平成29年1月より改正された育児・介護休業法では、育児・介護等を理由とした不利益取扱いを禁じる規定が強化され、不利益取扱いを防止する措置が義務化されたことでも話題になっています。労働基準法をはじめとして、その他の労働関連法令においても、様々な形で労働者の「不利益取扱い」は禁止されています。今回は、不利益取扱いを禁止する条項を定めた労働関連法令とその内容をまとめ、厚生労働省によって示されている不利益取扱いの例について解説します。
不利益取扱いとは?
不利益取扱いとは、使用者が雇用する労働者のことを不利益に扱うことを言います。ここで言う不利益に扱うというのは、労働者が労働組合へ加入するなどの、労働者の持つ権利を行使したことを理由に解雇や降格などの労働者にとって不利な処置を取ることです。
使用者にこの取扱いを許してしまうと、労働者はその権利を行使することが困難となるため、法令で禁止されています。
不利益取扱いの禁止に関する法令
不利益取扱いをすることの理由とすることが禁止されている労働者の行為は、いくつかの法律によってそれぞれ定められています。ここでは法律ごとにまとめて紹介します。
労働基準法
労働基準法では、以下に挙げられることを理由に、その労働者に対して不利益な取扱いをすることを禁止しています。
- 使用者の労働基準法に違反するような行為を行政官庁などに申告したこと(第104条)
- 労働者が有給休暇を取ったこと(第136条)
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労働組合法
労働組合法第7条の第1項では以下に挙げられることを理由に、その労働者に対して解雇などの不利益な取扱いをすることを禁止しています。
- 労働組合の正当な行為をしたこと
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法(正式名称:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)第9条では、以下に挙げられることを理由に、女性の労働者に対して不利益な取扱いをすることを禁止しています。
- 妊娠や出産をしたこと
- 産休を取ろうとすること、または取ったこと
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育児・介護休業法
育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)では、以下に挙げられることを理由に、労働者に対して不利益取扱いをすることを禁止しています。
- 育児休業を取ろうとすること、または取ったこと(第10条)
- 介護休業を取ろうとすること、または取ったこと(第16条)
- 子供の看護休暇を取ろうとすること、または取ったこと(第16条の4)
- 介護休暇を取ろうとすること、または取ったこと(第16条の7)
また、以下のことは子供を持つ労働者、要介護の家族を持つ労働者のどちらにも適用されます。
- 所定労働時間外の労働をしなかったこと(第16条の9及び第16条の10)
- 法定労働時間外の労働をしなかったこと(第18条及び第18条の2)
- 深夜に労働をしなかったこと(第20条及び第20条の2)
- 所定労働時間を短縮したこと(第23条及び第23条の2)
ここでいう、所定労働時間とは使用者との雇用契約によって定められた労働時間のことを指し、法定労働時間とは労働基準法第23条によって定められる労働時間の限度のことです。
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公益通報者保護法
公益通報者保護法第5条では、労働者が公益通報したことを理由に、その労働者を不利益に取り扱うことを禁止しています。公益通報とは、公共の利益を損なうような使用者の法律違反行為などを行政機関などに内部告発することです。
雇用保険法
雇用保険法第73条では、労働者が雇用保険の被保険者になったこと、または被保険者でなくなったことを使用者に確認を取ったことを理由に、その労働者を不利益に取り扱うことを禁止しています。
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「不利益取扱い」となる労働者の取扱いは?
不利益取扱いとは労働者に対するどのような処遇のことを指すのでしょうか。厚生労働省の平成21年第509号の告示では以下のような例が挙げられています。
- 解雇すること
- 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
- あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
- 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
- 自宅待機を命ずること
- 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は 所定労働時間の短縮措置等を適用すること
- 降格させること
- 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
- 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
- 不利益な配置の変更を行うこと
- 就業環境を害すること
まとめ
労働者の不利益取扱いは行政機関などの勧告に従わない悪質なものとなると、企業名が公表されることとなります。労働者の権利を侵すことのない、明るい職場づくりを目指していきましょう。