【シリーズ】事例で解説!就業規則の隠れた意味3:給与が下がる?降格には3種類あるのを知っていますか?

カテゴリ:コラム 投稿日: 2016.4.21 tag: , ,

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本シリーズは、「意外と知られていない就業規則の隠れた役割」について、労働法の観点から解説する連載企画です。従来、給与は年次とともに上がるのが普通でしたが、昨今では実力主義や評価の透明性の観点から給与を下げるケースも多く見られます。

しかし、簡単に降格させたり給与を下げたりする前に要確認! 今回は、降格処分の種類と違法な降格処分を防止するための注意点について解説します。きちんと就業規則に書いてあるか確認しましょう。職能資格の引き下げとしての「降格(降級)」と懲戒権行使としての「降格」については、特に就業規則が大事になります。

降格の種類

会社は、社員の配置や職位の決定、給与等級を決定するにあたって、昇進だけでなく、降格を行うことも多くあります。しかしながら、社員に不利益を与える降格については、適切に行わなければ、違法・無効となる可能性があります。「降格」とひとことで言っても、その根拠により以下のとおり区別して考える必要があります。

① 人事権行使としての「降格」   (a) 職位の引き下げとしての「降職(解任)」   (b) 職能資格の引き下げとしての「降格(降級)」②懲戒権行使としての「降格」

あなたが考えているのはどのケースにあてはまるのか、考えながら見てみましょう。

 

①人事権行使としての「降格」とは

人事権行使としての「降格」は、使用者である会社が労働契約に基づき本来的に有する権利といえますので、比較的広く認められます。「降格」には、(a) 職位の引き下げとしての「降職(解任)」と、(b) 職能資格の引き下げとしての「降格(降級)」の2種類があります。それでは、(a) と(b)はどのように違うのでしょうか?

―(a) 職位の引き下げとしての「降職(解任)」とは、社員の職位(役職・ポスト)を解き、より下位の職位に変更することをいいます(例:部長→係長)。

―(b) 「降格(降級)」とは、社員の職能資格や給与等級(グレード)を引き下げることをいいます(例:5等級→3等級)。

これらは、いずれも使用者が本来的に有する人事権の行使として行われるものであるため、懲戒処分の規制にはかかりません。一方で、「降職(解任)」は、それ自体としては給与の減額を伴わないのに対し、「降格(降級)」は、それ自体が通常は基本給を減額する処分である点において大きく異なります。

ただし、(a)「降職(解任)」の場合でも実質減額となるケースがあります。ポイントは会社の給与の支払い方。元の職位に対し役職手当が支払われていたような場合には、その職位を解かれることにより、事実上給与の減額を伴う場合があります(部長手当5万円→課長手当2万円)。

もっとも、誰をどのようなポストに配置するかは、会社の裁量において当然に決定することができるものと解されています。また、このような給与の減額があったとしても、職位(役職・ポスト)の変更の結果として付随的に生じたものに過ぎず、通常は基本給の変更を生じません

したがって、「降職(解任)」については、就業規則上の定めや対象社員の同意を要しません。また、会社に広範な裁量が認められるため、人事権の行使として社会通念上著しく妥当を欠き、権利の乱用に当たると認められる場合でない限り、違法とはならないとされています。

しかし、「降職(解任)」の理由に合理性が無い場合や、あまりに社員に不利益の大きい場合などは、人事権の濫用に当たると判断されるおそれがありますので注意が必要です。

基本給の減額の効果を生じる(b)「降格(降級)」は、裁判例上も、社員との合意による場合以外は、就業規則等の明確な根拠規定が必要であるとされています。なぜなら、基本給の減額は、社員にとって重要な労働条件の不利益変更に当たること、

また通常の職能資格制度では、社員の技能・経験の向上による職務遂行能力の到達点を示すことを目的としたものであって、資格の引き下げは本来予定されていないと考えられているためです。また、就業規則等の根拠規定に基づくものであっても、権利乱用等に当たると認められる場合には、違法となってしまいます。

 

②懲戒権行使としての「降格」とは

一方、懲戒権行使としての「降格」は、社員に対する懲罰権ですので、懲戒処分としての規制に服することになります。具体的には、就業規則に根拠規定があること、懲戒事由に該当すること(合理性)、懲戒処分が社会通念上相当であると認められること(相当性)等が無い限り無効とされるおそれがあります。

したがって、ここでも、就業規則が重要な意味を持つことになります。(懲戒権行使に関しては、本シリーズ第1回をご参照ください)。

まとめてみましょう。人事権行使としての「降格」には以下の2つがあります。

(a) 職位の引き下げとしての「降職(解任)」

本来的に有する人事権の行使として行われるものです。就業規則上の定めや対象社員の同意を要しません。通常は基本給の変更を生じないものです。

(b) 職能資格の引き下げとしての「降格(降級)」

基本給の減額があります。このため、社員との合意による場合以外は、就業規則等の明確な根拠規定が必要です。

 

まとめ

以上のように、「降格」には3つの種類があることを理解した上で、職能資格の引き下げとしての「降格(降級)」や、懲戒処分としての「降格」を行う場合には、まずは就業規則に根拠規定があるかどうかを確認した上で、権利乱用に当たらない範囲で適切に行うことが重要です。

①人事権行使

としての「降格」

(a) 職位の引き下げとしての「降職(解任)」

就業規則上の定めや対象社員の同意不要

(b) 職能資格の引き下げとしての「降格(降級)」

社員との合意による場合以外は、就業規則等の明確な根拠規定が必要

② 懲戒権行使

としての「降格」

 

就業規則に根拠規定があること、懲戒事由に該当すること(合理性)、懲戒処分が社会通念上相当であると認められること(相当性)

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