企業のリスク管理を左右する、内部統制システムとは

カテゴリ:コラム 投稿日: 2019.8.30 tag: ,

会社法では、資本金が5億円以上の大会社に内部統制システムの整備を義務付けています。また、大会社以外の企業にとっても、リスク管理や法令遵守、適切な財務報告の観点から内部統制システムの構築は非常に重要であると言えます。今回は、内部統制システムの意味と必要性、会社法にて求められている項目について解説していきます。

内部統制システムとは

「内部統制システム」という名前から、どのようなものを想像されるでしょうか。その語感から「社内を監視する」というようなニュアンスで理解される方も多いかもしれませんが、実はそれでは不十分です。
内部統制システムは、日本では会社法および金融商取引法に規定されています。資本金5億円以上、または負債の合計が200億円以上の大会社に、以下のような4つの機能を持つシステムを設置することを義務付けています。

  • 財務報告の信頼性の担保
  • 事業活動に関わる法令等の遵守
  • 業務の有効性および効率性の担保
  • 資産保全

上記4つのうち、「財務報告の信頼性の担保」や「事業活動に関わる法令等の遵守」は、まさに「監視」のニュアンスと近いものです。しかし「業務の有効性および効率性の担保」や「資産保全」のように、会社の業績や企業価値の向上に資する目的・機能もまた、内部統制システムが持ち合わせる要素なのです。

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内部統制システムのメリット

内部統制システムは、整備が義務付けられている会社法上の「大会社」に該当しない中小企業などでも導入する場合があります。その理由は、中小企業、特に業績拡大を目指すベンチャー企業などにとって、内部統制システムには以下のようなメリットがあるからです。

業務効率UP

先述の通り、内部統制システムの機能の一部に「業務の有効性および効率性の担保」や「資産保全」といったものがあります。経営陣・現場と違った視点を持つ第三者がこうした面で企業を観察し提言を行うことは、時に重大な気づきをもたらします。昨今、経営コンサルタントと契約する企業は数多いですが、同様の目的は内部統制システムによって担保できる部分もあるのです。また、第三者の監視の目は、特に経営者や経営陣がカバーしきれない現場における生産性の向上に寄与します。

企業イメージUP

上場企業はもちろんのこと、非上場であっても、企業の財務等の情報や監視機関の存在は、株主、求職者、取引先企業などにとって重要なものとなります。財務諸表等の公開が義務付けられていないため、非上場・小規模の企業は財務等に関わる情報を公開しない傾向がありますが、こうした企業について知りたい第三者にとっては、対象が小規模企業であるほど財務情報等に関心が向きます。なぜなら、上場企業に比べて口コミ等の情報が少なく、信用性も低くなってしまうからです。こうした企業が仮に内部統制システムを導入していれば、第三者からの信用は得やすいと言えるでしょう。株主や支援者、取引先を開拓したいベンチャー企業等で内部統制システムが重要視されるのは、こうした理由からです。

 

内部統制システムの整備における注意点

内部統制システムの体制は、会社法施行規則第100条第1項により、以下の5つの要件を満たすことが求められています。こちらを踏まえ、注意点を見ていきましょう。

  • 取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

内部規定等の策定

1つ目は、情報管理や危機管理に関して内部規定等の策定が暗示的・明示的に求められているということです。もちろん、プライバシーポリシーといった形でこうした規定をすでに設けている企業も多いことでしょう。しかし、そうした規定を持たない企業が内部統制システムを導入するのであれば、その行動指針や判断基準ともなる規定を新たに策定しなければならないことは言うまでもありません。

グループ全体の統制

2つ目は、当該企業だけでなく、親会社や子会社等の「企業集団」として「業務の適正」が担保されなければならないということです。つまり、子会社がこうした仕組みを勝手に導入することができないのはもちろんのことですが、親会社側も自社だけでなく子会社等グループ企業にまで効力を持つ内部統制システムを作らなければならないことに注意が必要です。

システム不全の可能性

3つ目は、内部統制システムが常に機能するわけではないということです。これは会社法に直接関わる部分ではありませんが、組織や社外取締役として他企業のコーポレート・ガバナンスに関わる方に特に注意が必要な点です。
実際の事例として、ここでは2011年のオリンパス事件をご紹介します。オリンパスには、歴代社長に引き継がれた粉飾決算による多額の損失隠しが存在しました。2011年にオリンパス社長に就任したウッドウォード氏はそれを知り、当時の会長と副社長の辞任を求めました。しかし、取締役会において逆にウッドウォード氏が解任されてしまい、その後のウッドウォード氏の告発から事件が明るみに出ました。当時、オリンパスの取締役会は15名のメンバーで構成されており、そのうち3人は社外取締役でした。しかし、その3人全員がウッドウォード氏解任に賛同したことから、コーポレート・ガバナンスや内部統制システムが機能しなかった例として、今なお知られています。
社外のメンバーが内部統制システムに参加していたとしても、それが経営陣側に忖度しやすい人物であったり、その企業のことをあまり良く知らない人物であったりすれば、監視の意味をなしません。内部統制システムは仕組みとして有効なものでありつつも、適切な整備と運用がなければ、必ずしも機能するわけではないことを常に理解しておく必要があるでしょう。

 

まとめ

会社法等で規定されている内部統制システムは、企業の業務効率改善やイメージ向上に役立つものです。導入の際は、その有効性を担保できる形で整備を行うことが重要となります。

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