みなし残業とは?みなし残業を導入するメリット・デメリットについて解説

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公開日:2024.3.19

みなし残業とは、従業員の給与について、あらかじめ一定時間分の残業手当を見込んで支給する制度のことを指します。みなし残業を導入した場合、残業の有無に関わらず、従業員に支給される給与額はほぼ一定です。そのため、「残業しても給与は同じだから、早く仕事を終わらせて定時で帰ろう」と考える従業員が増え、結果として組織の生産性の向上につながります。しかし、みなし残業では、従業員の残業時間が上限に届かなくても、残業代を含んだ給与を支払わなければならず、人件費が上昇してしまうといったデメリットも挙げられます。

   

みなし残業について正しく理解しよう

みなし残業とは

みなし残業は、実際に残業したかどうかの事実にかかわらず支給されるため「固定残業制」とも呼ばれる制度です。「残業を支払ったものとみなす」という意味ではなく、あくまで残業代を含めたうえで給与の支払いを行うもので、仮に実際の残業時間が下回ったとしてもそのまま支給されます。反対に、当初設定していた残業代よりも従業員が多く残業を行った場合、事業者は追加分を支払わなければなりません。

 みなし残業に含まれる割増賃金の種類

みなし残業として含まれる割増賃金には、以下の例が含まれます。

  • 時間外労働

時間外労働は、労働基準法によって「1日8時間・週40時間を超える場合」と定められています。時間外労働分は、通常の給料の1.25倍が割増分として加算されます。

  • 深夜割増賃金

夜10時から翌朝の5時にかけて勤務した場合、1.25倍の賃金割増となります。

  • 定休日労働

事業者が定休日と定められている日にやむを得ず出勤しなければならない場合、1.35倍の割増分が賃金に上乗せされます。

みなし労働時間制との違い

みなし残業(固定残業制)と関連するワードとして、「みなし労働時間制」があります。名称が紛らわしいのですが、こちらは実際に労働を行った時間にかかわらず、あらかじめ定められた労働時間分を「働いたとみなす」制度を指します。すべての業種がみなし労働時間制を採用できるわけではなく、運用別に以下の3種類に分けられます。

  • 事業場外労働

外回りや出張、テレワークなど、実労働時間の把握が事業者にとって難しい場合に適用されます。職種としては、営業職・旅行会社の添乗員やバスガイドなどが該当するでしょう。

  • 専門業務型裁量労働制

クリエイティブ業や研究・分析業など、実労働時間がそのまま成果として直結しない職業が該当します。労働基準法によって19の職業のみに適用され、弁護士・コピーライター・デザイナー・建築士などがこれに含まれます。

  • 企画業務型裁量労働制

こちらも実労働時間と成果が直結しない業務であることが前提であり、事業運営に際して企画・立案・調査・分析を行う職業が当てはまります。経営企画・財務・経理・労務などの部門が主な候補となるでしょう。

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みなし残業を導入するメリット・デメリット

メリット1:生産性が向上する

みなし残業代が給与にあらかじめ含まれている場合、実労働時間がみなし残業代分よりも少なければ、それだけ従業員がより多く給与を受け取ることになります。この結果、「すぐに仕事を終えられるように効率的に仕事をしよう!」という意識が芽生えやすくなり、結果的に生産性の向上につながる一つのきっかけにもなりえるでしょう。

メリット2:給与計算の手間を削減できる

事業者側としてのメリットは、実労働時間に左右されずに固定の給与が従業員に支払われることで、毎月の給与計算にかかわる事務手続きが簡易的になりやすい点です。特に事業規模が大きい企業では、従業員一人ひとりの実労働時間が大きく異なると、それだけ経理にかかわるコストや間違いを起こすリスクが高まります。そこで、みなし残業制度を導入することで各従業員間の給与換算の差を縮めることで、煩雑になりやすい事務作業の手間やリスクを軽減させられるようになります。とはいえ、前述の通りみなし残業代を上回る賃金が発生した場合は、その都度精算が必要になる点は留意しましょう。

デメリット:人件費が上昇する

実際の残業時間がみなし残業代分を下回った場合でも、事業者は指定された給与を支払わなければなりません。これは従業員側にとっては大きなメリットとして挙げましたが、給与を支払う側にとっては人件費がかさむ要因となります。実労働時間とみなし残業を含めた給与に差が生まれる状態が長期間続く場合、就業規則の変更などの対処が必要になるかもしれません。

    

みなし残業を導入する際の注意点

みなし残業時間分の労働は強制できない

みなし残業の制度は、あくまで就業規則などによってあらかじめ定めた残業代を固定支給するものであり、発生した残業代分の労働を企業が強制できるものではありません。多く給与を支払わなければならないからといって、管理者が「給与に含まれているのだから、残業させても問題はない」という間違った認識で運用しないように注意しましょう。また、従業員側が「みなし残業分は必ず残業をしなければならない」と誤解をしているケースも考えられます。この場合、従業員に対して「みなし残業制度」についての周知徹底を従業員全体に対して実施することが重要です。

休日出勤や深夜労働の割増賃金を忘れずに反映する

前述の通り、割増賃金の割合は一律ではありません。例えば、みなし残業としての割増分は1.25倍ですが、定休日労働(休日出勤)の場合は1.35倍と定められています。もし、従業員が定休日労働として働いていたにもかかわらず、1.25倍で計算してしまった場合は未払いとなる可能性も考えられます。みなし残業制度を導入したからといって、すべての従業員の残業代を正確に把握せずに給与処理を行わないようにしましょう。

みなし残業時間を超過したら残業代を支払う

これに加え、みなし残業分を超過する残業が発生した場合は、追加で残業代を支払う必要があります。10時間のみなし残業代を就業規則に含めており、ある従業員が15時間残業した記録が残っていた場合、その従業員に対して5時間分の給与を支払わなければ、これも「未払い」の扱いになる点に注意しましょう。

     

まとめ

みなし残業は長時間労働などの働き方の改善として導入されるものですが、管理者・従業員の間違った認識や説明不足などによって十分にメリットを生かせないまま運用が進んでしまう可能性があるうえに、最悪の場合は未払いによる訴訟問題などに発展する恐れもあります。みなし残業の制度を導入する際に就業規則や雇用契約書などに記載することはもちろん、すべての従業員に正しい制度の内容を周知徹底することが、正確な労働管理と勤務体制の円滑化につながるポイントとなるでしょう。

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