学生でも加入対象に?社会保険(厚生年金・健康保険)の適応要件を解説

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公開日:2016.10.1

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平成28年10月1日から社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用が拡大されます。これにより、今まで労働時間の要件を満たさず社会保険の加入対象となっていなかったパートやアルバイトなどの短時間労働者も、今回新たに社会保険の加入対象となります。

あなたの会社にも、新たに加入対象となる人はいませんか? 手続きはきちんとできていますか? 制度に関する正確な情報を把握して、しっかりと備えておきましょう。

社会保険(厚生年金保険・健康保険)とは

日本国内に住む20歳以上の人は、公的年金制度と医療保険制度に加入することが義務付けられています。このうち、民間企業や団体などに雇用されて働くサラリーマン等は、「厚生年金保険」や「健康保険」に加入しており、これらを「社会保険」といいます。

平成28年9月末までは、一般的に週30時間以上働く人が社会保険の加入対象とされており、パートやアルバイトなどの短時間労働者は、労働時間の要件を満たさなければ社会保険の加入対象にはなっていませんでした。

平成28年10月1日からは、社会保険の適用が拡大され、「従業員が501人以上の会社で週20時間以上働く人」まで加入対象が広がります。社会保険の適用が拡大されることで、より多くの人が、より手厚い保障を受けられるようになるのです。

 

下記要件を満たす人が、新たに社会保険の加入対象となります

今回の社会保険の適用拡大により、平成28年10月1日からは、以下の①~⑤のすべての要件を満たす人が新たに社会保険の加入対象となります。

週の所定労働時間が20時間以上であること

就業規則や雇用契約書等により、あらかじめ働くことが決まっている所定労働時間(残業時間は含めません)が週20時間以上である場合に該当します。なお、現在雇用保険に加入している人は、すべてこの条件に当てはまります。週の所定労働時間が定まっていない場合は、下記の計算によって算定します。

  • 1ヶ月単位で定められている場合…1ヶ月の所定労働時間×12ヶ月÷52週
  • 1年単位で定められている場合…1年間の所定労働時間÷52週

雇用期間が1年以上見込まれること

期間の定めがなく雇用される場合や、雇用期間が1年以上である場合、また、雇用期間が1年未満であっても雇用契約書に契約が更新される旨または更新される可能性がある旨が明示されている場合はこれに該当します。

平成28年10月1日より前から引き続き雇用されている人については、平成28年10月1日から起算して雇用期間が継続して1年以上見込まれるか否かを判定します。

賃金の月額が88,000円以上であること

週給や日給、時間給を月額に換算したものに、各諸手当等を含めた所定内賃金の額が88,000円以上である場合に該当します。ただし、賞与や残業代、通勤手当などは除きます。

学生でないこと

生徒または学生は、社会保険の適用対象外となります。ただし、卒業見込証明書を有する人で卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の人や、休学中の人、大学の夜間学部や高校の夜間等の定時制の課程の人などは加入対象となります。

常時500人を超える被保険者を使用する企業に勤めていること

厚生年金保険の被保険者数(正社員等)の合計が、1年で6ヶ月以上、500人を超えることが見込まれる企業に勤めている場合に該当します。これらの要件すべてに当てはまる人は、必ず社会保険に加入することになります。また、現在配偶者の扶養に入っている人も、これらの要件すべてに当てはまった場合は、被扶養者とはならず自身で新たに社会保険に加入することになります。

 

社会保険の加入のメリット

今回の社会保険の適用拡大は、パートやアルバイトなどの短時間労働者も社会保険の加入対象とすることで、より多くの人がより手厚い保障を受けられるようになることを目的としています。それでは、社会保険に加入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか? 具体的には、次のようなメリットが挙げられます。

年金額の充実

社会保険に加入すると、全国民共通の基礎年金に加えて厚生年金が終身でもらえるようになるため、将来もらえる年金額が増加します。例えば、月収88,000円の人が年額96,000円の保険料で20年間社会保険に加入した場合、年額115,800円の年金が終身でもらえるようになります。

障害厚生年金の支給

社会保険加入中に万が一障害がある状態になり、日常生活を送ることが困難になった場合に、「障害厚生年金」が支給され、全国民共通の障害基礎年金より手厚く保障されます。また、万が一亡くなった場合は、遺族に「遺族厚生年金」が支給されます。こちらも、全国民共通の遺族基礎年金より手厚く保障されます。

医療保険(健康保険)の給付の充実

健康保険に加入している場合、病気やけが、出産などにより仕事を休まなければならない場合に、傷病手当金や出産手当金として、賃金の3分の2程度の給付を受け取ることができます。

会社による保険料の負担

社会保険では、保険料を被保険者と会社が半分ずつ負担します。つまり、自身が支払った保険料の倍額が支払われ、それが将来の給付の元になるのです。また、現在自分で国民年金や国民健康保険の保険料を支払っている場合、保険料が安くなることもあります。

 

社会保険の適用拡大にあたって必要な手続き

社会保険の加入手続きは、新たに加入対象となる人の勤務先企業が行います。今回の社会保険の適用拡大で新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者がいる場合は、各企業において、対象者の「被保険者資格取得届」を日本年金機構の事務センターまたは年金事務所へ届け出る必要があります。

なお、新たに社会保険の加入対象となる人が、現在自分で国民健康保険に加入している場合は、国民健康保険の資格喪失の届出を行う必要があります。被保険者本人が市区町村に対して手続きを行う必要がありますので、社内に該当者がいる場合は、自身で手続きをしてもらうようにしてください。

また、新たに社会保険の加入対象となる人が、現在配偶者の社会保険に加入している被扶養者である場合は、配偶者の会社を通じて資格喪失の届出を行う必要があります。その旨を配偶者の会社に申し出ることが必要ですので、こちらも社内に該当者がいたら申し出てもらうようにしましょう。

 

キャリアアップ助成金を活用しましょう

パートやアルバイトなどの短時間労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、厚生労働省では、短時間労働者等のキャリアアップに係る取組を実施した企業に対して、「キャリアアップ助成金」を給付しています。

例えば「処遇改善コース」では、平成28年10月以降、短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険の適用対象とした場合に、労働者1人あたり20万円(大企業は15万円)の助成が行われる予定です。

また、短時間労働者等を正社員として雇用した場合に助成金が支払われる「正社員化コース」など、様々なコースが用意されています。パートやアルバイトなどの短時間労働者の処遇改善やキャリアアップを考えている企業においては、キャリアアップ助成金をぜひ活用してみるとよいでしょう。

 

まとめ

社会保険の適用拡大にあたっては、不備がないようきちんと手続きをすることが重要です。新たに加入対象となる人の要件等をしっかり把握して、しっかりと準備をしましょう。

また、社会保険の適用範囲については、平成29年9月までにさらに検討を進めることとされており、今後中小企業で働く短時間労働者にまで社会保険の適用対象が拡大することも予想されます。総務のみなさんは、社会保険の今後の動向について、ぜひ注視しておくようにしましょう。

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