【2021年8月施行】課徴金制度が追加された薬機法の改正ポイントまとめ

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公開日:2021.9.7
薬機法の改正_イメージ

2021年8月より改正薬機法が施行され、虚偽・誇大広告を行う企業に対する課徴金制度が実施されます。医薬品や化粧品を販売するメーカーのみならず、広告代理店などにも影響がある法改正なので、規制内容を確認しておきましょう。今回は薬機法の規制内容や改正された点と罰則、違反を防ぐポイントについて解説していきます。

薬機法について正しく学ぼう

薬機法とは

薬機法は、2014年(平成26年)11月に従来の薬事法が改正され、名称変更とともに施行された法律です。正式名称を、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。この法律では、医薬品などについて、製造・販売・安全対策までを規制し、その適正化をはかることを目的としています。

規制対象

薬機法の規制対象は以下の通りです。

  • 医薬品
  • 医療機器
  • 医薬部外品
  • 化粧品
  • 再生医療等製品

薬機法の規制対象について注意するべきは、医薬品や医療機器だけでなく、医薬部外品、化粧品なども含まれる点です。
ちなみに、健康食品やサプリメントは、薬機法上の定義はなく、一般食品(国が認めた特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品は除く)と同じ扱いです 。そのため、医療品のような効果を訴求すると、無承認無許可医薬品として薬機法に抵触するため、注意が必要です。特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品についても、効果や機能性について消費者庁長官から認められた内容以上の表示はできないとされています。

規制内容

薬機法で規制される内容は、大きく分けて下記の2点です。

  • 各段階規制
    医薬品・医療機器等の開発について、「開発・治験」「承認審査」「製造」「販売規制」「市販後安全対策」「監督指導」「副作用被害の救済」の各過程で必要な規制や承認審査のルールを設けています。
  • 広告規制
    医薬品・医療機器等の広告を行ううえで、虚偽・誇大広告の禁止、特定疾病用医薬品等の広告制限、未承認医薬品等の広告の禁止などを定めています。

なお、虚偽・誇大広告に対する禁止の対象は、広告主(メーカー)に限らず、広告代理店、広告を掲載するメディアはもちろん、インフルエンサーなどの個人も対象になります。

薬機法に違反した際の罰則

現行法では、第66条「虚偽・誇大広告」、第68条「未承認医薬品の広告の禁止」に違反した場合には、「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(または併科)」、第55条「未承認医薬品等の販売、授与等の禁止」に違反した場合には、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(または併科)」が科されます。さらに、2021年8月1日からは後述する「課徴金制度」が導入されます。

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2021年8月からの改正薬機法のポイント

課徴金制度の開始

今回、新たに追加された課徴金制度は、薬機法第66条「虚偽・誇大広告の禁止」の条文に違反する行為が対象になります。
課徴金は、原則として、違反していた期間における対象商品の売上額の4.5%が徴収されます。ただし、課徴金が225万円(対象品目の売上げが5000万円)未満の場合は対象外です。このとき、同一の事案に対し、景品表示法の課徴金(売上額の3%)がある場合は、この額を控除した売上額に対して課されます。また、課徴金対象行為に該当する事実を、事案発覚前に違反者が自主的に報告したときは50%の減額がされます。

添付文書の電子化

医薬品に関する最新の情報を提供するため、添付書類の添付化が進められています。今後、医療用医薬品に同梱される紙の添付文書は段階的に原則廃止されていくことを覚えておきましょう。移行期間として、2023年7月31日までは紙の添付文書の同梱が可能ですが、今後は、医薬品の容器等に記載されたコードを読み取り、スマートフォン等での専用のアプリケーションから添付文書を確認する方法が主流になっていく予定です。なお、添付文書の同梱廃止は医療用医薬品のみで、消費者に直接販売をする一般用(OTC)医薬品には引き続き同梱されます。

薬局開設者などのガバナンス強化

相次ぐ薬機法違反に対する防止措置として、今回の薬機法改正に伴い、法令順守に関する体制の整備を行い、薬局開設者のガバナンス(企業統治)強化が義務付けられています。大まかな内容は下記の通りです。

  • 遵守すべき規範を、社内規定において明確に定め、周知すること
  • 薬事に関する業務に責任を有する役員を位置づけること
  • 責任役員の権限や分掌する業務・組織の範囲を明確に定めて周知すること
  • 役職員の意思決定や業務遂行の業務記録を作成の上、管理及び保存する体制をとること
  • 管理者は必要な能力と経験を有する者を選任し、権限を明確化すること
  • 管理者による意見申述義務と、薬局開設者等の意見尊重や措置義務を定めること

上記のような対策が不十分である場合は、改善命令の対象となります。

認定薬局制度の開始

都道府県知事による薬局の「認定薬局制度」が導入されます。この制度は、患者が自身に適した薬局を選択することを目的に、特定の機能を持った薬局に認定を与えるものです。認定薬局には、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」があり、それぞれの主な特徴は下記の通りです。

  • 「地域連携薬局」
    地域の他の医療機関と連携して、各患者の状況に応じた服薬指導を行える薬局が認定されます。地域連携薬局となるためには、外来受診だけでなく在宅医療、入退院時においても服薬情報の一元的な情報連携に対応できる体制が必要です。また、医薬品にかかわる     情報発信や研修会の主体的な実施など、他の薬局の業務を支えるような取組みも期待されます。
  • 「専門医療機関連携薬局」
    医療機関と連携して、がんの薬物療法を受ける患者を中心に、高度な薬学管理や調剤を行える薬局を指します。また、抗がん剤などの医薬品提供や薬物療法にかかわる     専門性の高い情報を積極的に発信し、薬学管理の研修などの主体的な実施も期待されます。

 

薬機法の違反を防ぐためのポイント

薬機法の勉強会を開催する

薬機法に違反しないためには、社内勉強会の開催が効果的です。勉強会では、「医薬品等適正広告基準」などの、厚生労働省が定めているガイドラインの確認をしましょう。普段から薬機法の内容に触れる機会の多い部署のほかは、これらの認識が不十分である可能性があるため、全社的に行うことが重要です。広告のキャッチフレーズなどは、効能の強調や、優良誤認を招く表記をしてしまいがちであることに加え、広告・宣伝の業務に関しては、外部委託の機会も多いため、いち担当者に至るまでしっかりと認識する必要があります。

社内で広告ガイドラインを作成する

薬機法による広告表現への規制は、細部に至るまで詳細に定められており、法律違反にならないためには細心の注意が必要です。そのため、自社の商品が訴求可能な効能範囲を把握し、その範囲で使用できる表現などをまとめた、社内広告ガイドラインを作成すると良いでしょう。このとき、不適切な表現と適切な表現の対照表を載せるなど、従業員にわかりやすい内容にすることが大切です。

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まとめ

今回の薬機法改正には、ネット広告を利用する事業者が増えたことにより、虚偽・誇大広告などの問題が深刻化していることが背景にあります。直近では、新型コロナウイルス感染症が流行するなか、未知のウイルスを恐れる消費者心理につけこむような、不確実な広告表現が問題視されています。そうでなくても、自社開発製品の効能をアピールしたい気持ちが、つい誇大広告表現となり、薬機法に違反してしまう事例も後を絶ちません。今回の改正を機に、医療品などの開発会社をはじめ、情報発信や広告に携わる人も、薬機法の内容をしっかりと確認しましょう。

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