人材アセスメントとは、効果的な人材育成・人材配置・採用を行うために第三者が客観的に従業員のスキルを分析・評価する手法のことを指します。人材アセスメントを採用時に活用することによって、自社に適した人材を選びやすくなり、採用ミスマッチを防ぐことが可能になります。また、従業員のスキルや適性を把握することで、適切な人材配置が可能になり会社全体としての生産性向上にもつながります。人材アセスメントを正しく活用するためにも、導入目的の明確化、測定項目の決定、利用手法の決定、結果の分析の4つの手順に沿って進めましょう。
目次
人材アセスメントが注目されている
人材アセスメントとは?人事分野における意味
そもそも「アセスメント」は英語で「Assessment」と書き、日本語では「評価」や「査定」を意味する言葉です。人事分野では、人材の適性や能力を第三者が客観的に分析・評価する手法を指します。人材アセスメントは人材が持つ能力を可視化するため、効率的かつ効果的な人材育成や人材配置、人材採用などを実現することが可能です。従来の評価制度では評価者の主観が入り込み抽象的な評価に陥りがちでしたが、人材アセスメントは第三者に評価を依頼するため、人材の適正や能力を客観的に評価できます。
人材アセスメントの主な手法
人材アセスメントにはさまざまな種類があり、用途や目的によって使い分けます。状況に応じて複数の手法を組み合わせて実施するのも一般的です。例えば、人事分野では下記のような手法がしばしば用いられています。
- 適性検査
株式会社リクルートマネジメントソリューションズによる「SPI」が有名な適性検査は、採用時によく用いられる手法です。第三者機関によるテストを実施し、能力や性格・気質、興味・関心などを評価します。
- 多面評価
多面評価は360度評価とも言い、普段からかかわりのある上司や同僚、人事担当者など幅広い評価者から評価を受ける手法です。上司一人による評価ではないため、納得感を得やすいという特徴があります。
- アセスメント研修
アセスメント研修は、実地に近い環境下で研修を行い、対象者の立ち居振る舞いを観察する手法です。第三者の視点から客観的に業務への向き合い方や勤務態度を見極められるため、昇進・昇格を判断するテストとしてよく実施されています。
人材アセスメントが注目を集める背景
人材アセスメントが注目を集める背景には、働き方改革やグローバル化に伴う働き方の多様化が挙げられます。これまでの日本企業は年功序列や終身雇用が主流でした。しかし、働き方改革やグローバル化の影響で多様な働き方が誕生した結果、従来の画一的な評価手法は通用しなくなっています。また、少子高齢化による人材不足や、コロナ禍による働き方の変化によって、「個」の意識が高まったことも無視できません。従業員一人ひとりの適性や能力、働き方の志向を把握した上で人材育成や人材配置を実行することで、従業員エンゲージメントや生産性が高まり、ひいては企業価値が向上します。
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人材アセスメントのメリット
企業にとってのメリット
人材アセスメントによって従業員一人ひとりの適性や能力、志向などが可視化されるため、より「個」にフォーカスした人事活動が可能です。例えば、下記のようなメリットが期待できます。
- 人材配置の最適化
- 人材育成の効果向上
- 離職率の改善
- 採用ミスマッチの防止
人材アセスメントによって可視化されたデータを活用し、人材配置を最適化することが可能です。また、従業員が希望するキャリアと適性・能力を把握した上で、一人ひとりに合った人材育成の機会を提供できます。人材配置と人材育成の最適化によって従業員エンゲージメントが向上すれば、離職率を改善することも可能です。さらに、人材アセスメントによって離職リスクの高い人材の傾向が可視化できていれば、採用ミスマッチも防止できます。
従業員にとってのメリット
メリットがあるのは企業だけではありません。人材アセスメントは従業員にとってもメリットの大きな取り組みです。例えば、下記のようなメリットが期待できます。
- 自身の強みと弱みを把握できる
- 納得感を得やすくモチベーションが向上する
従来の主観的な評価とは異なり、人材アセスメントは第三者が客観的に分析・評価するため、従業員にとっては自身の強みや弱みを把握できるよい機会です。長所・短所や課題について気付きを得られるため、今後のキャリアを考える判断材料にもなるでしょう。また、第三者が客観的に分析・評価する人材アセスメントは、納得感を得やすいのも特徴です。公平公正な視点で現状を可視化することで、目標に向けて高いモチベーションを維持できます。
人材アセスメントの4つの手順
手順1:導入目的の明確化
まずは何のために人材アセスメントを導入するのか、導入の目的を明確化しましょう。目的が曖昧なまま人材アセスメントを実施してもデータの蓄積に終止してしまい、結局何の効果も得られなかったという事態に陥りかねません。ただ漠然と人材アセスメントを導入するのではなく、解決したい課題に対する解決手段として人材アセスメントを導入することが重要です。例えば、「新卒社員の離職率低減」「慢性的なマネージャー不足の解消」「新規事業に最適な人材の抜擢」などの課題に対しては、客観的な分析・評価ができる人材アセスメントが向いています。
手順2:測定項目の決定
導入の目的が決まったら、人材アセスメントで測定すべき項目を決定しましょう。例えば、能力開発を目的に人材アセスメントを導入する場合は、性格・気質や興味・関心などのパーソナルな面を分析・評価してもあまり意味がありません。一方、新卒採用などで評価に値する実績や情報が不足している場合は、得意・不得意や興味・関心、性格・気質、志向などパーソナルな資質を評価することは重要です。なお、測定項目は多い方がよいと考えがちですが、多すぎると情報過多となり分析・評価が難しくなります。人材アセスメント導入の目的を考慮し、必要十分な測定項目を選定することが重要です。
手順3:利用手法の決定
人材アセスメントで測定すべき項目が決まったら、実施する手法を決定しましょう。選択する手法は、対象者の適性や能力、スキル、潜在能力、パーソナリティなどを正確に分析・評価できる手法でなければなりません。具体的な手法としては、前述の適性検査や多面評価、アセスメント研修のほか、知能検査や従業員サーベイなどがあります。人材アセスメントの各手法を実施することで、人材育成や人材配置、人材採用に必要なデータを収集することが可能です。なお、目的によっては複数の手法を組み合わせて人材アセスメントを実施するケースもあります。
手順4:結果の分析
人材アセスメントの手法が決まり実行したら、結果を分析して人事活動に反映しましょう。例えば、人事異動の参考に人材アセスメントを実施した場合は、可視化された適性や能力を考慮し、適切な人材配置を行います。人材アセスメントで得られたデータを深く理解し、組織の発展と従業員の成長に生かしていくことが重要です。なお、人材アセスメントでの結果を対象者に開示する場合は、必ずセットでフィードバックも行いましょう。単に結果だけ共有されても、対象者はどのように対処すべきかわかりません。能力開発や自己啓発を目的に実施した場合は、結果に対しどのようなアクションを取るべきかサポートすることも大切です。
まとめ
今回は人材アセスメントについて解説しました。評価や査定を意味するアセスメントですが、人事分野における人材アセスメントは第三者が客観的に人材の適性や能力を分析・評価することです。働き方の多様化に伴い従来の評価制度が形骸化するなか、従業員一人ひとりに適した人材育成や人材配置を実行するため人材アセスメントの重要性が高まっています。当記事でご紹介した4つの手順に従い、人材アセスメントを実行してみましょう。