給与所得控除とは? 複雑な計算方法を詳しく解説

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公開日:2018.10.12

給与所得控除とは、給与所得者の給与から一定額差し引くことのできる控除額のことで、個人事業主で言うところの必要経費に相当する役割を持っています。給与所得控除額は給与によって変化し、収入が多いほど控除率は下がります。控除額の変動が頻繁に起きたり、所得控除と混同されがちであったりなど複雑であるため、計算には注意が必要です。今回は、給与所得控除の計算方法や、特定支出控除、基礎控除、所得控除との関係について解説していきます。

給与所得控除の計算方法

そもそも給与所得控除とは

給与所得控除とは、会社員などの給与所得者に適用される控除で、所得税等の計算の基盤となる給与所得額を求める際に、1年間の給与等の収入額に応じて差し引かれるものです。

個人事業主は売上から経費を差し引くことで事業所得を計算しますが、会社に勤める従業員の所得を同様の方式で求めようとすれば、通勤用衣服や靴などの経費をひとつひとつ計算することになり、会社が従業員ごとにこうした手続きを取るのは非常に煩雑で現実的ではありません。そのため、給与所得者にとって経費の代わりとなるものが給与所得控除であり、年収に応じて一律に計算することとなっています。

このように、給与所得控除には、個人事業主と従業員との税計算上の公平性を保つ働きと、多数いる従業員の給与所得控除を一律で計算することで税処理を簡便化する働きがあります。

年収別の計算方法

給与所得控除は、職種や勤務形態、雇用形態にかかわらず、1年間の給与収入の額に応じて計算されます。この計算で使用される給与収入は、基本給、ボーナス、各手当などの現支給と、現物支給の両方の総計になります。ただし、給与に加算して支給される月額10万円以内の通勤費、制服などの貸与、出張旅費などの精算、社内規定などに基づいて支給される祝い金やお見舞金などは含まれませんので注意しましょう。
給与所得控除の計算方法は年度ごとに頻繁に更新されるため、国税庁のサイトで随時確認する必要があります。以下の表は、2020年分以降の計算方法です。

給与収入給与所得控除額
55万円未満55万円
180万円以下収入金額×40%-10万円
180万円超~360万円以下収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円以下収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下収入金額×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

このように、1年間の給与収入が上がるにつれて給与所得控除の割合が低くなっていくの
が特徴です。例えば年収400万円の人の場合であれば、給与所得控除額は400万円
×20%+44万円=124万円になります。

 

特定支出控除との関係

給与所得控除は、会社員の経費とは言うものの一律で計算されてしまうため、従業員個人が実際に支出した経費が給与所得控除を上回る可能性があります。そのような場合に、特定の経費に対する支出総額について、給与所得控除とは別に控除を行うことができるのが特定支出控除です。経費のうち、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、職務に直接必要な衣服費や接待交際費などが特定支出控除として認められ、これらの特定支出の合計額が特定支出控除額の適用判定の基準となる金額を超える場合に、確定申告によりその超過分の金額を特定支出控除として控除できます。適用判定の基準は、2016年分から、その年中の給与所得控除額の1/2の金額となっています。

 

基礎控除との関係

基礎控除とは所得控除の1つであり、所得の種類にかかわらず全ての人が無条件に受けることができるものです。以下の表は2020年分以降の計算方法です。

合計所得金額  基礎控除額(所得税)基礎控除額(住民税)
2,400万円以下48万円43万円
2,400万円超~2,450万円以
32万円29万円
2,450万円超~2,500万円以
18万円15万円
2,500万円超0円0円

例えば配偶者の扶養に入っている人がパートやアルバイト等で収入を得ている場合、その
年収が給与所得控除の最低額の55万円と基礎控除の48万円を合わせた103万円を超えると
課税所得が発生するため、所得税が課税されるようになってしまいます。

基礎控除とは所得控除の1つであり、所得の種類にかかわらず全ての人が無条件に受けることができるものです。基礎控除は、所得税計算時には38万円、住民税計算時には33万円が一律に控除されます。

例えば配偶者の扶養に入っている人がパートやアルバイト等で収入を得ている場合、その年収が給与所得控除の最低額の65万円と基礎控除の33万円を合わせた103万円を超えると課税所得が発生するため、所得税が課税されるようになってしまいます。

 

所得控除との関係

給与所得控除と所得控除は全くの別物です。給与所得控除は上述の通り、正規雇用や非正規雇用などの雇用形態にかかわらず給与所得者全員が無条件に控除されるものですが、他方の所得控除とは、ある一定の基準を満たす場合に各種所得の総額から控除がなされるものです。所得控除は全部で14種類あり、医療費控除、雑損控除、社会保険料控除、寄附金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、小規模企業共済掛金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、基礎控除があります。基本的に所得控除を受けるには申請が必要ですが、前述のように基礎控除だけは申請なしでも無条件で控除が適用されます。

一般的な会社員の場合、最終的な課税所得は給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引いて計算されます。給与所得控除は無条件で控除されますが、所得控除は自分で申請をしないと控除されないため、手続きや自分の状況をしっかりと把握しておく必要があります。

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まとめ

給与所得控除には会社に勤める従業員の経費という意味合いがあり、1年間の給与収入に応じて一律に計算されます。一般的な会社員の税額計算に関わる控除制度は、給与所得控除の他にも特定支出控除や、基礎控除など各種所得控除があるので、それらの違いを正しく認識し、控除制度を賢く活用していきましょう。

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