「取締役会」の知識・運営方法、徹底解説!

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公開日:2017.12.26

取締役会は、企業の戦略を示す上で大きな役割を果たします。ですがその運営方法については、基本的に外部に開かれずに行われ、また会社法における具体的な規定がないことから、なかなか情報を得るのが難しいというのが現状です。本記事では、そもそも取締役会を開催する意義について、またその運営方法について、詳しく解説します。

取締役会の役割

取締役会は会社の意思決定機関として重要な組織です。その役割が具体的にどのようなものなのか、ここでは会社法とコーポレートガバナンス・コードをもとに解説します。

「会社法」から学ぶ取締役会の役割

現在の会社法では、取締役は必要であっても取締役会は必ずしも義務付けられているわけではありません。しかし株式を上場する公開会社や、監査役会を置く監査役会設置会社などは、3人以上からなる取締役会を設置しなくてはいけません。

取締役会の役割は、会社法において

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定
  • 取締役の職務執行の監督
  • 代表取締役の選定及び解職

の3点が定められています(会社法第362条第2項)。つまり、会社をどのように運営するかの意思決定を行い、その決定事項を遵守する形で会社が運営されているかどうかをチェックするのが、取締役会の責務です。

「コーポレートガバナンス・コード」から学ぶ取締役会の役割

コーポレートガバナンスとは、会社が公正かつ迅速な意思決定を行うための会社の仕組みを意味します。平成27年に金融庁と東京証券取引所が、コーポレートガバナンスの実現に必要な原則を「コーポレートガバナンス・コード」として取りまとめました。

さて、このコーポレートガバナンス・コードによると取締役会の企業で果たすべき役割は、

  • 企業戦略等の大きな方向性を示すこと
  • 実際に経営を実行していく経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境を整備すること
  • 独立した客観的立場から経営陣・取締役員に対する実効性の高い監督を行うこと

とされています。以下ではこの3つの役割の内容について詳しく見ていきましょう。

企業戦略等の大きな方向性を示す

取締役会は、経営理念などの会社の運営方針を決定することを主要な役割の1つとし、具体的な事業計画や経営戦略を立てるための建設的な議論がなされることが求められます。そうして決められた計画目標に仮に到達できなかった場合には、原因を突き止め改善をしていかなくてはなりません。そのためにも、取締役会が何を決定し、実際の経営業務を担う経営陣に何を任せるのかを明確にしておく必要があります。さらに、最高経営責任者等の重要ポストの後継者の計画についても、取締役会が会社の方針に沿う形で行われているかどうかを監督します。

経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境を整備する

経営陣が新しい提案をできるような環境を作りながら、その提案を客観的な立場から多角的に吟味することも取締役会の主要な役割です。こうして吟味されたのちに承認された案については、経営陣が迅速に対応できるように支援していく必要があります。また、これらを達成するための環境づくりの一環として、経営陣の報酬の割合や方法を設定し、健全な経営へのインセンティブを与えます。

独立した客観的立場から経営陣・取締役員に対する実効性の高い監督を行う

会社の業績を適切に評価し、経営陣・取締役員を有効的に監督していくことも取締役会の主要な役割の1つです。こうした評価をもとに、経営陣幹部の人事を、公正かつ透明性の高い方法で決定していくことが求められます。また、取締役会は会社が一体となるように、会社の内部に発生してしまう利益相反を管理し、内部統制やリスク管理の体制を整える必要があります。

 

取締役会の運営方法

取締役会を実際に行うにあたって必要なステップは、①取締役会の招集、②取締役会での決議、③議事録の作成の3つです。

取締役会の招集

まずは取締役会がいつ、どこで、何を決議するために開催されるかを取締役に通知します。取締役会の招集は少なくとも年に4回はされなくてはなりません(会社法第363条第2項)。

原則として取締役であれば誰でも招集を行うことができますが、定款または取締役会で招集する取締役が決まっている場合はその取締役が招集することになります(会社法第366条)。

また、招集は取締役会を開く日から1週間以上前に行うのが原則ですが、これも定款や取締役会で決定したのであればそのルールに従うことになります。さらに、取締役の全員の同意があれば、招集の手続きを踏まなくても取締役会は開催できます(会社法第368条)。

なお開催場所についての規定は特にありませんが、会社の機密情報を扱う以上、外部に情報が漏洩する恐れのある場所は避ける必要があります。

取締役会での決議

取締役会で決議しなくてはならない内容として、会社法第362条第4項は以下の事柄を定めています。

  1. 重要な財産の処分及び譲受け
  2. 多額の借財
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  5. 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
  6. 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
  7. 定款の定めに基づく役員の会社に対する責任の免除

その他にも、

  1. 譲渡制限株式の譲渡に関する議決(第139条第1項)
  2. 株式分割に関する議決(第183条第2項)
  3. 株主総会招集に関する議決(第298条第4項)
  4. 代表取締役の選定及び解職(第349条第3項及び第362条第2項第3号)

などがあります。議決は原則として役員の過半数が出席し、その過半数の承認によって成立します(定款によって出席に必要な人数と承認に必要な人数を増やすことができます)。ただし決議に関して特別の利害関係を持つ人物がいる場合、その人は人数に含めません(第369条第1項及び第2項)。

取締役会の報酬等の決定方針

改正会社法が成立したことで、取締役の報酬決定過程について株主に向けた透明性を高める方針へと変更されました。具体的には、定款や株主総会決議にて取締役の報酬が明確に定められていない場合、以下の条件を満たす株式会社は取締役会で報酬等の決定方針を定めることが義務付けられるようになりました。

  1. 監査役会であって、有価証券報告書の提出義務がある株式会社
  2. 監査等委員会設置会社

議事録の作成

取締役会での決議には議事録の作成が義務付けられています(第369条第3項)。議事録には取締役会の開催日時及び開催場所、全取締役の人数と実際に出席した取締役及び監査役の氏名を記さなくてはなりません。取締役会での議論がどのように展開したのかを記録し、最終的に誰が議決に賛成で、誰が反対であったのかを記録します。こうした記録は、賠償責任の免除などにも関わる重要なものとなります。

また作成された議事録には、取締役と監査役の全員から印鑑を押してもらう必要があります。こうして議事録が完成することで取締役会は終わります。

 

まとめ

取締役会では、会社の命運を左右するような重要な決議が行われます。正しく取締役会を運営することで、会社を適切な方向に導くことが期待されます。法律によって規定される事項を守りながら、会社の大きな飛躍を促すような建設的な議論の場にしていくことが望ましいでしょう。

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