休職制度を導入するには、どうすればいい?

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公開日:2018.4.9

病気や怪我の療養、あるいは刑事事件に巻き込まれた際など、従業員が生活上の止むに止まれぬ事情で長期間仕事を休まなければいけない時のために、休職制度というものが存在します。利用することになる可能性が誰にでもあるこの制度について、今回の記事では、企業が導入にあたって押さえておくべきポイントを解説します。

休職制度について

そもそも休職制度とは?

休職制度とは、従業員を職務に服させることに不適当な理由が発生した場合に関して、従業員の地位を維持したまま一定の期間、労働を停止する制度です。労働はしていませんが企業との労働関係を解消していないという点において、退職や解雇とは異なります。休職制度は法令により制度化が義務付けられているものではないため、企業にとって制度化は任意となっております。そのため、導入している企業によって制度の細則は異なります。

休職の種類

休職には、労働組合に専念する場合の「専従休職」、他の企業に出向する場合の「出向休職」、病や怪我を負った場合の「傷病休職」等があります。どのような区分を設けるかは企業ごとに異なりますが、一般的な分類として次のものが挙げられます。

  • 病気休職(業務外の疾病のため長期の欠勤を認めるもの)
  • 事故休職(疾病以外の私的な障害事由による欠勤を認めるもの)
  • 起訴休職(刑事事件で起訴されたことを事由に就労を禁止するもの)
  • 調整休職(他の制度との調整をはかるためのもので、出向休職、専従休職など)
  • 依願休職(家事都合、自己啓発・留学・研修など)

このように、休職扱いとなるには様々な理由が考えられますが、今回の記事ではうつ病などメンタルヘルスの不調による傷病休職を念頭に置いて以下の説明を行います。

休職中の賃金

休職中従業員は労働を提供しておらず、また休職の理由も個人的な事情によるものであるため、休職中の従業員に対して賃金は支給されません。しかし先述のように、労働関係の解消がなされたわけではないことから、職場における従業員の地位は原則変動しません。

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企業の休職制度導入

企業が留意するべきこと

上記の通り、休職制度は法律で義務付けられているわけではありません。そのため休職制度の導入に当たって、企業は休職できる事由、休職期間、休職する際に従業員が行う手続きを規定する必要があります。これらの規定を盛り込んだ就業規則を作成・改定した場合には、管轄する労働基準監督署に届出を提出する必要があります。

就業規則について

休職に関して、就業規則で規定しておくべき事項として以下のものがあります。

  • 休職事由
    どのような理由であれば従業員の休職申請を認めるかを規定します。一般的な休職事由については、上記「休職の種類」の項目を再度ご覧ください。
  • 休職期間
    休職期間の設定も企業の任意となっているため、休職可能な期間を勤続年数によって変える企業もあれば、勤続年数によらず一定の企業もあります。また、入社1年以内は適用除外とする企業もあります。
  • 休職開始手続き
    どのような場合に企業が対象の従業員の休職に係る意思決定を行うかを規定します。例えば、病気による欠勤の継続日数が何日以上となったら休職扱いとするかなどです。
  • 休職期間中の責務
    休職期間中であっても従業員との労働契約は継続しているため、休職期間中の従業員の責務を定める必要があります。例えば傷病休職であれば、会社の指定する医師の診察を義務付け、復職に当たってはその医師の許可を得ることなどが考えられます。
  • 休職期間満了時の取り扱い
    休職した従業員が復帰できないときの対応や復帰できるときの手続きを規定します。精神疾患などで復帰の是非の判断が難しいときは、主治医の意見聴取などの手続きも規定しておくといいと言われます。

企業の休職者に対する義務

休職制度の導入は任意ですが、従業員の休職中は労働関係を結んでいるため、企業は健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料などの社会保険料を納付する必要があります。従業員が休職中に賃金を支払われない場合は、社会保険料の本人負担分を企業が一時建て替えるなど、事前に決めておく必要があります。

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企業の導入するメリット

企業の休職制度の導入によるメリットとして、以下が挙げられます。

  • 福利厚生の充実により企業の世間的イメージが向上し、人材が安定期に確保でき、離職率が低下する
  • 従業員の健康保持増進を行うことにより、企業の活力が向上する
  • 従業員が休職による社会参加の機会等に触れることで自己実現をし、復職後の仕事の質や効率が向上する
  • 企業の社会的責任を果たすことにつながる

 

休職中のトラブルを防ぐために

企業と私傷病等で休職中の従業員のトラブルを防ぐための施策を3つ紹介します。

  • 企業との連絡手段を確保する
    休職期間の最終期限間際に焦って復職を希望する従業員の適性度を見極めるのは難しいため、休職中の従業員の状態を定期的に確認するフローを設けるのが重要です。
  • 休職時の制限事項と禁止事項を設ける
    例えば休職中の従業員が旅行などに行き、その様子をSNSにアップして職場の同僚がそれを見れば、職場の雰囲気が悪くなる可能性があります。そのため、休職中に避けてほしい事項を設けるのが重要です。
  • 復職の条件と復職までのフローを提示する
    傷病休職を取得していた従業員が、職場に戻ってから再度病状が悪化し、また休職するということも充分に考えられます。そこで、「復職までのフローと復職時のサポート体制」や「誰が何を判断基準として復職の意思決定を行う」などを本人に対して明確しておく必要があります。

 

まとめ

少子高齢化の進行に伴って日本の労働人口も減少していく困難な時代です。休職制度の導入と整備は、従業員の離職率を下げて仕事の質や効率を上げるためにも、企業にとって望ましいものでしょう。法令上では任意となっておりますが、休職制度の導入は従業員と企業双方向にメリットがあると言えます。

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