「勤怠」とは?「勤怠」って実は?勤怠を理解して働き方を最適化しよう!

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公開日:2016.7.27

勤怠管理_イメージ

人事労務担当者にとって必要になるのは「勤怠」について正しく理解し、適切に勤怠管理を行うことでしょう。しかし、勤怠管理はタイムカードなどを使用しても正しく把握できないことがあります。把握が難しいのは、どのような要因が考えられるのでしょうか。また、適正な把握ができていない場合のリスクなどをご紹介します。

人事担当者なら知っておきたい「勤怠」の基礎知識

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勤怠とは出勤や退勤をはじめ、休憩や休暇などの社員の「出勤状況」を示すものです。社員がどのくらい出社して、どの程度、残業し、休みを取っているかなどを把握し、就労規則など会社で決めたルールを遵守しているかを管理することを一般に勤怠管理と呼んでいます。

勤怠管理はなぜ必要なのか?

勤怠管理は給与にも関係する重要なもので、社員の労働時間について使用者は適切に管理し、必要な手当を支払わなければなりません。また、使用者が社員の勤怠を管理することは、社員にとっては働いたことを証明するものであり、労働に対するモチベーションの維持にも役立つといわれています。

勤怠管理の方法は企業によって差があり、出勤日のほかに出張や休暇などを把握するだけで、詳細な労働時間を把握していない場合も多いです。しかし、適正な労働時間の管理を行わず、必要な対策を講じていない場合は長時間労働による過労死や重い健康障害を発症することが少なくありません。また、残業代の未払いによる紛争や多額の賠償金が発生し、後々深刻な事態を招くこともあります。厚生労働省は、平成13年の通達において労働時間を適正に把握するための措置について基準を定めていますが、労働時間を適切に管理することは極めて重要です。

さらに、勤怠管理の情報を基に、残業の多さや偏りなどから業務量や配分が適正なのかといった検討なども行うことができるので業務の効率化やコスト削減にも役立つでしょう。

労働時間把握の義務化

2019年には働き方改革関連法の一環として労働安全衛生法が改正となり、客観的な方法による労働時間の把握が義務化されました。客観的な方法には、タイムカードによる記録やパソコン上の記録などが含まれ、3年間の保存が義務付けられます。また、2020年からは中小企業においても残業時間の上限に法的規制が課されるようになり、長時間労働の是正に向けた労働時間の管理が強化されました。こうした政府の方針からも読み取れるように勤怠管理はますます重要性を高めており、企業は労働者の労働時間を適切に把握することが必要です。

勤怠管理では何を把握したらよいか?

具体的には、労働時間の管理としては単に労働時間だけでなく、時間外労働時間や深夜労働時間、休日労働などについて知る必要があります。

主に把握する必要があるのは、以下の通りです。

  • 出勤、退勤時刻
  • 労働時間
    労働時間は分単位で記録することが原則であり、「15分・30分単位で満たない部分は切り捨て」といった方式は法律で認められていません。例え就業規則でこのように記載されていたとしても、労働基準法での記載の方が強い効力を持ちます。ここで、労働時間と就労時間の区別を正しく行う必要があります。就労時間は始業から終業までにかかった時間を表し、労働時間はそこから休憩時間を引いたものです。給与計算に必要な部分は労働時間ですが、過重労働を防ぐために就労時間も把握しておくと良いでしょう。
  • 時間外労働時間
    時間外労働は、所定労働時間を超えたことに対する時間外なのか、法定労働時間を超えたことに対する時間外なのかで残業代の計算が変わるため注意しましょう。
  • 深夜労働時間
  • 休日労働時間
  • 深夜労働時間
    深夜や法定休日に働かせた場合、割増賃金が計算されます。これらや時間外労働時間の割増賃金率は重複することがポイントです。
  • 出勤日数
    業務を行った日数を表し、1日に少しでも業務を行った場合には1日分の出勤日数がカウントされます。
  • 欠勤日数
    労働義務がある日に自分の都合で業務を休んだ場合、欠勤として扱われます。欠勤の場合には賃金が支払われません。有給休暇や病気休暇、休職との違いを把握しておきましょう
  • 休日出勤日数
  • 早退や遅刻の回数と時間
  • 有休日数、有休残日数 など

