ご存知ですか?人事評価制度の必要性と助成金の活用について

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公開日:2017.8.29

【1】「働き方改革」にみる人事評価制度の必要性について

■働き方改革の課題と方向性

電通の過労死事件を皮切りに、最近ではヤマト運輸が未払い残業代の遡及支払に踏み切る等、労働問題が紙面を賑わすことが多くなってきている中で、「働き方改革」がにわかに注目を集めています。政府も国家の最優先課題として、労働政策的な側面だけでなく経済政策的な側面からも取り組みを本格化させており、同一労働同一賃金、長時間労働の是正、高齢者の就業促進や子育て・介護と仕事の両立など、様々な議論がされています。

一方で企業の本音として、議論されている様々なテーマの中で最も目標とすべき課題は『生産性の向上』ではないでしょうか。
急激に進行する少子高齢化の下、行政の圧力を受けるまでもなく、子育て・介護支援や賃上げによって離職を防ぎ、柔軟な働き方を設定して女性や若者、高齢者、外国人を活用することは人手確保のために避けられません。働く時間に制約のある人手と高い時間単価賃金を両立させつつ経営を成り立たせるには、一人ひとりの生産性を向上させるほかないからです。
積極的に働き方改革を進める企業の事例が政府(厚生労働省、経済産業省等)によって公開されていますが、共通していることは時代に合った人事評価制度をもっていることのようです。

 

■業績向上につながる人事評価制度構築のためのポイント

☆企業目標と個人目標のリンク

個人やグループ単位で目標を設定し、その達成度で評価を決める目標管理制度は、多くの企業が利用しています。企業・組織の目標をしっかり社員に示し、企業目標との関わりで果たすべき役割を社員自身に自主的に見出ださせています。
社員の自主性が肝心ですから、企業目標と個人目標のベクトルをいかに揃えるかに、多くの企業は工夫を凝らしています。現状分析を徹底して話合いの場をしっかりつくる、周囲に信頼される自分になれば評価が上がる仕組みにする、などはその工夫でしょう。社員が目標を考える際、自分は何を目指せば評価されるのかという基準と尺度が分かっていれば、社員は自ずと企業の期待する方向へ向かいます。

 

☆求めるスキルの明示、対応する行動の明確化

社員のレベルごとに求めるスキルを具体的かつシンプルに示すことが必要です。社員は、スキルを身につけ、レベルを上げるためには、日々どう行動すればよいかが明確になります。行動改善を促すツールとしてはチェックシートを上手に活用するといいでしょう。

 

☆PDCAサイクルの短周期での回転

比較的に短周期で、上司との面談(コミュニケーション)の機会を設けることが必要です。目標設定・行動計画、実行、評価、改善のPDCAサイクルを早く回せば、早い段階で軌道修正ができ、効率的に目標にたどりつけるからです。さらに、頻繁なコミュニケーションは、社員が成長のモチベーションを保ち、行動計画を自己管理する上でも有効です。

 

☆職務・責任に基づく評価と賃金の結びつきが明確

長時間労働の是正と生産性の向上の両立は、時間ではなく成果に着目して評価する制度が有効であるとの認識が広まっています。職務の難度や責任の重さを測定してランク付けし、求められる責務をどれほど果たせたかで評価して処遇を決める方が、
働き方改革と親和性が高いようです。

 

☆評価による処遇の差を社員の成長に転じる

上述のような達成度評価に基づく給与査定では、評価によって当然、給与に差が出ます。それが社員の納得感につながると前向きにとらえる企業は少なくありません。その前提には、制度自体が透明で、評価の基準や過程も包み隠さず、社員自身が足り
ないスキルを自覚できるような制度運用であることが必要です。

 

■これからの人事評価制度に求められるものとは

いままさに、社員と企業双方に、給与に対する意識改革が求められているのではないでしょうか。社員は給与が自らの成長とそれによる業績貢献に対して支払われるとの意識で働き、企業は賃上げが生産性向上の証拠であると前向きにとらえて実行す
る。このような意識の下での労使の行動が、働き方改革の成否を分けるカギかもしれません。
そのような中で、企業の成長をもたらすために、以下の3つのことが企業に求められていると言えるでしょう。

・社員の潜在能力を引き出す人事管理制度に舵を切ること
・効率化のインフラとなる業務プロセス改善や人財育成への投資に踏み出すこと
・社員の仕事が顧客にもたらした価値に正当な対価を受け取れるビジネスモデルを構築すること

 

【2】人事評価改善等助成金について

■制度整備助成の概要

生産性向上のための人事評価制度と賃金アップを含む賃金制度の整備(制度の新設または制度の改定)を行った場合に助成されます。
受給要件として、次の①から⑧までの全てを満たす人事評価制度である必要があります。

① 生産性の向上に資する人事評価制度および賃金制度として労働組合または労働者の過半数を代表する者との合意ができている
② 評価の対象と基準が明確で労働者に開示されている
③ 評価が年1回以上行われる
④ 人事評価制度と賃金との関係が明確である
⑤ 賃金表を定めている
⑥ 上記②③を労働者に開示している
⑦ 人事評価制度実施日の前月とその1年後の同月を比較したとき毎月決まって支払われる賃金【基本給+諸手当(時
間外手当、休日手当を除く)】の見込額が2%以上増加する見込みである
⑧ ⑦について労働組合または労働者の過半数を代表するものと合意している

 

■目標達成助成の概要

制度整備の1年後に人事評価制度の適切な運用をして生産性の向上(計算式によって計算された助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における生産性がその3年前に比べて6%以上伸びていること)、労働者の賃金2%のアップ、離職率の低下(雇用保険の被保険者数によって計画時離職率より評価時離職率が下がっているか現状維持であること)の全ての目標を達成した場合に助成されます。

 

■受給額

★制度整備助成・・・50万円   ★目標達成助成・・・80万円

 

■支給申請手続

①人事評価制度等整備計画を人事制度を整備する月の初日からさかのぼって6カ月前から1カ月前の日の前日までに本社の所在地を管轄する労働局へ提出
②人事評価制度の整備(労働協約または就業規則に整備)就業規則の届出義務がある場合には届け出る
③人事評価制度の実施(すべての正規労働者へ実施すること)
④制度整備助成の申請人事評価制度等に基づく最初の賃金が支払われた日の翌日から12ヶ月間が経過する日までの期間の末日の翌日から起算して2か月以内に管轄労働局へ申請

 

■注意事項

本助成金は平成29年度の新しい助成金ですが、本年度の特徴として「生産性の要件」が取り入れられています。助成金の申請にあたって各勘定科目の額の証拠書類、損益計算書や総勘定元帳等の提出が原則として必要になります。
今年度から始まった助成金ですから、審査のポイント等はこれから固まっていくものと思われますので、管轄の労働局に相談しながら進めていくと良いでしょう。

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