出張でたまったマイレージの私的利用、アリ? ナシ?

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公開日:2018.4.2

経費で購入した物品に対するポイントや飛行機出張のマイレージなど、貯まったポイントの所有権が誰に属するのか、実は法的に明確になっていません。そのため現状では、ポイントを個人に帰属させる、ポイントを貯めないように指導する、などのようにその解釈は会社ごとに分かれています。今回は、そんな業務上発生したポイントの私的利用の法的解釈について、詳しく解説します。

会社のルール次第

まず結論から申し上げると、会社の経費による支払いに対して付与されたポイントやマイルは、原則として会社に帰属します。しかしこれはルールを定めていた場合には明確ですが、そうではない場合にはケースバイケースの判断となるようです。

ルールを定めている場合

会社があらかじめ就業規則などで会社名義のポイントカードを使用するというルールを定めていたとします。ポイントカードの場合は法人で作れるものも多いため、そうしたルールを設けること自体は難しくはありません。このように社内規則で明確に定められているにもかかわらず、社員があえて自身のカードを使用してポイントを自分のものにしていたと判明すれば、会社側はその従業員を懲戒処分することができます。場合によっては、その社員は業務上横領罪等に問われ、刑事罰を受けることもあり得るでしょう。

ルールを定めていない場合

経費で購入した物品に対して貯まったポイントや、飛行機による出張で貯まったマイルなどが誰のものとなるかは会社のルール次第になりますが、就業規則などでルールを定めていないとすると、その対処は少し複雑になります。この場合、2つの考え方があり得ます。

  • 会社のものであるとする考え
    会社の経費で行なった買い物に対して付与される利益は会社のものであるのだから、たとえルールがなくともポイントは会社のものであるとする考え方です。このような考えに立つ場合、会社に確認せずポイントやマイルを自己のものにした社員は、ルールが定められた場合と同様に業務上横領罪や懲戒の対象となり得るでしょう。
  • 会社のものではないとする考え
    会社はルールを定めずにポイントを得る権利を放棄しているのだから、その放棄された権利を社員が得ることは何ら問題がないという考え方です。特にルールを定めず、会社側が法人カードを作ったり経費で得たポイントを社員に報告させたりもせずに、ポイントやマイルを管理しようとはしていないような場合、会社側はポイントやマイルに無関心で、事実上ポイントを得て活用する権利を放棄しているものと見なせます。
    その場合、社員が自分自身のカードでポイントやマイルを得なければ、当然そのポイントは誰にも取得されず、会社のものにもなりません。また、社員はポイントに関係なく実際に支払った金額を経費として請求しているにすぎないので、会社には財産上の損害は発生しません。したがってポイントを得た社員は、誰のものでもないものを得ただけであり、業務上横領などでその違法性を問うことはできないと考えることができます。
    そもそも、一般的なポイントカードのポイント付与率は、100円あたり1ポイントです。1%程度の非常に小さな還元率であることを考慮すると、ルールの設定がない中、ポイントの取得を横領と同様に見なして処分対象とするのは、やはり無理があるとも言えそうです。

以上の2つの考え方のどちらかが採用されるかは、会社がポイントやマイルの扱いについて指示を出していたのか、出していたとすればどのようなものだったかなど、様々な点を基に判断されるため、この場合はこうと一概に言うことはできません。そのため、それぞれの状況に合わせて、ケースバイケースで判断する必要があります。

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ポイントが「個人」に付与されると考えられるときは注意が必要

ポイントやマイルが個人を対象とするものである時には、上記とは別の考え方があり得るので注意が必要です。会社の経費で行なった買い物に対して付与されるポイントやマイルは会社のものであるとする立場に対して、そのポイント等が個人を対象に付与されるものである以上、そのような解釈は不可能ではないかという考え方です。この意見の対立は、飛行機の搭乗によって得られるマイルに関して特に問題となるでしょう。

飛行機搭乗で付与されるマイルの場合

マイルは、他のポイントに比べると還元率もよく、それなりの経済的価値を持つものと言えます。そしてマイルの場合には、そもそも法人向けカードがなく、会社がマイルを取得して法人として使用することを想定していないことがしばしばあります。さらに、マイルは飛行機に搭乗しなければ付与されず、航空券の購入のみでは発生しません。したがって、マイルは実際に飛行機に搭乗した搭乗者個人を対象として付与されていると考えられ、会社によるマイルの所有権の主張は不当であると、出張した従業員がこのように主張することもできるでしょう。

各省庁は個人のマイルの管理をしている

しかし、このような考え方が常に通用するとは限らないようです。民間企業の例ではありませんが、中央官庁におけるマイルの取り扱いが示唆的です。各省庁は、公費により購入した航空券での搭乗によって得られたマイルは、個人のマイレージカードに登録しないように求めています。とはいえ、そのままではマイルが誰のものにもならず無駄になってしまうので、定期的に出張をする必要がある職員などには、公用マイレージカードの作成を促しています。マイレージクラブの仕組み上、カード自体は個人名義のままですが、プライベート用のカードとは分けて出張の分のマイルが蓄積されることになります。

公用マイレージカードで貯まったマイルを次回以降の出張で使用すれば、大きな経費削減につながります。外務省の発表によれば、公用マイレージ制度を導入した平成21年1月から同年10月末までの間で、各個人の保有する公用マイレージの総計値は計26,339,902マイルにも及びました。こうして貯まったマイルによって10件の出張の航空券が賄われ、結果として300円万以上の公費が節減されたとのことです。

このように、中央官庁が出張によるマイルを制度的に管理できている以上、少なくとも明確なルールがあれば、法人が社員の出張によるマイルを管理し有効に活用することも、充分に可能でしょう。

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まとめ

経費で購入した物品に対するポイントや飛行機出張のマイルなど、貯まったポイントの所有権に関しては、法的に明確にされていないために複数の考え方が存在します。そのため、まずは会社内でルールをしっかり定めていくことが、トラブル防止のためには有効だと言えるでしょう。

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