BCPとも呼ばれる事業継続計画は、非常時に企業の事業遂行への被害を最小限に抑え、早急に復帰するためのマニュアルとなります。今回は事業継続計画を策定する理由や策定方法、自然災害マニュアルとの違いなどについて説明していきます。
目次
事業継続計画(BCP)とは
事業継続計画(BCP)とは、自然災害や、事件・事故、火災といった緊急事態が起きた時のために、あらかじめ作っておくガイドラインです。地震や噴火などの自然災害は、起きてから対応するのでは重要な復旧ポイントを全て回収するのはかなり難しいですが、事前に対応策を考えておけばより迅速に復旧へとこぎつけることができます。工場での火災の発生による被害が出た際や、台風、雪などの悪天候による被害が出た際も同様です。異常事態が発生した際に慌てず、しっかりと対処するために、事業継続計画(BCP)の存在が重要となります。
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自然災害マニュアルとの違い
事業継続計画(BCP)と自然災害マニュアルは、その存在意義という点からみると全く変わりません。両者とも、事前に起こりうる被害を想定し、起こった場合の行動の仕方や、起きる前までにできる対応策を考え、実践へとつなげるためのものです。両者の違いは自然災害マニュアルが事前に想定する被害の種類を自然災害のみに絞っているのに対し、事業継続計画(BCP)は自然災害の他にも天候不順や、交通事故、病気の流行といった被害まで対象を広げているところにあります。
事業継続計画(BCP)を策定するメリット
事業継続計画(BCP)の大まかな存在意義については述べましたが、策定によって得られる具体的なメリットとして、次の3点が考えられます。
余剰コストを削減できる
緊急事態が発生して自社の生産ラインに被害が及べば、復旧するための余剰コストがかかってしまいます。しかし、その余剰コストの一部は事業継続計画(BCP)の策定によって削減することができます。例えば、工場にある機械や工場自体の耐震構造が万全ではなかったとしたら、充分な対策を施している場合よりも地震の被害が大きくなり、稼働可能な状態になるまで時間もお金もかかってしまいます。事業継続計画(BCP)を事前に策定しておけば、突然の災害でも被害を最小限に抑えることができ、結果的に回避可能なコストをかけずにすむでしょう。
会社の競争力を維持できる
余剰コストを削減できるというメリットに通ずるところですが、もし、異常事態発生時に復旧のためのコストが膨大にかかってしまったとしたら、会社の競争力がそれ以前と比べて弱まることは避けられないでしょう。常日頃から余裕のある財務状態を維持しておかなければ、最悪の場合、資金繰りがうまくいかずに倒産してしまう可能性すらあります。事業継続計画(BCP)を策定しておくと、こういった会社の存続にかかわる危険を最小化することができるでしょう。
会社として信頼を得られる
事業継続計画(BCP)を策定するということは、起こり得る異常事態を想定し、それに対応しようと日頃から考えているということです。この取組みにどの程度力を入れるかは会社にもよりますが、十分に問題への対処法を考えていれば、それだけでも会社の社会的な信頼度が上がるでしょう。実際に、新規案件の受注の際に事業継続計画(BCP)の存在の有無が競合を制する1つのポイントとなるケースもあるようです。
事業継続計画(BCP)の策定のステップ
上記のようなメリットを得られる事業継続計画(BCP)を策定するためには、概していえば、次の4つの作業をループすることになります。
- 起こりうる緊急事態を想定し、それに関連する自社の業務を列挙
- 被害が出てから復旧にかけてのガイドラインを作成
- 事前に日頃からできることを探して実行
- 上記3つの見直しを、一定スパンを経て実行
これらの4つのステップのうち、1つ目では想像、2つ目では考案、3つ目では対応・対話という軸を設けるとよいでしょう。
事業継続計画(BCP)策定時のポイント
事業継続計画(BCP)策定の基本的な手順は上記の通りですが、よりよい事業継続計画(BCP)策定のためには、様々な視点をもって対応策を考えることが重要です。特筆すべきポイントとして以下のようなものが挙げられます。
自社の中核事業を特定する
事業継続計画(BCP)策定ステップの1つ目において緊急事態の想定をする際に、様々な問題と、それによって生じると考えられる被害を列挙します。しかし、特に初めて事業継続計画(BCP)を策定する場合は、この工程を効率よく行うにはどうしたらいいかわからないかもしれません。そこで1つのやり方として、被害を受けると一番会社の経営に影響を与えてしまう事業、いわゆる中核事業を見定め、これに影響を及ぼしうるケースの事業継続計画(BCP)の策定からまず始めるとよいでしょう。
被害の種類をなるべく多く把握する
起こりうる被害を想定する際に重要なのは、なるべく多くの種類の被害を考慮することです。この時見落としがちな点として、二次災害や、人的災害などが挙がります。二次災害とは、地震が起こった際の津波や液状化現象など、何らかの災害に付随して起こる災害のことです。人的災害とは、従業員が怪我や病気などで正常に業務を遂行できなくなることです。インフルエンザなどの大型感染症による欠勤もこれにあたります。
復旧までは使える資源が平常時の約3割とする
中核事業を見定めたら次は、復旧するまでの具体的なガイドラインの作成に入ります。被害を受けてから復旧するまではインフラ基盤が崩壊していたり、物資の供給がうまくいかなかったりと、最悪の事態を様々なパターンで想定しておくとよいでしょう。1つの目安として、資金、労働力、資源、情報が、普段の約3割程度しか使えないと仮定することが有効です。こうした状況下で、どのようにすれば平常時の営業になるべく近づけられるかを考えなければなりません。
業種で復旧までの期間をわける
どの業種であっても、できるだけ早く復旧することが望ましいですが、被害が出てその日のうちに事業を再開すべき業種もあれば、再開までに1週間はかかってしまっても仕方がない業種もあります。例えば、サービス業や小売業であれば地域密着型である場合が多く、地域全体に被害が出ている状況であるとしたら、地域の復興のために1日でも早くに事業を再開するとよいでしょう。それによって地域の復興に貢献できれば、地域内での信頼度が増すことは明らかです。
まとめ
事業継続計画(BCP)を策定するにあたっての、多くのポイントを述べてきました。重要なことは、なるべく多くの被害を想定し、普段よりも業務遂行が難しい状況における、復旧のためのあらゆる方法を模索することです。平常時は使わないルートでの物資の供給を図ったり、会社間で相互扶助の関係を結んだりするのもよいでしょう。多種多様なアイディアを出すことができれば、事業継続計画(BCP)の存在意義もますます高まります。