はじめよう、健康経営―企業の活力は、従業員の健康から―

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公開日:2016.10.2

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経済産業省は、保険者と連携して優良な健康経営を実践している法人を「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定する制度を開始することを発表しました。今年度から認定が始まり、2020年までに500社を認定するということです。近年にわかに注目を集めている「健康経営」とは、一体どういうものなのでしょうか。今回は、これからの企業経営に欠かせない視点である「健康経営」について御説明します。

健康経営とは

健康経営とは、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」という基盤に立って、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することをいいます。

健康経営の概念は、2013年6月に政府が閣議決定した「日本再興戦略」で示されています。ここでは、<国民の「健康寿命」の延伸>が掲げられ、「効果的な予防サービスや健康管理の充実により、健やかに生活し、老いることができる社会」を目指すとされました。

これを受けて設置された「次世代ヘルスケア産業協議会」では、「アクションプラン2015」がとりまとめられました。そこでは、いわゆる生産年齢の段階から職員に健康管理を促す仕組みを企業活動や経済活動に組み込んでいくことが重要という考え方の下、国は、企業による「健康経営」の促進を図るとの方針が示されました。

高齢化率の上昇等による国民医療費・介護費等の社会保障費の増加や、生産年齢人口の減少による経済活動の縮小等、現在の日本は厳しい局面にあります。健康経営により従業員の健康増進を図ることで、医療費負担の減少や企業の生産性向上につなげることが求められているのです。

健康経営の効果

健康経営には様々な効果があります。短期的な効果としては、疾病による従業員の長期休業の予防や企業の医療費負担の軽減、従業員の生産性や創造性の向上、企業のイメージアップ等が挙げられます。長期的な効果としては、企業の退職者に対する高齢者医療費負担の軽減や従業員の健康寿命の長期化をはじめ、将来的には企業の業績向上や株価向上等も期待されています。アメリカの研究では、従業員の健康への投資に対して、300%以上の投資リターンがあったという研究結果も存在します。

また、健康経営に取り組む企業を社会的に評価する動きも活発になってきています。経済産業省は、従業員への健康保持・増進活動を推進する上場企業を「健康経営銘柄」として選定しており、「健康経営銘柄2016」には25業種から25社が選定されています。そして、今年度からは上場企業に限らず、大規模法人のうち保険者と連携して優良な健康経営を実践している法人について「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定する制度も始まります。

先述の「アクションプラン2015」では、健康経営優良法人の認定を受けた中小企業について、人材の獲得・確保や政策金融上の優遇措置等のインセンティブの付与施策を検討するとされています。また、日本政策投資銀行は、健康経営の概念を普及・促進させるため、「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」融資というものを導入しています。これは、従業員の健康への配慮が優れている企業を評価し、その評価に応じて融資条件を設定するという世界で初めての融資メニューです。

健康経営の重要性を鑑みると、健康経営を実践する企業に対するインセンティブは、今後ますます増えていくことが予想されます。

健康経営の進め方

健康経営は、大企業だけが取り組むべきものではなく、少ない人員で成果を出す必要のある中小企業こそ取り入れる意義があるものです。健康経営を取り入れる際には、以下の方法で進めていくとよいでしょう。

(1)健康宣言

まず、社内外に健康経営を行うことを宣言します。加入している健康保険組合・全国健康保険協会等が健康宣言事業を実施しているかを確認しましょう。加入している健康保険組合等が企業の健康経営を支援している場合は、制度を活用してみるとよいでしょう。

(2)組織体制

健康経営に取り組むための組織体制を構築します。社内で健康づくりの担当部署や担当者を決めましょう。また、産業医や保健師等、健康づくりに関する外部人材の活用も検討しましょう。

(3)健康課題の把握

自社の健康課題を把握するため、定期健康診断の受診率を確認します。可能であれば、健診結果などから自社の「健康度の見える化」を図りましょう。また、ストレスチェックなどを通して従業員の心の健康状態を把握するとともに、残業時間や有給休暇の取得状況、食事の時間帯など、職場環境を確認します。

(4)計画策定・健康づくりの推進

把握した自社の健康課題の中から、社内で優先的に取り組む課題を決めましょう。その優先順位に従って課題解決の方法を検討し、計画を立案します。健康診断の受診率や喫煙率、有給休暇取得率、朝食摂取率などの数値目標も検討してみましょう。

(5)取り組みの評価・見直し

従業員の健康づくりの参加・実施状況を把握しましょう。生活習慣や健康状況の改善、参加者の満足度、仕事のモチベーションアップなど、健康づくりへの従業員の反応や得られた効果を確認し、改善策を検討しましょう。

健康経営の取組事例

健康経営を実践している企業は、具体的にどのような取組を行っているのでしょうか。経済産業省と東京商工会議所が策定・公表した「健康経営ハンドブック」では、中小企業による優良な取組を収集しているので、ぜひ参考にしてみるとよいでしょう。

ハンドブックに掲載されている企業では、従業員に毎月野菜を現物支給する、社内で一ヶ月の歩行距離を競い合って上位の人に賞品を出す、健康全般に関する社内新聞を毎月発行する、などユニークな取組を実践しています。総務部が中心となってアイディアを出し合い、できることから取り組んでみるのもよいでしょう。

まとめ

健康経営では、健康管理への取組はコストではなく投資と考えられています。そして、投資に対するリターンはとても大きいものなのです。これからの企業経営は、労働安全衛生法に基づく「守り」の取組に加えて、健康経営の視点に立って積極的な健康投資を行うという「攻め」の姿勢が求められています。従業員の健康を守り、企業の生産性を高めるためにも、ぜひ健康経営の導入を検討してみてください。

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