【シリーズ】事例で解説!就業規則の隠れた意味2:就業規則は労働条件の最低ライン

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公開日:2016.1.20

オフィスで微笑む女性

就業規則の役割

就業規則の隠れた意味:懲戒処分では、就業規則の2つの役割を紹介しました。

  1. 従業員に対する労働条件明示の確保と労働条件の最低ラインの確保
  2. 企業内の秩序維持と労務管理の効率化

今回は、1の観点から、意外と知られていない就業規則の隠れた役割について解説します。

労働条件の最低ラインと就業規則

就業規則は、会社で就業するにあたって従業員が守るべき規則を定めたルールブックであるとともに、労働時間や休日、賃金などといった従業員の労働条件についても規定しています。

従業員の労働条件については、会社と雇用契約書にて個別に定め、合意するのが原則です。しかし、ある程度の人数がいる場合には、労働条件を画一的に定めておく方が経営上も効率的であるため、就業規則の中に、従業員の労働条件についても規定しておくのです。

ここで、雇用契約書と労働条件通知書の関係性を確認しておきましょう。
雇用契約書と労働条件通知書には、以下のよう違いがあります。

雇用契約書:労働条件について会社と従業員との間で合意した内容を定めた契約書
労働条件通知書:会社が従業員に対し、一方的に労働条件を通知するもの

就業規則のある会社では、画一的な労働条件や従業員に守ってほしい就業上のルールについては就業規則に定められているため、労働条件通知書には従業員ごとに異なる個別の条件(契約期間、就業場所、具体的な給与の額や賞与の有無など)を記載することで足ります。

一方、就業規則のない会社では、画一的な労働条件や就業上のルールについても雇用契約書で定めておかなければ、従業員に指揮命令したり、ルールを守るよう求めることができなくなる場合があります。

したがって、就業規則のない会社では、雇用契約書を使用し、就業規則のある会社では、労働条件通知書を使用するのが一般的です。

雇用契約書 = 就業規則 + 労働条件通知書

ただし、このような区別は厳密なものではなく、「労働条件通知書」であっても、従業員の同意を得たことを証するために、従業員の署名・捺印を求めるものもあります。

さて、就業規則を定めた場合、就業規則と労働条件通知書(または雇用契約)の内容が一致しない場合、労働条件はどうなるのでしょうか。

例えば、就業規則では毎年12月に基本給の1カ月分のボーナスを必ず支給すると定めているが、労働条件通知書ではボーナス支給無しと定めている場合、この社員はボーナスをもらうことができるのでしょうか。

この場合は、会社は、基本給1カ月分のボーナスを支給しなければなりません。なぜなら、就業規則には、直律効という効力が付与されているためです。

労働契約法第12条
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

つまり、就業規則で定める労働条件よりも労働者に不利な条件を内容とする合意は、たとえ社員との間で個別に合意したとしても無効とされ、就業規則に定める通りの労働条件となるのです。

このように、就業規則は、労働条件の最低ラインを確保する役割を果たすため、就業規則を定めた企業は、その内容が自社の運用実態に即しているかを定期的に確認する必要があります。大昔に定めたはよいものの、その後しばらく誰も確認しておらず就業規則の内容が現状とは全くずれているといったことはよくあります。

しかし、そのような状態で就業規則の規定内容を確認せずに、個別の労働条件通知書や雇用契約で社員に不利な条件を定めてしまうと、トラブルが生じた際に、実は個別合意の方は無効だったといった事態が生じかねません。

「就業規則は労働条件の最低ライン」ということを忘れないようにすることが重要なのです。

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