結婚や配偶者の転勤などで離職した場合の再雇用について解説!

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公開日:2018.9.20

再雇用制度は定年退職者だけでなく、結婚、出産や育児、配偶者の転勤などによってやむを得ず退職した方のためのものでもあります。共働きが一般的になっているいま、こうした方々の再雇用が注目を集めています。今回は、これらの再雇用制度導入のメリットとデメリットを解説していきます。

再雇用制度のニーズの拡大化

少子高齢化により労働力が減少する中、結婚、出産や育児、配偶者の転勤など、やむを得ない理由で辞めていく従業員を休職させる、もしくは再雇用させる制度が注目を浴びています。就業構造基本調査によれば、育児のために仕事をしていない25歳から49歳の女性の6割が、何らかの仕事に就くことを希望しています。また、「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業」の労働者へのアンケート調査では、出産・育児などを理由に退職した女性に退職当時の再就職希望の有無を尋ねた項目において、復職の時期を決めていないも含めれば実に9割以上の調査対象者が再び就業したいと回答しています。

出産や育児を経ての復職に関しては、かつてよりも強い社会的要請があります。多くの企業が出産や育児で休業、退職した社員のための復職ルートを提供しており、近年では配偶者が転勤した場合に休業できる制度を設ける企業や官庁もあります。

例えば2013年には、「配偶者同行休業法」に基づく国家公務員の配偶者転勤休業制度が設けられました。これは、国家公務員が配偶者の海外転勤に合わせて国外に引っ越す場合に最長3年間の休職を認めるもので、配偶者は必ずしも国家公務員である必要はありません。この制度をさらに進めて、配偶者と同じ場所で働けるようにして離職を避けさせるように制度設計している企業もあります。ただ、育児や出産に関する制度に比べれば、このような制度を導入している企業はまだまだ少ないのが現状です。

なお、一般にこうした制度の利用者には女性が想定されがちですが、核家族化の進展と就業への男女共同参画の広がりを背景に、このような制度のニーズは、育児や介護をしなければならない男性にも存在しています。女性だけではなく男性も使いやすい制度とすることが望ましいでしょう。

 

再雇用制度のメリット

即戦力の確保

2015年に行われた「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業」の企業アンケート調査によれば、およそ8割の再雇用制度導入企業が「退職前に培った業務経験を活かして働いてもらうことができる」ことを制度のメリットとして挙げており、多くの企業がこの点を他のメリットよりも実感していることが分かります。再雇用制度を通して、その企業独自の仕事のやり方をわかっている人や、その分野の業務経験を確実に持っている人を採用することは、即戦力の確保に大きく貢献します。このメリットは、中途採用・新卒採用ともに競争が激しくなっている近年では、非常に大きなものと言えるでしょう。

採用コストの低下

新卒採用をはじめとする通常の採用には、採用広告費用や選考費用、人材紹介会社を利用するのであれば紹介費用など、多くの費用がかかります。さらに、採用後には教育コストも少なからず必要となるでしょう。もし再雇用制度があれば、出産や育児で離職した元社員が自社に自分で応募してくれる可能性が高いので、採用のための宣伝広告費を抑えることができます。以前働いていた人を再び採用するわけですから、選考費用や教育コストも低く抑えることができるでしょう。このように採用コストを抑えることができることも、再雇用制度の大きなメリットです。

企業へのロイヤリティーの確保

即戦力の確保だけが目的であれば、かつて自社で働いていた人を再び雇用するメリットは薄いように思えます。しかし、一般の中途採用と再雇用制度による採用の最も大きな違いは、後者の場合は企業へのロイヤリティーをすでに持って入社(復職)してくれる可能性が高いということです。「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業」の企業アンケート調査では、調査対象の導入企業の半数以上が、再雇用制度のメリットとして「企業への愛着を持った人を雇用することができる」点を挙げています。

 

再雇用制度のデメリット

退職・休業前と同じように働けるとは限らない

再雇用制度を利用して復職しようとする社員は、再就業する時点の年齢や、それまでに離職していた期間、さらにはその能力や経験した職域で多様であるだけでなく、就業を希望する雇用形態も様々であることが多いです。人によっては復職前のようにフルタイムで働くのではなく、短時間勤務やリモート勤務を希望することもあるでしょう。その際に企業側が十全な制度を整えていなければ、彼らや彼女らを受け入れることができません。そのため、再雇用制度の導入の前提として多様な働き方を認めること、そのような働き方を認めるための制度設計を行うという手間を企業は取らなければなりません。

応募者と職場のマッチングができないことがある

退職・休業前から時間が経つほど、企業の組織体制や業務内容は変わるでしょう。せっかく再雇用制度に応募してくれた元従業員がいたとしても、その従業員がかつてのスキルを活かせるポストが空いているとは限りません。また、そもそも元従業員が取り組んでいた事業自体がなくなっていることもあります。そのことを精査せずに復職を認めてしまうと、従業員と職務のミスマッチングの原因となってしまうでしょう。

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まとめ

女性が活躍できる環境構築に対する社会的要請により、多くの企業で再雇用制度が整えられつつあります。再雇用制度には大きなメリットがある一方で、離職者・休業者が企業から離れている間にも企業は変わりますし、また離職者・休業者の働き方の希望も当然変わっていきます。双方のニーズを満たすためにも、企業の変化と多様な働き方に対応できるよう、適切な制度設計を行った上で再雇用を促進する必要があると言えるでしょう。

 

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