社会保険の資格喪失届、必要書類や提出方法は?

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公開日:2018.4.3

従業員が退職した際の手続きの一環として、社会保険の資格喪失届を提出する必要があります。資格喪失届は従業員の退職から5日以内に提出しなければならないため、あらかじめその手続を把握しておきましょう。今回は、資格喪失届を提出する際に必要な書類、具体的な手続きについて解説します。

資格喪失届とは

従業員の退職は、企業と当該の従業員の間だけで完結する事柄ではありません。その企業の社員の年金・健康保険の提供を行っている日本年金機構としても、どの従業員が辞めたかという情報は、供給するべき年金や健康保険のサービス量が変動するため、必ず把握しておかなければなりません。こうした際に、従業員が退職したことを当該企業以外の団体に知らせるための届け出を、資格喪失届と言います。退職以外でも、従業員が亡くなった場合や、転勤した場合には提出の義務があります。

 

資格喪失届の提出期限

資格喪失届の提出期限は、資格を喪失した日から5日以内です。7月1日が資格喪失日であれば、7月5日までに提出することが求められます。5日以内に提出というルール自体は明確なのですが、その起点となる資格喪失日がいつになるかというのが少々トリッキーな問題となっているので、以下で詳しく見てみましょう。

  • 従業員が退職または亡くなった場合
    ある従業員が退職または死亡により社会保険の受領資格を喪失するのは、原則として、その従業員が退職をした日・亡くなった日の翌日になります。これはなぜかといえば、退職または死亡した当日の午前0時の段階、日付が変わったタイミングでは従業員はまだ退職ないし死亡しておらず、よってその当日の間は受領資格が有効と見なされるからです。したがって、例えば6月30日付で退職をした場合、資格喪失日は7月1日になります。
  • その他の場合
    ただし、他にも様々な場合が存在します。例えば、従業員の転勤に伴う資格喪失日の場合は、転勤の「当日」です。退職などのように「翌日」ではないので注意が必要です。
    さらにこの他にも、従業員が一定の年齢に達した際の資格喪失日は、年齢によって異なります。70歳で厚生年金保険の資格を喪失する時、資格喪失日は70歳の誕生日の「前日」になります。これに対し、75歳に達して健康保険の資格を喪失する際は、資格喪失日は75歳の誕生日の「当日」になります。

ただし、70歳到達時に以下の条件を満たす場合には、70歳到達届の提出は省略可能なため確認しておきましょう。

  • 70歳到達日前後で同じ適用事業所に使用されている被保険者
  • 70歳到達日前後の標準報酬月額相当額が同額である被保険者

以上のような様々な場合における資格喪失日と条件の違いを充分に把握した上で、資格喪失届を提出しなくてはなりません。いずれにせよ、期限を超えての提出とならないよう、なるべく早いタイミングでの提出が望ましいと言えるでしょう。

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資格喪失届の届出先

資格喪失届は、日本年金機構に提出します。ただし年金機構の本部に郵送をするのではなく、その企業の所在地を管轄する年金事務所・事務センターに必要書類を郵送するか、あるいは直接窓口に赴いて提出を行います。

必要事項を記入したファイルは、印刷して紙媒体で提出することもできますし、CDやDVDなどの電子媒体でデータとして提出することもできます。企業にとって都合のいい方を選びましょう。

 

提出に必要な書類

資格喪失届の提出に必要な書類は、保険の種類や従業員の雇用状況によって様々に場合分けができます。1つずつ確認していきましょう。

全員に共通する書類

資格喪失届それ自体は、当然ながらいずれの場合にも必要となります。日本年金機構のウェブサイトで資格喪失届様式のエクセルデータをダウンロードすることができます。記入例も掲示されていますので、それに従って記入していきましょう。1つでもミスがあると正しく受理されなかったり、再提出を求められたりしますので、提出前に何度もチェックすることが望ましいでしょう。以下は、資格喪失届に記入する主な情報の一覧です。

  • 対象となる従業員の氏名と生年月日
  • 事業所整理番号
  • 従業員整理番号
  • 年金手帳の基礎年金番号
  • 退職などの事実が発生した年月日
  • 資格喪失年月日
    これが必ずしも退職などの事実が発生した年月日と一致しないことは先述の通りです
  • 資格喪失原因
    先に触れたような資格喪失原因の種類ごとに丸を囲む方式になっています。退職と転勤の場合は「その他」を囲みます
  • 標準報酬月額

資格喪失日から相当の日数が経過した後に届け出る場合

次に、資格喪失届の中の「資格喪失年月日」に記載された資格喪失の日付が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合を考えてみましょう。つまり、資格喪失日から60日以上も間を空けて書類の提出をせざるを得なかったというケースです。

この場合、資格喪失届に加えて、資格喪失の事実が発生した日付の確認ができる客観的な証拠となる書類が必要になります。対象の従業員が会社役員でない一般従業員の場合は退職月の賃金台帳の写しや出勤簿の写しなどが、対象の従業員が役員であった場合には株主総会の議事録や役員変更登記の記載がある登記簿謄本の写しなどが該当しますが、これらに準ずるものであれば他の種類の書類であっても受理されます。また、これらの書類は直接の提出だけでなく、JPEG形式またはPDF形式の画像データで電子書類として提出することも可能です。

60歳以上になった従業員が退職して、その日のうちに再雇用される場合

60歳で一度定年退職という形をとり、即日再雇用され業務を継続するような場合はどうしたらいいでしょうか。こうした場合、以下の2通りどちらかの方法で書類を提出することが求められます。

  • 退職日の確認が可能な「就業規則、退職辞令の写し」と、継続再雇用が確認できる「雇用契約書の写し」の両方を提出する
  • 退職日および再雇用された日に関する事業主の捺印のある証明書を提出する

もちろん再雇用が成立している都合上、資格喪失届と同日付の資格取得届を提出する必要もありますので、忘れずに準備しておきましょう。

全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)受給者の場合

2種類ある社会保険のうち、協会けんぽに加入している会社の場合、以下の書類が必要になります。

  • 健康保険被保険者証(本人分と、家族など被扶養者の分の両方)
  • 高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証(これらは該当する方のみとなります)

全ての協会けんぽ受給者が必ず提出しなければならないのは、健康保険被保険者証です。また、条件によっては2つ目に示した追加の書類が必要になります。もしこれらの書類をなんらかの理由で紛失してしまった場合は、資格喪失届にその理由を追記するか、「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」という書類を別途記入して、合わせて提出しましょう。後者の届け出の様式は日本年金機構のウェブサイトでダウンロードが可能です。

組合管掌健康保険(組合健保)受給者の場合

もう1つの社会保険である組合健保を採用している会社の場合、資格喪失届の他に添付する必要のある書類はありません。こちらの社会保険では、健康保険被保険者証は健保組合に返却をするので、年金機構に提出する必要がないためです。

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まとめ

資格喪失届は、従業員が退職した事実それ自体に気を取られて忘れてしまいがちな書類ですが、健康保険や年金の都合上必ず提出しなければならない重要なものです。従業員の退職のたびに日本年金機構をはじめとするウェブページを参照してゼロから書類を準備して提出するのでは時間もかかりますから、資格喪失届に付随する必要事項をまとめた一覧を作るなどして、抜かりなく滞りなく手続きを済ませられるようにしておきましょう。

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