中小企業のBCPの現状って?他社事例を知りたい!! 【月刊総務サロンレポート】

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公開日:2016.4.25

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創刊50年を誇る総務部門の専門誌『月刊総務』。同媒体の主催する、総務担当者向けフリーディスカッション・イベント「総務サロン」というのがあるらしいとのこと。ソムリエ編集部員が潜入してきました!

今回のホットトピックスのひとつは「BCP対策」。BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭った際に行うべき行動指針などをまとめた事業継続計画のこと。東日本大震災を経て、各企業でBCP対策への意識が高まっています。

ところが、BCP策定済みの中小企業は19%程度どまり(2016年、月刊総務調べ)。実際に参加者の総務担当者さん(従業員数30名~500名)11名も、頭を抱えているようです。ここでは、総務担当者の方々のBCPへの取り組みに関する悩み、アイデアについて、生の声を紹介します。

 

「やりたいけれど、ハードルが高い!」中小企業の総務担当者、11人の苦悩

――事前質問として複数寄せられたBCP対策、みなさんはどこまで取り組んでいますか?

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BCP策定をしている…0人

防災については対策をしている7人挙手

防災対策を文書化している…2人挙手

BCPは総務の仕事だと認識している…11人挙手

有事の際に陣頭指揮を執るのは総務の役割だと認識している…11人挙手

 

――「防災対策はしている」「BCP対策は総務の仕事」「有事の際に陣頭指揮を執るのは総務」という共通点があるようですね。ではまず、現状とお悩みの点はどこにありますか?

 

Dさん:BCPに対する取り組みの必要性は強く感じています。ただ、現状としては昔から防災訓練のマニュアルが一応ある、というレベル…。文書化はされているものの、内容も古いままで、事業継続計画としてはまだまだ不十分ですね…。まずは更新するところから始めないと…。

 

Iさん:うちほとんど同じ状況で、しかも文書化さえされていません。経営陣から「BCP対策は総務の役割だ」と任されているものの、同時に「コストはかけないように!」とも言われていて…。専門のコンサルタントを入れたくても予算がないし、総務だけでゼロからつくるにはハードルが高すぎると思います。

 

Lさん:うちは商社で、仕入れ先と納品先の間にいる立場だから、防災および事業継続対策として連絡網を徹底しています。各営業担当者が誰にどんな連絡をどうやって取るのかをシミュレーションしたりもします。商社の世界では情報とネットワークが命ですからね。でもそれ以外では、まだまだ手つかずなのが現状です。

 

Uさん:「BCP対策は総務の仕事。有事の際に陣頭指揮を執るのも総務の仕事。」と言われてはいるけれど、そもそも1人で総務全般を任されている身としては、とても手に負えないです…。

 

oさん:BCPに取り組もうとしても、経営陣にとっての優先順位が低ければ難しいです。どれだけ総務が頑張っても、経営陣が同じ温度感で同じ方向を向いていなければ当然、現場のスタッフもついてきませんからね。

 

――防災対策までは何らかの形でやっている。でも、BCPという概念はあまりにも広く、総務だけで取り組むには無理がある。人的・金銭的コストなど、経営陣や他部署とのコンセンサスが必要…というのが、みなさんの実情、課題のようですね。それでも「BCP対策は総務の仕事」。では、現時点で「できている」ことは何でしょうか?

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『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド(Nanaブックス)』をもとにソムリエ編集部作成

 

膨大な仕事。それでも地道に「できることから」。BCP対策ブレスト【安否確認編】

 

――東日本大震災のときに麻痺した連絡網について、どんな取り組みをされていますか?

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他社の取り組みに学ぶべく、参加者は真剣な眼差しに。

Rさん:うちは震災を受けて、安否確認のシステムを見直しました。あれだけの規模の災害となると、全社一斉メールを送ったところで社内メールを見られない人がほとんどです。だからクラウドを使ったシステムに切り替えました。

 

Jさん:震災時はみんな家族の安否がわからず、余震がある中、歩いて帰宅する人がほとんどでしたよね。危険だし、体力も気力も消耗してしまう。うちでは家族の安否確認ができるようなオプションをクラウドサービスに加えましたよ。

 

――当時、自宅までの徒歩帰宅ルートを確認する、というのが震災対策の主流でしたが、最近は「会社にとどまる方が安全性だ」という意見も増えています。ただしその場合は、家族の安否確認が取れていることが前提になりますよね。

