公益通報者保護法が改正!体制整備のポイントを詳しく解説します

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公開日:2022.7.19

2022年6月より公益通報者保護法が改正されました。この改正によって、事業者は内部通報に適切に対応するために、通報者を保護する体制整備への対応が必要になります。中小企業においては努力義務となっておりますが、企業規模にかかわらず体制整備を行うことで、不正の抑止や早期発見が可能となります。また、適切な体制整備を行うことは企業価値の向上効果も考えられることから、制度導入を検討しませんか。今回は改正公益通報者保護法の概要、改正のポイント、事業者が行うべき措置について詳しく解説します。

公益通報者保護法の改正

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法とは、公益通報を行った人を保護するための法律です。公益通報とは企業をはじめとする事業者による違法行為などを、従業員が通報窓口や外部機関に通報する行為を指します。公益通報は組織の悪事を是正する正しい行為ですが、通報者が企業から解雇や降格といった不利益な取扱いを受ける恐れがあります。公益通報者保護法は、そうした危険から通報者を守るための法律です。

公益通報者保護法改正の背景

公益通報者保護法の施行後も、以下に挙げるような課題が存在していました。

  • 企業が適切に対応できていない
  • 公益通報者の保護が足りていない
  • 法律の内容の適用範囲が狭い
  • 保護される通報者の要件が厳しい
  • 企業への罰則が不足している

公益通報者の保護が満足に行われているとは言えない状況を改善するため、企業における公益通報への適切な対応の促進や通報者保護の強化を目的として改正が行われました。

    

公益通報者保護法の改正ポイント

体制整備の義務化

内部通報に適切に対応する体制整備が企業の義務となりました。ただし、従業員数が300人以下の中小事業者は努力義務とされています。具体的な体制整備の内容は以下の通りです。

  • 公益通報業務の担当者を定める
  • 体制を整備して措置を実施する
  • 助言や指導などの行政措置を導入する
  • 公益通報に関連する指針を策定する

企業が自ら率先して不正をなくしていくためにも、安心して通報を実施できる環境構築が求められています。社内の不正を見逃さずに、誰もが不利益なく通報を行える体制を整えましょう。

通報に関する情報の守秘義務

企業の内部通報担当者に対して、情報の守秘が義務化されました。公益通報対応業務で知り得た情報のうち、通報者を特定可能な内容を正当な理由なく漏洩してはなりません。例えば、通報者の名前や住所などが個人を特定できる情報に該当します。もし、この守秘義務に違反した場合は、30万円以下の罰金が科せられるので注意しましょう。

公益通報者の保護要件緩和

行政機関や報道機関などへの通報を理由とする企業による不当な扱いを無効とできる要件が緩和されました。

  • 行政機関への通報
    氏名や通報対象の事実と思われる内容を記載した書面の提出が保護対象に追加されました。
  • 報道機関などへの通報
    財産に対する損害が生じる場合、通報者を特定する情報が漏れる恐れが強い場合も追加されました。

保護範囲や内容の拡大

  • 通報者について
    退職者や役員についても保護対象になりました。保護される退職者は、退職後1年以内の人が対象です。
  • 通報について
    現行の刑事罰の対象である犯罪行為に加えて、行政罰で過料の理由となる事実が含まれる通報も保護されます。
  • 保護内容について
    損害賠償責任の免除も保護対象として追加されました。通報を理由とした解雇や降格といった不利益な取り扱いの無効に加えて、賠償の請求も禁止されたので認識を改めましょう。

    

公益通報者保護法の改正で必要な措置

内部公益通報対応体制の構築

  • 公益通報の担当者を定める
    公益通報の担当者とは、​​通報の受付や調査是正措置に関する業務に携わる人を指します。例えば、コンプライアンス部門などに所属する方や担当役員などが該当します。
  • 内部通報窓口の設置
    企業内部の問題をいち早く把握するためにも、連絡の橋渡し役となる窓口の設置が重要です。コンプライアンス部や人事部、総務部などに内部通報窓口を設けましょう。
  • 通報対応における利益相反の排除
    内部通報体制の構築において重要なことは利用者から信頼されることです。通報に関する調査や是正の業務の過程で、事案関係者の関与が確実に発生しないような体制を構築しましょう。

保護体制を整備

  • 不利益な取扱いの防止
    公益通報によって不利益な取扱いを受けない体制を整備しなくてはなりません。教育や注意喚起を行うだけでなく、不利益な取扱いを受けた際の相談先も準備しましょう。
  • 範囲外共有な防止
    部外者に情報が漏れる事態は防がなければなりません。情報の閲覧権限を設定する、専用の連絡先を設けるなどの措置を実施しましょう。

構築・整備した体制の運用

  • 教育や周知
    従業員や役員、さらには退職者に対して、十分な教育や周知を行いましょう。社内研修を実施して、内部通報対応体制に対する理解を深めるといった取り組みが有効です。
  • 是正措置などの通知
    公益通報への対応結果が通報者に通知される仕組みを作りましょう。ただし、情報の明示に支障がある場合を除きます。
  • 記録の作成と保管
    公益通報への対応などに関連する記録を作成し、適切な期間保管しましょう。
  • 内部規程や指針の策定
    公益通報に関連するルールを内部規程として明確に定めましょう。担当者の交代などが発生したとしても、指針に沿った公益通報の管理と運用が求められます。

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まとめ

公益通報は悪事を是正して業務を本来のあるべき姿にするために重要なアクションです。しかし、公益通報に対して不安を抱いたり、解雇を危惧したりする人もいます。また、余計な仕事を増やされては困ると、企業側の対応が後ろ向きである場合もあります。不正行為が当たり前に行われてしまう社内環境に流されて、何も意見を言えずに業務を進めるという事態は避けなければなりません。公益通報という勇気ある行動に対して、不利益な扱いが行われないよう保護する体制整備が重要です。公益通報者保護法の改正を契機に、社内における公益通報対応体制の構築や見直しを実施しましょう。

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