時間外労働と休日労働については、労働基準法に定められた法定内のものか、法定外かの区別も必要です。
また、近年テレワークや在宅勤務が増えてきていることから、それらの勤務体系にも対応可能な勤怠管理が必要になります。テレワークや在宅勤務において労働者は直接の監視下にないため、労働時間の適正な把握にはオンラインシステムを用いた勤怠管理が重要です。始業・終業をメールやオンライン勤怠管理システムで管理したり、チャットツールのアクティビティログを利用したりするなどして、不正や怠慢を防ぐ工夫をしましょう。

扶養の範囲内で働きたい社員への対応も必要

パートやアルバイトなどの働き方を選んでいる社員の中には「扶養の範囲内で働く」ことが重要な条件となる人もいます。毎月の収入が変わらない場合は、予め対処できるのであまり問題にならないでしょう。しかし、シフト制勤務で急なシフト変更が続いた、あるいは年末の繁忙期で想像以上に長時間勤務が必要になったなどの場合には月末の集計を待たずに労働時間の正確な把握が必要です。パート社員が多い職場では、それぞれの社員が把握することも必要ですが、労働時間数について照会があった際に適切に答えられることも求められます。

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的確な把握はなぜ難しい?こんな社員には注意!

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悪気はなくても「打ち忘れ」は担当者を悩ます要因

勤怠管理は出勤簿に捺印し、時間外労働は手書きで記入して上司に提出する場合もあれば、タイムレコーダーで出退勤や休憩時間などを管理している企業もあります。しかし、社員の人数が多く、さまざまな特性をもつ人が働く職場では、残念ながら社員の打刻もれや記入ミスなどは後を絶ちません。

また、営業などの関係で直行、直帰が多い職場ではタイムレコーダーに打刻ができないといったことも多いです。電話やメールで担当者に連絡が来て、担当者が対応するということもあるでしょう。また、複数の事業場がある場合にはタイムカードを持ち歩いて打刻する煩わしさだけでなく、あるいは持っていくのを忘れて打刻できなかったなどのケースもあるようです。

実態として、勤怠管理の方法がその事業場に合っていない場合は担当者がいくら注意喚起をしても打刻もれの改善ができず、担当者の確認や修正作業が増えてしまいます。

社員の中には不正打刻や改ざんする人も?

タイムカードの退勤時刻と実際の勤務終了時刻との間に大きな乖離が生じている人もいます。会社にはいたが、ただおしゃべりしていただけで、待機を命じられたなどの手待ち時間でもなければ時間外労働の割増賃金は法的には発生しません。

また、遅刻しそうな時に同僚に頼んで打刻してもらういわゆる不正打刻や意図的な改ざんなどが実際に起きている職場もあり、深刻な問題となっています。管理・監督者も薄々わかっていても黙認しているというケースもあるようですが、労働基準監督署の調査ではタイムレコーダーによる打刻が採用されることもゼロではありません。黙認せず、タイムカードの記録と実態が一致しているのか、必要に応じて確認する必要もあるでしょう。

ごまかす社員がいる一方で、まじめに働いている社員もいます。しかし、会社が悪質な社員に対し、緩い対応をしているとまじめな社員が労働意欲をなくしてしまう可能性もあります。使用者は厳格に勤怠管理をし、社員の労働を適正に評価するなど公平な態度が求められます。

問題のある社員には毅然とした態度で!

