税抜経理方式と税込経理方式、どちらを採用するべき?

カテゴリ:コラム 投稿日: 2018.5.21 tag: , ,

消費税を納付する事業者は、法人税等の計算を表示する方法として「税抜経理方式」と「税込経理方式」のいずれかを選ぶことが可能です。消費税の額を本体価格と区別するかどうかという点で異なり、どちらの方式にもいくつかのメリットとデメリットがあります。今回は税抜経理方式と税込経理方式について、具体的な処理方法とメリット・デメリットを解説します。

2つの処理方法

小売業などの、消費税を納税する義務を負う事業者は、所得税または法人税の所得計算の際に2通りの処理方法のどちらを採用してもいいことになっています。それが「税抜経理方式」と「税込経理方式」です。

税抜経理方式

仕入れ時に業者に支払った代金、あるいは商品を売った時に消費者から得た代金を、消費税分とそうでない分に分けて処理する方法です。仕入れの支払い額に含まれる消費税は「仮払消費税」、販売額に含まれる消費税は「仮受消費税」として区分されます。

例えば、あるスーパーマーケットが5,400円で肉業者から牛肉を仕入れ、10,800円で店頭で販売したとしましょう。この時、税抜経理方式では以下のように処理されます。仕入れ時の借方はスーパーマーケットで、貸方が食肉卸業者です。販売時は借方が消費者で、貸方がスーパーマーケットになります。

仕入れ時:(借方)仕入 5,000円 仮払消費税等 400円 (貸方)買掛金 5,400円

販売時:(借方)現金 10,800円 (貸方)売上 10,000円 仮受消費税等 800円

税込経理方式

対するこちらの方式では、仕入れ時に業者に支払った代金、あるいは商品を売った時に消費者から得た代金を、消費税分を組み入れた形でまとめて処理しておき、決算の段階で消費税を「租税公課」と「未払消費税」として清算します。上と同じ例で記載方法を確認しましょう。

仕入れ時:(借方)仕入 5,400円 (貸方)買掛金 5,400円

販売時:(借方)現金 10,800円 (貸方)売上 10,800円

租税公課:400円 未払消費税:400円

ここでの租税公課は、仕入れ時にスーパーマーケットが肉業者に支払った8%ぶんの消費税を指しています。そして、未払消費税は、売上の際に消費者から消費税分として受け取った800円が、租税公課の400円よりも400円多く、スーパーマーケットはこの額を消費税として納付する義務があるのでこのように表記されます。この未払消費税は、税抜経理方式において「仮受消費税等-仮払消費税等」の式で導き出すこともできます。

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処理方法による有利・不利

こうして2つの方法を並べてみると、結局記載している内容に大差はなく、消費税の計算を途中で計算するか最後にまとめるかの違いだけだとわかります。ですが、どのような点を優先するかによって、2つの間に有利・不利の大きな違いが生まれることになります。

処理の煩雑さ

2つの方法を比べると、当然ながら税込経理方式の方が計算・記載が煩雑にならずに済みます。税抜経理方式を採用する場合、処理を全て手作業で行うとすれば非常に大きな労力を注ぐことになります。そのため、税抜経理方式を採用するには会計ソフトなどの便利なツールを導入することが望ましいですが、こうした準備をするための資金的・時間的余裕のない中小企業には税込経理方式を採用する企業が多いです。処理を楽に行いたいのであれば、税込経理方式が圧倒的に有利です。

記載のわかりやすさ

先に処理の方法について述べた際、税込経理方式では最後に租税公課と未払消費税をまとめて表示すると説明しました。もちろんこれで記載の総量は減りますのでコンパクトにまとめることができますが、逆に考えると、決算まで全ての取引を消費税込みで記載し続ける以上、最後になるまでいくら納税しなければならないかがわからないというデメリットが生じます。税抜経理方式では毎度細かく消費税分を別に記載するので、手間はかかりますが、納税予定額の推移がわかりやすいという利点があります。

税率変動への対応

現在の消費税率は8%ですが、平成31年10月に10%への引き上げが予定されています。そもそも8%に上がったのも平成26年とごく最近のことであり、それまでは5%が維持されてきました。また、海外との売買が存在した場合、税率の割合が変わることもあります。こうした税率変動への対応が、税込経理方式では不利になります。なぜなら消費税分を含めて記載してしまうため、ちゃんと異なる税率が適用されていたとしても、記録上それが目で見てわからないからです。税抜経理方式であれば、消費税分を別にして計算していますから、異なる税率が混同されるリスクがありません。

交際費への課税

資本金1億円以下の中小企業に対しては、800万円以下の交際費を経費とすることが法律によって認められます。経費とは、課税対象にならないお金のことです。つまり交際費を抑え、800万円のラインを超える金額を少なくすることができればできるほど課税額が少なくなり、企業にとっては得になります。

そして、交際費の計算が有利になるのは税抜経理方式です。なぜなら、税抜経理方式ならば交際費の表示は消費税と別にされるため、消費税分だけ交際費の額を低くすることができるからです。具体的に考えてみましょう。

ある企業は、交際費として税込で1,080万円を使っていました。この時、税込経理方式では交際費の記載はそのまま1,080万円となり、800万円を引いた280万円が課税対象となります。しかし税抜経理方式ならば、交際費は消費税分を抜いた1,000万円となり、そうすると課税されるのは、800万円を引いた200万円です。課税対象となる金額は80万円も減り、企業としてはその分だけ得をしたことになります。

資産購入関連

ある資産を、一定の金額を支払って手に入れた時、その金額が10万円以下のものであれば経費になります。この場合の計算でも、税抜経理方式の方が有利となります。税込経理方式で税抜95,000円の商品を資産として購入してしまうと、記載は102,600円となってしまい、10万円を超えるので経費とすることができません。他方、税抜経理方式であれば、95,000円と記載できるため経費とすることが可能で、全額が非課税となります。

30万円以下の少額減価償却資産の購入にも、一定の条件を満たせば同様の優遇措置が取られることになっています。この優遇措置の適用を受ける際も、同じ理由で税抜経理方式の方が有利となり得ます。

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どちらが有利なのか

以上のような比較をしてみると、確かに税抜経理方式は記載や計算が煩雑ではありますが、特定の分野においては明らかに税込経理方式よりも得であることがわかります。税抜経理方式の採用は、経営形態のドラスティックな転換などを一切必要とせず、ただ会計ソフトを導入するなどの比較的小さなコストで節税に繋げることが可能です。それのみならず、消費税分を別に記載することによって、事業の経営状況をより明確に把握することができます。このようなメリットを鑑みると、税込経理方式を積極的に導入していくべきであると言えるでしょう。

 

まとめ

中小企業の事業者には、消費税納税のための所得計算を行う際に煩雑な税抜経理方式を避け、税込経理方式でまとめて計算する方も多いのではないでしょうか。しかしながら、税務署への相談、会計ツールの導入、あるいは税理士や会計士への委託などのコストをかけて税抜経理方式を導入することができれば、必要以上の納税を減らし、税率変動にも柔軟に対応可能な処理が可能になります。ただし、処理方式をいきなり変えると経理にミスが生じる元となりますので、移行の際には、きちんと前年度までのデータも新しい処理方法に直すなど、準備を整えてから行うようにしましょう。

 

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