人事異動でトラブルを避けるための注意点とは

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公開日:2019.6.12

人材を能力や適正に合わせて配置することは、会社と社員の双方に利益をもたらします。その過程には人事異動を伴うことがありますが、配偶者や子供がいる社員の転勤には、トラブルが生じることがないよう特に注意を払う必要があります。今回は、人事異動の目的やトラブルを防ぐための注意点、転勤に関する制度について解説していきます。

人事異動の目的

社員の人材育成

まず挙げられるのが、社員の人材育成という目的です。人事異動によって新しい部署に配属された社員は、それまでとは異なる環境で新しい業務を行うことになります。このような経験をさせることで、新たなスキルの習得や、様々な視点から物事を考えられるようになることなど、社員の成長につなげることを目的としています。また、優秀な社員を異動させれば、異動先の部署の業績向上につながるなどの効果も期待できます。

適材適所の人材配置

2点目として、適材適所の人材配置という目的が挙げられます。当然のことですが、職場の環境や業務内容には個々人によって合う・合わないが存在します。異動前の部署ではあまり活躍できていなかった社員が、異動先の部署では大活躍している、というケースもあるように、環境や業務内容を変えることで各社員が本来持っている能力を十分に発揮できるようにすることは、人事異動の大きな目的のひとつです。

マンネリ化の防止と組織の活性化

3点目は、組織のマンネリ化の防止と活性化を促すための人事異動です。長期間同じ環境で同じ業務を続けていると、マンネリ化が生じて仕事への意欲が低下したり、生産性が低下したりしてしまう恐れがあります。そのため、そうしたマンネリ化を防止し、部署異動による新たな仕事への挑戦の意欲や期待感によって社員のモチベーションを高めて組織を活性化させることを目的に人事異動を行う場合があります。

企業戦略に基づく人材配置

最後に挙げられるのが、企業戦略に基づく人材配置のための人事異動です。新規事業の開発や事業の多角化、技術革新など、企業戦略とそれに基づく事業計画の遂行にあたって、そのために必要な人事異動を行う場合があります。どの時期にどのような人材がどのくらい必要かを見極めて人事異動を行うことは、会社の成長のために必要不可欠です。

 

トラブルを防ぐための注意点

人事異動命令の流れを把握する

まずは不要なトラブルを避けるために、転勤命令や人事異動命令の正しい流れを理解しておく必要があります。主な流れは以下の通りです。

  • 雇用契約書・就業規則の確認
    雇用契約書や就業規則に、会社の転勤命令権があるかどうかを確認します。なお、仮に転勤命令権が記載されていたとしても、社員に周知されていない就業規則は裁判等で無効になる可能性もあるため注意が必要です。
  • 人事異動の内示
    社員と面談し、会社側が人事異動命令や転勤命令を予定していることを伝えます。
  • 社員に対する説明
    社員が正当な理由なしに人事異動や転勤を拒否する場合には、転勤の必要性などを十分に説明し、社員の理解を得られるようにします。
  • 辞令交付
    社員に対する説明を行った上で、最終的に辞令を交付します。

社員に十分な説明を行う

社員が人事異動に対して難色を示した場合は特に、当該社員に対して人事異動の必要性や勤務条件などの説明を懇切丁寧に行う必要があります。説明するべき項目としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 人事異動が必要な理由
  • 対象者を選んだ基準
  • 異動後の勤務場所
  • 異動後の業務内容
  • 異動後の勤務条件
  • 異動後の通勤所要時間や通勤経路

上記のような項目に関して、社員と個別に面談を行って説明するとともに、書面でも交付した内容を明確にしておくとよいでしょう。

社員の個人的な事情を把握する

社員の個人的な事情を把握しておくことも重要なポイントのひとつです。原則として人事異動の命令を社員が個人的な理由で拒否することはできませんが、異動の決定に際して社員それぞれの事情は考慮する必要があります。というのも、過去の裁判の判例には、社員の個人的な事情を踏まえて、転勤命令を違法とした例外的なケースもあるためです。障害がある家族の介護をしている場合など、転勤に困難な事情がある場合には、そのような事情も踏まえた上で人事異動命令を考えるべきでしょう。
また、詳しくは次項で述べますが、社員が抱えている事情によっては会社側が行うべき配慮なども考える必要があるため、事前にそのような事情は把握しておかなければなりません。

各種手当や配慮が可能か検討する

4点目は、社員の個人的事情に応じて各種手当や会社側の配慮が可能かを検討するという点です。会社側としても社員の生活の変化などに応じて、可能な範囲で各種手当や配慮を行う必要があります。
具体例として、社員が家族とともに転居を伴う異動を行う場合は、転居先として社宅を提供することや、特に地方から都会への転勤では生活費の増加を考えて給与を増額する、といったことが考えられます。また、社員が異動に伴い単身赴任を行う場合にも、社宅の提供や単身赴任手当の支給、定期的な帰宅の際の交通費の負担などが考えられます。

 

転勤に関する制度

転勤プレミアム

転勤プレミアムとは、転勤の可能性がある正社員に対し、転勤のリスクを考慮して通常の賃金に上乗せされる賃金のことを指します。転勤に際しては、住居の問題や家族のことなど様々な面で社員の生活に影響が生じることが予想されます。また、実際には転勤がないとしても、転勤の可能性があるというだけで人生設計を難しくしてしまう面もありますので、転勤の可能性がある社員はそうでない社員よりも賃金を高く設定しているというケースが多くあります。

配偶者同行制度

配偶者同行制度とは、配偶者が転勤になった場合に、同一地域への随伴のための転勤を認めるという制度です。この配偶者同行制度は、夫の転勤による妻の退職を防ぐために考えられたものです。例えば、別の会社に勤める夫が東京から名古屋に転勤になった場合に、妻にも自社の名古屋支社への転勤を認めることで、夫に同行し、かつ引き続き自社で働いてもらえるようにする、というものです。この制度は、優秀な人材の流出を防ぎたい会社と、配偶者が転勤してもキャリアを継続させたい社員の双方にとってメリットのあるものとなっています。

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まとめ

今回は、人事異動の目的やトラブルを防ぐための注意点、転勤に関する制度について解説してきました。この機会に、自社の人事制度などを改めて見直してみてはいかがでしょうか。

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