【2020年4月施行】派遣法改正で派遣元/派遣先が対応すべき事項まとめ

カテゴリ:コラム 投稿日: 2019.12.9 tag: ,

働き方改革の波を受け、正規雇用者と非正規雇用者との待遇差改善のために派遣法が改正されます。改正派遣法は2020年4月より施行され、派遣元は労働者の賃金を決める際に、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のいずれかを選ばなくてはなりません。また、派遣先は派遣契約を締結する際に、情報提供義務を負うことになります。今回は、派遣元企業が対応すべきポイントや、「均等・均衡方式」と「労使協定方式」の違い、それぞれの方式を採用する際の手順、開示が義務付けられる情報について解説していきます。

今回の改正の基本的方針

今回の法改正は「同一労働同一賃金」の実現のために行われます。同一労働同一賃金とは、非正規労働者か正規労働者かどうかにかかわらず、同じ労働に従事する者は同じ賃金を受け取るという原則です。ワーキングプアを生み出す温床にもなっている非正規労働者の待遇を正規労働者に合わせて改善するのが目的です。
しかし派遣労働者は、会社を退職しなくとも、つまり同じ派遣元に所属したまま、異なる派遣先に派遣されることがあります。派遣先の正規労働者に給与を合わせるのであれば、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わるということが起きてしまいます。それは結果として派遣労働者の給与を不安定にするでしょう。しかも、一般的に給与というのは必ずしも仕事の難易度に合わせて設定されるわけではありません。賃金水準は大企業であるほど高く、中小企業は低い傾向にありますが、だからと言って後者の方が前者よりも仕事がより簡単であるとは限りません。派遣先の正規労働者に給与を合わせるのであれば、仕事の難易度やポジションが上がったのに給与が下がってしまうという事態が発生してしまうことは十分にありえます。派遣労働者個人のキャリア形成を考えると、これは当然望ましくないでしょう。
同一労働同一賃金のデメリットを考慮し、改正派遣法は派遣労働者の処遇の決め方を制度化しています。具体的には、派遣元事業主は派遣労働者の待遇について以下の「均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかの方式で決定することを被雇用者と同意し、最終的に決定していくことが義務化されます。さらに、派遣元・派遣先企業の両方に、定められた情報の提供義務が生じます。

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2つの方式

均等・均衡方式

均等・均衡方式は、後述する労使協定を結んでいない場合や、雇用主が労使協定で定めた事項を遵守していない時に提供される方式です。派遣元の企業は、派遣先の通常の労働者と自社から派遣している労働者の待遇が均等かつ均衡になるようにしなければなりません。

どのような待遇が均等かつ均衡とみなされるのかについては、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(同一労働同一賃金ガイドライン)に詳細に規定されています。このガイドラインは、正規労働者と非正規雇用労働者(派遣労働者だけではなくパートタイム労働者・有期雇用労働者も含む)の間で待遇差が存在するときに、どのような待遇の差が許容されないのか、逆にどのような待遇差であれば問題とはならないのかを示したものです。このガイドラインの対象は基本給だけでなく、ボーナスや深夜・休日労働手当の割増率、通勤手当などの各種手当・補助も含まれるので注意が必要です。

労使協定方式

労使協定方式は、労働者の過半数が所属する労働組合と派遣元企業の間で待遇に関する労使協定を結ぶ方式です。労働者の過半数が所属する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表した者と労使協定を結ぶことになります。なお、この労使協定は必ず書面で行うことが必要です。
なお、以下の事項は労使協定の対象とならないものであるため、労使協定方式も適用されません。これらについては、均等・均衡方式と同様に同一労働同一賃金ガイドラインにしたがって、派遣労働者の均等・均衡を確保しなければなりません。

  • 派遣先が、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練(派遣法第40条第2項の教育訓練)
  • 派遣先が、派遣先の労働者に対して利用の機会を与える給食施設、休憩室及び更衣室(派遣法第40条第3項の福利厚生施設)

 

派遣元がしなければならない情報提供

派遣元は派遣労働者、派遣先などに対して、労働者の待遇をどのように決定しているかについての情報を提供しなければなりません。提供しなければいけない情報のひとつは、労使協定を締結しているかどうか、つまり上記の労使協定方式を採用しているかどうかです。さらに、労使協定を締結している場合には、以下の点について派遣労働者、派遣先などに対して通知しなければなりません。

  • 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
  • 労使協定の有効期間の終期

これらは書面である必要はなく、インターネットを利用して派遣労働者、派遣先などに対して広く知らせるなどの方法でも問題ありません。厚生労働省の運営する「人材サービス総合サイト」への掲載も推奨されています。

 

派遣先がしなければならない情報提供

派遣元だけではなく、派遣先にも情報提供義務があります。均等・均衡方式と労使協定方式のいずれによって待遇決定を行う場合でも、派遣先企業は派遣元企業に対して、比較対象労働者に関する情報を提供しなければなりません。比較対象労働者とは、派遣先において正規労働者として同様の仕事をしている労働者を指します。誰が比較対象労働者に該当するかについては、派遣先が下記の①から⑥の優先順位で選定します。

  • 「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
  • 「職務の内容」が同じ通常の労働者
  • 「業務の内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者
  • 「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
  • ①~④に相当するパート・有期雇用労働者(短時間・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されていることが必要です)
  • 派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者

提供しなければならない「待遇に関する情報」

派遣先は上記の比較対象労働者の「待遇に関する情報」を提供しなければなりませんが、その内容はどちらの方式を採用するかによって異なります。均等・均衡方式を採用する場合、派遣先企業が派遣元企業に提供しなければならない「待遇に関する情報」は以下の5点です。

  • 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲ならびに雇用形態
  • 比較対象労働者を選定した理由
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含みます)
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質および当該待遇を行う目的
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するにあたって考慮した事項

他方で、労使協定方式を採用する場合に派遣先企業が派遣元企業に提供しなければならない「待遇に関する情報」は以下の2点です。

  • 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練(派遣法第40条第2項の教育訓練)
  • 給食施設、休憩室、更衣室(派遣法第40条第3項の福利厚生施設)

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まとめ

派遣法の改正の大きなポイントで押さえるべきは、待遇決定の方法と情報提供義務です。この2つを押さえて、改正法施行に先立ち早めに準備することが望ましいでしょう。

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