単位年休は計画付与として与えることができないことなどにも注意が必要です。

  

テレワーク時の中抜けの取り扱い

飲食業界や宿泊業界、医療業界などでは、中抜けを取り入れた働き方は珍しくありませんが、その他の業種では、まだ「中抜け」のルールを知らない人も多く、テレワーク中の中抜けを、「サボっている」かのように感じる人も多いようです。また、中抜けのルールがはっきりしないまま、テレワーク中の家庭と仕事の境界線が曖昧になってしまい、集中力や生産性が下がってしまったというケースもあるようです。そのため、テレワークの実施とともに、「中抜け」について検討することが大切になります。

休憩時間として取り扱う場合

テレワークを実施する前に、企業と従業員間でテレワークにおける中抜けの取り扱い方について十分に説明し、合意を得ることが大切です。テレワークにおける中抜けは、通常の中抜けの取り扱いと同様に、休憩時間として扱われるため、従業員は自由に過ごすことができます。そのため、中抜け時間の開始時刻と終了時刻を少なくとも前日までに報告させるようなルール作りが必要です。また、中抜け時間の分、終業時刻が繰り下げられることの説明を行い、認識の齟齬がないようにしましょう。

時間単位の年次有給休暇として取り扱う場合

テレワーク中の中抜けを時間単位年休として扱う場合も、従業員が自由に過ごせるという点では通常の中抜けと変わりません。しかし、この場合の中抜け時間は有給休暇なので、中抜け時間の分、終業時間が繰り下がることはありません。また、時間単位年休は、労働者にとってはメリットの多い制度ですが、企業にとっては有給休暇の管理上の負担が増える場合が多いでしょう。そのため、制度の開始前に勤怠管理システムなどを導入し、詳細な規定を確認しておくことが大切です。

  

フレックスタイム制における中抜けの取り扱い

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、清算期間やその期間における総労働時間などを労使協定において定めることで、清算期間中の労働時間の平均が、1週当たり法定労働時間を超えない範囲内であれば、労働者が始業及び終業の時刻を決定することができる制度です。任意で「出勤が義務付けられている時間帯(コアタイム)」を定めることもできますが、これ以外の時間帯では自由に労働時間を決めることができます。フレックスタイム制の導入には、就業規則への規定に加えて、労使協定において、フレックスタイム制の対象者や清算期間、清算期間における所定労働時間、1日の標準労働時間などの必要事項を定める必要があります。

始業・終業時刻や中抜けの取り扱い

フレックスタイム制では、上述したルールを就業規則・労使協定に記載することで、従業員は自由に中抜け時間を設定できます。また、労働者の都合に合わせて、始業や終業の時刻を調整することも可能です。そのため、中抜けが必要な従業員にとっては、都合の良い働き方といえるでしょう。ただし、フレックスタイム制におけるテレワークでは、従業員の自己管理能力が問われる点や、従業員間のコミュニケーションが取りにくい点など、デメリットもあります。そのため、業種によっては導入がしにくい場合もあります。

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まとめ

テレワーク中には家事や育児など、どうしても業務を離れなければならない時間が出てきます。こうした時間を闇雲に禁止するのではなく、中抜け時間として適正に管理することで、従業員のライフワークバランスにも良い影響があるでしょう。従業員の充実した働き方のために、中抜け時間を認め、テレワークでの生産性をさらに上げられるようにしましょう。

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