ジョブローテーション制度とは? メリットとデメリットを解説

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公開日:2018.3.21

日本企業に特徴的な人材育成の制度として、ジョブローテーション。定期的に部署を異動させることで従業員に様々な業務を経験させるこの方式は、ジェネラリストの育成に最適なものとして多くの企業に採られてきましたが、近年ではその問題点も指摘されています。今回は、馴染み深いこのジョブローテーション制度のメリットとデメリットについて、改めて考えてみましょう。

ジョブローテーションとは

ジョブローテーションは、従業員の能力開発を目的として、人材育成計画に沿って、定期的に部署の異動や業務内容の変更を行う制度です。社内の異なる部署における様々な業務を経験させることによって、従業員の能力開発や社内ネットワークの強化・構築が目指されます。

業務を通じた教育訓練(OJT)という方法論は高度成長期にアメリカから輸入され、企業内研修として日本では定着しましたが、その後も時代状況に合わせて改良が加えられて、現在日本企業に広く見られるジョブローテーションが形成されました。長期雇用を前提とする日本ならではの人材育成システムだと言えます。

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ジョブローテーションの意義

グローバル競争の熾烈化や国内の少子高齢化を受け、年功序列や終身雇用制など日本型雇用が揺らぎつつあるなか、ジョブローテーションのあり方も問い直され始めています。では、そもそもなぜジョブローテーションが有効な人材育成制度だと考えられているのでしょうか。ジョブローテーションの意義を改めて確認してみましょう。

  • ジェネラリストを育成する
    企業の経営陣には、企業内の多種多様な業務を知悉し、企業活動の全体像を把握していることが要求されます。ジョブローテーションによって様々な部署を経験することで、知識や社内での人脈を得ることが期待されます。将来的な活躍を見越して、従業員に視野の広さと柔軟さを身につけさせるという狙いがあります。
  • 適材適所を発見する
    新卒一括採用を前提とした採用システムでは、志望者の適性を面接時に見抜いて、入社後すぐにその適正に合った部署へ配属するということが不可能です。様々な部署や職種への配置によって従業員の向いている部署が見つかれば、従業員のキャリアのその後のキャリアを方向付けることができます。
  • 人材を確保する
    新卒で入社してくる従業員の立場から見ても、自分がどんな仕事に向いているかが未知数であるため、様々な部署での業務を経験できる企業は魅力的に映ります。また、社内人事に柔軟性を持たせることで、育児などで業務の継続が制限される従業員の補完をすることができます。

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メリットとデメリット

ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーションには、以下のメリットが挙げられます。

  • 従業員の適材適所を発見し、社内人事に活かすことができる
    上記でも述べたように、従業員の適材適所な配置を図ることができます。最終的には専門性を磨いていくという場合でも、様々な業務を経験して視野を広げておくことは重要です。
  • 社内の風通しを良くする
    従業員をそれまで交流のなかった部署や職場へ異動させることで、社内でのネットワークが広がります。社内に多様性が生まれて組織が活性化し、新しい発想の誕生にもつながります。
  • モチベーションが向上する
    職場の異動によって従業員の心境をリフレッシュさせ、長期間同じ業務に就くことで生じるマンネリを解消することができます。従業員のモチベーションアップにつながり、離職を防げます。

ジョブローテーションのデメリット

その一方で、ジョブローテーションには以下のようなデメリットも存在します。

  • スペシャストの育成には向いていない
    他の部署への配置を繰り返していると、スペシャリストの育成には回り道になります。すでに高い専門性を備えた従業員の場合は特に、自分の能力を活かせないことからモチベーションの低下にもつながる可能性があります。
  • 職場ごとに給与体系が異なる場合の導入が難しい
    職場ごとに給与体系が異なる場合、従業員にとって異動は自分の収入に直結する問題となります。異動の結果として給料が減れば、従業員のモチベーションが低下するのは当然です。
  • 指導に時間と労力が必要になる
    業務内容の異なる職場への異動の直後は、新しい業務に慣れるまでの時間がかかり、周囲も指導に時間が取られます。引き継ぎの進捗次第では、業務が停滞してしまうことも考えられます。
  • 業務が中途半端になる可能性がある
    長期的なプロジェクトとなると、苦労して取り組んだにもかかわらず、結果が出る頃には担当者が変わってしまっているということが考えられます。そのような場合、自分の努力が報われないと感じる従業員のモチベーションが低下してしまう恐れがあります。

 

ジョブローテーションが効果的な企業

それでは最後に、ジョブローテーションがうまく機能している事例を見てみましょう。

ヤクルトは、ジェネラリストの育成とスペシャリストのキャリアアップを目的として、総合職事務系・海外系の従業員を対象にジョブローテーションを採用しています。従業員は入社後10年内に3つ以上の部署で業務を行い、自らの適性を発見していきます。営業部門と海外部門のどちらでも経験を積むのが原則となっています。

ジョブローテーションはやはり、ヤクルトのように社員数が多く部署や職種が多岐に渡る大企業の場合に効果的なようです。特に海外展開を行なっている企業の場合、国内と海外の両方で業務経験をさせることで視野の広い従業員の育成を行うことができます。

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まとめ

ジョブローテーションによる定期的な異動は、社内の活性化など多くのメリットがある一方で、当然デメリットも存在します。国内外に展開する大企業であれば、現在はまだジョブローテーションの採用はメリットの方が勝つものと思われますが、今後雇用の流動化が一層進むなかで、どのような人材育成の方法が望ましいのかを再検討していく必要があるかもしれません。

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