留職でグローバルリーダーを育成しましょう

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公開日:2018.12.19

留職とは、海外へ社員を派遣し、新興国のNPOや企業と共に現地の課題解決に取り組ませる新たな研修プログラムのことを指します。社員が未知の現場でスキルを活かして課題解決に挑むことで、グローバルに通用するリーダーシップと広い視野を養うことができるため、効果的な能力開発につながります。今回は、留職プログラムの内容と導入メリット、導入の流れについて解説します。

「留職」プログラムとは?

「留職」の語源は「留学」です。企業で働く人材が、現在の職場で身につけたスキルを活かして、数ヶ月から1年程度海外で働くプログラムのことを言います。留職先は主に新興国のNPO団体や企業で、現地の課題解決に貢献することが目的のひとつです。異文化の環境の中で自ら設定した課題に、周囲から刺激を受けながら挑戦し続け、達成の際には自分自身も大きく成長しています。留職は、「リーダーシップの旅」と言えるでしょう。

 

留職先での業務内容

では、派遣元企業における職種と留職先での業務内容にはどのようなものがあるのか、いくつか例を挙げます。

  • 電気メーカーITのエンジニア
    インド社会的企業で3ヶ月、業務効率化ソフトウェアの開発
  • 教育関連企業の企画職
    インドネシアNGOで6ヶ月、教育向け研修の企画と実施
  • 自動車メーカーの生産管理職
    インド社会的企業で2ヶ月、工場内のオペレーション改善

以上のように、派遣元企業での職種で得たスキルを活かせるプログラムになっています。主な派遣国はインドネシアやインド、カンボジアなどの新興国です。派遣期間は、1ヶ月から3ヶ月の企業が多く、参加者の職種は、技術職やITエンジニア、営業職の割合が半数を超えます。

パナソニック株式会社の留職例

留職を導入している主な企業として、パナソニックや日立システムズ、ハウス食品、日産などが挙げられます。ここでは、日本で最初に留職プログラムを実施した企業であるパナソニック株式会社の技術系社員の事例を紹介しましょう。

留職者は、パナソニック株式会社のソーシャルシステムデザインを手がける社員1名で、2012年2月から3月の1ヶ月間、ベトナム中部の都市ダナンに拠点を置く現地NGOで留職を行いました。このNGOは、太陽光を利用した調理器具の製造と販売を10年以上行ってきました。「東南アジアで、環境分野の新しい取り組みを行っている団体に貢献したい」というパナソニックの想いと、「この商品のさらなる改善を模索したい」というNGO団体のニーズをつなぐため、留職が決まりました。そして、1ヶ月の取り組みを通して、低コストで生産可能な製品デザインを設計し、それに基づいた試作品を制作するというミッションを達成しました。

 

留職導入のメリット

留職プログラムには以下のようなメリットがあります。

  • リーダー育成
    新興国という厳しい環境、初めて踏み入れる土地の中で、自分自身の力でプロジェクトを進めることは貴重な体験です。派遣元企業とは全く異なる状況の中には、新たな出会いや刺激があります。現地の人々に価値を届け、現地の人々と同じ方向を向いて働く経験を通して、グローバルな環境で活躍するリーダーシップを身につけられるでしょう。
  • 現地理解
    自ら現場に足を踏み入れることで、留職前の想定とは異なる現地社会のニーズを理解することができます。また、現地団体と中長期間行動を共にすることは、現地のコミュニティとの深いネットワークや信頼関係を築くことができます。こうして得たものは、ニーズに応えた革新的な商品やサービスのアイデアへと繋がります。
  • 社内活性化
    派遣元企業で身につけたスキルやリソースを活用して、留職先の現地の人々に貢献する経験は、自らに「働く意義」を問いかけます。その原体験を通して、企業で働くことへの誇りと情熱が生まれるでしょう。また、留職で得られた経験を社内に戻ってから伝えることで、社員に刺激を与え会社全体の前進に繋がります。

 

留職導入の流れ

日本で初めて留職プログラムを立ち上げたのは、NPO法人クロスフィールズです。クロスフィールズは、企業のニーズと現地団体のニーズをマッチングさせると共に、留職の成果が最大限活かされるようにサポートしています。留職プログラムの先進事例として、アメリカで広がったICV(International Corporate Volunteering:国際企業ボランティア)があります。スターバックスなどの大手企業を中心に導入され、社員を新興国に派遣し、現地で社会貢献活動を行っています。クロスフィールズは、ICVプログラムを運営する先行団体とパートナーシップを結び、国内で留職プログラムを展開しています。クロスフィールズで行う留職プログラム全体の流れは以下の通りです。

  • 実施検討と概要設計
    プログラムの説明と導入に向けた検討、概要設計を行います。企業のニーズに合わせた導入プロセスをサポートし、留職者の募集や選定方法、その他の施策を議論します。
  • 留職者の募集と決定
    候補者を募集・選抜した後、クロスフィールズのスタッフも同席した面談を行い、留職者を最終決定します。
  • 留職先と業務内容の調整(約3ヶ月)
    留職者のスキルやこれまでの経験を聞き取ります。企業のニーズに適合する留職先候補を選定した後、留職先団体と業務内容のマッチングを行います。
  • 事前準備(約2ヶ月)
    留職先団体の事業内容と団体が抱える課題を理解するために、全4回(各回2~3時間程度)の事前研修を国内で行います。現地での大まかなワークプランの策定や、留職者自身の目標も設定します。
    また、オプションでリモートチームの結成も可能です。リモートチームとは、現地で活動する留職者を国内にいる社員がサポートするものです。社員それぞれの専門性を現地に活かし企業がチームとして貢献すると同時に、留職者の現地での体験を国内の社員に伝えることで相互作用が生まれます。
  • 現地業務(1~12ヶ月)
    留職者が現地に行き、業務が始まります。最初の1週間はクロスフィールズのスタッフも同行し、業務内容を最終化します。現地の課題解決を目指して、留職先団体の一員として業務に励みます。
    現地業務の進捗とそこから得た学びは、毎週または隔週のテレビ会議で実施する1on1セッションで、プロジェクトマネージャーと共有します。これにより留職者の成長を促進します。
  • 振り返り(約2ヶ月)
    帰国した留職者に対し、全2~3回(各回2~3時間程度)の事後研修を国内で行います。現地業務を振り返り、現地で吸収したことをいかに本業へ落とし込んでいくかを考えます。これと同時に留職のアセスメントを行い、留職者のリーダーシップの変化度合いを活動前後で可視化します。現地業務開始直後と事後研修終了時に、プロジェクトマネージャーがそれぞれ測定します。

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まとめ

留職プログラムの内容とその導入について紹介しました。グローバル化が進む現代社会において、企業の海外進出は必須の課題となっています。海外に進出するだけでなく、その後も先頭に立ち続ける企業であるためには、リーダーシップの育成が欠かせません。新興国で現地団体と協力しながら社会貢献活動に取り組む体験は、留職者自身にも、企業全体にも刺激や可能性を与えます。留職プログラムは、今後多くの企業に注目されるでしょう。

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