こんなときどうする……? 突然の経営危機には、セーフティネット保証

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公開日:2018.7.30

取引先の倒産や大規模な経済危機などにより企業の経営が困難になった場合の措置として、セーフティネット保証が受けられます。セーフティネット保証は、経営安定関連保証と危機関連保証の2つに分かれており、状況ごとに受けられる保証が異なります。今回は、セーフティネット保証の内容と保証料率、限度額について解説していきます。

セーフティネット保証とは

セーフティネット保証とは、大きな経営支障を被った中小企業や小規模事業者を救済するために融資を行う制度を指します。この制度は中小企業信用保険法に基づいており、上述のように、経営安定関連保証と危機関連保証の2種類があります。以下で、それぞれ詳しく説明します。

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経営安定関連保証

経営安定関連保証は、様々な突発的障害によって経営が困難となった事業者を対象とします。取引先企業の倒産や活動制限、自然災害、不況などで経営が不安定化した事業に対する資金供給の円滑化を目的として、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で保証を行います。希望する企業は、事業所の所在地の管轄の市町村長か特別区長の認定と、金融機関と信用保証協会による審査を受けることで、この制度を利用することができます。保証対象者は障害の理由ごとに1号から8号に分けられており、それぞれの条件等については後述します。

  • 手続き
    対象となる中小企業や小規模事業者は、本店所在地の市町村か特別区の商工担当課等の窓口に、認定申請書2通を、その事実を証明する書面等があれば添付した上で提出します。認定を受けた後、希望の金融機関か所在地の信用保証協会に認定書を示し、保証付き融資を申し込むことになります。
  • 保証料率
    おおむね1%以内の少ない負担となっています。詳細は各信用保証協会と各保証制度に委ねられています。
  • 保証限度額
    原則として普通保証2億円、無担保保証8,000万円の計2億8,000万円を上限に、一般保証とは別枠で利用できます。6号のみ普通保証が3億となっており、上限額は計3億8,000万円です。また、後述する危機関連保証と併せて申請することができます。

1号(連鎖倒産防止)

民事再生手続開始の申立等を行って倒産した大企業に対して、売掛金債権等を持つため経営に支障が生じている中小企業を支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • その倒産企業に対して50万円以上売掛金債権等を持つ中小企業
  • その倒産企業に対して50万円未満の売掛金債権等しか持たないが、その企業との取引規模が20%以上である中小企業

2号(取引先企業におけるリストラ等の事業活動の制限)

直接的もしくは間接的に取引している企業が生産量の縮小、販売量の縮小、店舗の閉鎖等の事業活動の制限を行ったために、売上等が減少している中小企業を支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • 事業活動の制限を行った企業との直接取引または間接的取引の規模が、総取引規模のうち20%以上の割合を占め、かつ、その制限を受けた後の3か月間の売上高等が前年の同時期に比べて10%以上減少することが見込まれる中小企業
  • 事業活動の制限を行った企業の近隣に位置しており、その制限を受けた後の3か月間の売上高等が前年の同時期に比べて10%以上減少することが見込まれる中小企業

3号(事故等の突発的災害)

事故等の突発的災害の発生によって売上高が減少している中小企業を支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • 指定を受けた地域において1年以上継続して事業を行っており、災害等の影響を受けた後の3か月間の売上高等が前年の同時期に比べて20%以上減少することが見込まれる中小企業

4号(自然災害等の突発的災害)

自然災害等の突発的災害の発生によって売上高等が減少している中小企業を支援するための措置です。直近では2016年の熊本地震、2017年7月の大雨による災害、同年の台風第18号による災害、2018年の霧島山における火山活動などが保証の事由に指定されています。対象企業は以下です。

  • 指定を受けた地域において1年間以上継続して事業を行っており、災害等の発生によって事業に関わる影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高もしくは販売数量が前年の同月に比べて20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年の同時期に比べて20%以上減少することが見込まれる中小企業

5号(全国的に業況の悪化している業種)

全国的に業況の悪化している業種に属す中小企業を支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • 中小企業庁が指定する業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年の同時期に比べて5%以上減少していることについて、市区町村長の認定を受けた中小企業
  • 中小企業庁が指定する業種に属する事業を行っており、製品等の原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているのにもかかわらず製品等の価格に反映できていないことについて、市区町村長の認定を受けた中小企業。

6号(取引金融機関の破綻)

金融取引を行っていた銀行等の金融機関が破綻したため、借入金の減少等が生じている中小企業を支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • 破綻した金融機関と金融取引を行っていたために、適正で健全な事業を営んでいるのに金融取引に支障が生じており、金融取引を正常化するためには破綻した金融機関等からの借入金の返済を含めた資金調達が必要である中小企業

7号(金融機関の経営の合理化に伴う金融取引の調整)

支店の削減等によって金融機関が相当程度の経営合理化を行ったことにより、その金融機関からの借入れが減少している中小企業を支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • 相当程度の経営合理化を行ったことで中小企業庁の指定を受けた金融機関に対する取引依存度が10%以上で、当該の金融機関からの直近の借入残高が前年の同時期に比べて10%以上減少しており、直近の総借入残高が前年の同期時に比べて減少している中小企業

8号(金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡)

RCC(整理回収機構)へ貸付債権が譲渡された中小企業のうち、事業の再生可能性があると判断されるものを支援するための措置です。対象企業は以下です。

  • 金融機関からの直近の総借入金残高が前年の同時期に比べて減少し、適切な事業再生計画を作成していて、RCCから返済条件の変更を受けている中小企業

 

危機関連保証

危機関連保証は、国内外の突発的な混乱のために短期間で急速に金融状況が悪化した場合に、売上げが減少している中小企業を支援する制度です。リーマンショックや東日本大震災などと同程度の事態が想定され、そのような大きな混乱の中で中小企業の信用回復のために国を挙げて全国的に対応する必要があると認められた場合に、条件を満たす中小企業は融資を申し込むことができます。その際は経営安定関連保証と同様に、事業所の所在地の管轄の市町村長か特別区長の認定、金融機関と信用保証協会による審査が必要です。

  • 対象企業
    支障が出ている金融取引の正常化のために資金調達が必要であり、かつ、経済産業省大臣による認定案件のために、原則として最近1か月間の売上高等が前年の同月と比べて15%以上減少しており、更に、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年の同時期に比べて15%以上減少することが見込まれる中小企業。なお、現在、本制度の適用が認められる案件は出ていません。
  • 手続き
    対象となる中小企業や小規模事業者は、本店所在地の市町村か特別区の商工担当課等の窓口に、認定申請書2通を、その事実を証明する書面等があれば添付した上で提出します。認定を受けた後、希望の金融機関か所在地の信用保証協会に認定書を示し、保証付き融資を申し込むことになります。
  • 保証料率
    おおむね8%以内の少ない負担となっています。詳細は各信用保証協会と各保証制度に委ねられています。
  • 保証限度額
    普通保証2億円、無担保保証8,000万円の計2億8,000万円を上限に、一般保証とは別枠で利用できます。経営安定関連保証と併せて申請することができます。

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まとめ

今回はセーフティネット保証について見てきましたが、中小企業を支援する制度は他にも多く存在します。様々な理由から経営に困難を覚えた場合に、速やかに支援が受けられるようにするためにも、どのような制度があるのかを把握しておくことが重要です。

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