 

Wさん:弊社でも、家族の安否確認ができるシステムを追加導入しました。でも、個人情報の問題やコストの問題があって、「そこまでやらなくてもいい」という社員が多いのが実情です。

 

Bさん:うちは通信インフラ関係の事業を展開しており、全国各地に社員が出張したり赴任したりしています。このため、災害時は、基地局の無事を確認しながら各地の社員に連絡するのが私たち総務の仕事です。

 

――社員はもちろんのこと、その家族まで含めた安否確認、というところにみなさん注力されていますね。そして通信インフラを担う企業さんは、陰で基地局の安否確認をするところから取り組まれている。まずは「できることから」ですね。

 

消費期限と戦いながら、「社員に喜ばれる備蓄」を。BCP対策ブレスト【備蓄食糧・飲料編】

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――家族の安否確認が取れたとして、社員が会社にとどまるためには、非常用の食糧や水を備蓄しておかなければならないですよね。

 

Dさん:備蓄用の食糧や水って、管理が大変で…。うちでは、全国の拠点に順次用意していったのですが、出荷状況がばらばらになってしまって、いま消費期限ラッシュです。でも、入れ替えるにも経営陣からの予算がなかなか下りないし、社員からは「期限切れだから早く入れ替えて!」とせっつかれるし…。みなさんどんな工夫をしています?

 

Tさん:非常食って、あくまで非常時に最低限の栄養をとるためのものですよね。おいしいものではないわけで。だからうちでは、ちょっと高価なんですけど、「普段食べてもおいしい非常食」を置いています。そうすると、消費期限前に入れ替えて社員に配ることができるので、結果的にコストパフォーマンスが良いっていう。社員からも好評です。

 

Iさん:うちは自動販売機を置いているのですが、ベンダーさんからの提案を受けています。「自動販売機に補充する飲み物の単価は下げられないけれど、そのかわりに防災用の水やお菓子などを提供します」とか、「200L分の水を500mlのペットボトルで常に置いて管理して、期限がきたら無料で交換します」とか。お菓子は期限が近づいて、先日社員に配ったばかりです。好評でしたよ!

 

――ベンダーは特定分野で非常に多くの経験を積んでいます。総務担当者より詳しいことがほとんどです。Win-Winになるように配慮しながら、ベンダーに教えてもらうというのは非常に有効な手かもしれませんね。ベンダー側も、導入してくれそうであれば、積極的に情報提供してくれます。

 

Yさん:ウォーターサーバーの活用もありだと思います。うちは各フロアにコーヒーメーカーを置いていたんですが、実際はカップ麺用のお湯を沸かすのに使われているのがわかりました(笑)それなら、1フロア・1カ所にだけちょっと高級なコーヒーメーカーを置いて、あとはウォーターサーバーでいいかな、と。

 

――「おいしい非常食」「お菓子」「ウォーターサーバー」いろいろとアイデアが出ました。コストをかけない、あるいはコストを削減しながら、社員に喜ばれる備蓄をしていくのは、総務の腕の見せどころになりそうですね。

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サロン終了後の懇親会。ここでも議論がヒートアップ!

 

編集後記

各社の総務さんから熱い議論の飛び交ったBCPというテーマ。「BCPは総務の仕事だ」「有事の際に陣頭指揮を執るのは総務の役割だ」と認識はされているようです。同時に、中小企業の総務さんにとって、ゼロからBCPを策定するのがいかに大変でハードルが高いか、ということに改めて気づかされました。

BCPの策定に先駆けた防災対策については、「社員とその家族の安否確認」「クラウド型安否確認サービスの導入」など、地道な取り組みは各社の総務部門で実施はされているようです。

もうひとつは、備蓄用の食糧や飲料水についてのさまざまなアイデアや導入事例。「普段食べてもおいしい非常食」を始めとした「コストパフォーマンスを上げながら社員に喜ばれる備蓄」は、これからのトレンドになってくるかもしれませんね。BCPや災害対策は守りの施策ですが、おいしさを考慮するような前向きな施策をやっていけるといいなと感じました。

月刊総務では総務サロンの参加を随時受付けているそうですのでご興味のある方はぜひ参加してみてください。

http://www.g-soumu.com/soumu/seminar/salon.php

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