労働時間をごまかすために意図的に打刻をせず、後で偽りの時間を申告するなど残っている記録が実態に合っていないと考えられる場合はどうなるのでしょうか。監督署の調査や裁判などの例をみると、多くの場合、一つの方法ではなく、いくつかの方法で労働時間の推測が行われるようです。たとえば、パソコンのログイン・ログオフ、メールやFAXなどの送信時間、また、セキュリティの設定時刻や守衛の施錠時刻、さらに、上司や同僚への確認なども行われます。

これらの方法で推測するのを承知の上で、あえてパソコンをつけたままで帰宅するといった人もいますが、管理・監督者は黙認せずに毅然とした態度で接してください。タイムレコーダーの打刻をきちんとするのはもちろんのこと、帰宅する際には必ず電源をオフにし、社内にいつまでも居残ることがないように注意しましょう。

能力が低いなどの理由で残業が多い場合は?

労働時間が長いのは能力が低い、パフォーマンスが低いといった場合も否定できず、そのような社員に対し、不満を抱く同僚も少なくありません。残業をせずに時間内に仕事を終えて帰宅する人の中には「しっかりやって早く終わる人の方が、だらだらやっている人よりも給料が安いのは納得できない」という声も聞かれます。仕事の要領が悪い、能力不足に対しては社員教育のほか、業務フローや業務量などの見直し、あるいは異動を含めた対策が必要でしょう。

自己申告が少ない場合は黙認でよいか?

中には、残業が多いと上司に注意される、上司としては健康配慮からの注意であってもそれを気にして残業時間を少なめに申告する、一旦、打刻してから勤務を続ける人もいます。そのような社員に対しては、上司の方も対応の難しさを感じて、黙認にしていることもあるのではないでしょうか。

黙認したままにせず、仕事量の配分かという点も含めて検討するとともに、注意されると萎縮してしまう社員には日頃からコミュニケーションに気をつけましょう。上司として注意することは必要です。しかし、上司が言葉をかける時はいつも注意や叱責ということが続くと、部下は正直な気持ちを話すことができず、仕事の相談もしにくくなり、一層、仕事が滞ることになります。

社員が事実を話せるような上司と部下の関係をつくるよう、上司が気配りや目配りをすると部下の健康障害を予防でき、仕事への意欲が高まることも期待できます。人事労務担当者は上司が部下の対応に困っていないかに留意して、意識的に相談に乗るようにしましょう。

残業には「許可制」を取り入れる

不適切な残業や無駄な長時間労働を防ぐには、よくいわれることですが自己申告ではなく、管理監督者の許可を得て残業をする事前許可制を取り入れるとよいでしょう。また、休日に出勤している社員には休日の振替を採用することが、必要性の低い休日労働を抑制するのに役立つことも多いです。

残業には「事前承認制度」を取り入れる

不適切な残業や無駄な長時間労働を防ぐには、よくいわれることですが自己申告ではなく、管理監督者の許可を得て残業をする事前許可制を取り入れるとよいでしょう。また、休日に出勤している社員には休日の振替を採用することが、必要性の低い休日労働を抑制するのに役立つことも多いです。
許可性を取り入れる際には、黙示的指示の概念について把握しておく必要があります。黙示的指示とは、上司から直接的な残業の指示をしていない場合でも、残業しなければならない仕事量が与えたり、過剰なノルマを設定したりして、残業の指示があるものとして行動せざるを得ない状況を作ることです。残業の事前許可制を取り入れている企業において、許可なく残業をしている労働者がいたとしても、それが黙示的指示による残業である場合には割増賃金を支払う必要があるため注意しましょう。

 

その不正は誰の指示?勤怠管理を困難にする要因

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定額残業手当制度は違法ではありません。しかし、定額に含まれる残業分を超えた場合は手当の支給が必要です。中には、どんなに残業をしても「月の予算内にするように」、あるいは「打刻をしてから残業するように」などの指示がなされる場合も少なくありません。実態に即した残業代が支払われていない場合、社員は適切な残業代の支払いを請求することができます。

使用者の中には、労働時間をあえて明確にしないためにタイムカードや勤怠管理システムを導入しないという人もいます。また、労働者名簿や賃金台帳など労働関係に関する重要な記録の保管義務が3年間と知りつつ、破棄してしまう、あるいは記録を改ざんするなどの問題も起こっているようです。帳簿類の改ざんなどの悪質な場合には刑事罰を含めた罰則規定が定められています。

勤怠管理システムを用いた勤怠管理の流れ

以前までは、勤怠管理の方法としてタイムカードが主流で、各従業員が打刻したタイムカードを労務担当者が月末に手入力で集計し、計算を行っていました。
勤怠管理システムを用いた勤怠管理では、各従業員がPCやスマホなどのデバイスから打刻をし、始業時間と終業時間を記録できます。記入漏れや修正の必要が生じにくく、月末の集計が簡易になります。また、場所を選ばずに打刻が可能なため、テレワークや位置情報を用いて出先での打刻などが正確に行えます。
打刻された情報は管理者画面でリアルタイムに確認することができ、誰が出勤をしているのか、長時間労働をしている従業員はいないか、といった事項が直感的に把握できます。
勤怠管理システムは給与計算ソフトと連携していることが多く、以前のタイムカード方式では、手入力で打ち込んだデータを元に給与計算を行うため、時間外労働や深夜労働の計算が複雑でしたが、これが自動で可能になります。

 

裁判に発展!残業代未払いのリスクは想像以上?

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労働に関する問題としては労働基準監督官が立ち入り検査を行う定期監督や申告監督などのほか、労働組合の団体交渉や残業の未払い分の請求を受ける場合などが考えられます。

定期監督で残業代未払いの違反は多い

ここで、東京労働局における定期監督の結果をご紹介しましょう。平成27年の定期監督では実施した事業場のうち約76%に違反がみられ、もっとも多かったのは「労働時間」の労働基準法32条に違反するもので、次は「割増賃金」(37条)に関するものでした。

具体的には、時間外労働に関する36協定の締結、あるいは届け出をせずに法定労働時間を超えた労働をさせている場合です。割増賃金が未払いとなる理由としては、労働時間の管理が適切に行われていないことが多いと報告されています。

残業代未払いで高額な支払いや厳しい罰則も

平成28年6月、岡山県にあるJAつやまでは正社員の3分の2が残業代の未払いを請求し、その額は3億円を上回ると報道されました。過去にも、賃金の未払い問題が裁判に持ち込まれ、高額の支払い命令が下されたケースは少なくありません。

特に、すでに退職した社員の場合には未払い残業代と同額の「付加金」を求められる可能性もあるので、そうなると請求額は未払い残業代の二倍になってしまいます。なお、「賃金の支払の確保等に関する法律」によって、退職した日の翌日から年14.6%の遅延利息も必要です(賃確法:第6条)。さらに、残業代の支払いに応じない悪質なケースでは刑事罰が科せられることもあり、企業が受けるダメージは金銭だけでなく、社名を公表されることで社会的な信用にも影響します。

残業代削減だけが目的になっていないか?

時間外労働の適正化を図ることは残業代の削減につながり、長時間労働による健康障害を防ぐことにもなります。しかし、残業がある程度、恒常的に行われている場合は残業代が減ることは社員にとっては「賃金の引き下げ」という認識になりかねません。会社としての方針を丁寧に説明し、理解を得ることが大切でしょう。

残業代の削減を全面で出し過ぎて社員の理解が得られない状態になると、社員の労働意欲が低下し、生産性の低下につながる可能性があります。経費の削減になっても、会社の収入も減少してしまうといったことがないようにしましょう。それには、的確な勤怠管理の必要性を丁寧に説明する努力は怠らないこと、また、社員の労働を適切に管理してきちんと賃金を支払うことです。

引用元:
「賃金の支払の確保等に関する法律」

 

まとめ

社員の勤怠を管理すること、つまり、出退勤の時刻や休暇などを把握することは給与を正しく支払うためにも、適切な労働時間内に抑えて社員の健康を守る上でも重要です。勤怠管理で把握している項目の変化がどんな意味をもつのかを理解しておくことも必要になります。勤怠を通して、社員の健康や仕事へのモチベーションを維持すること、生産性への向上にもつながることを理解しておきましょう。

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