【2021年4月施行】中途採用比率の公表義務化に伴う対応とは

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公開日:2021.3.3

2021年4月より労働施策総合推進法が改正され、企業は労働者に占める中途採用比率の公表が義務付けられます。これは昨今の転職市場の規模増大や雇用の流動化が背景で、企業と中途採用希望者間のマッチングを促進する狙いがあります。義務化の対象は大企業のみですが、今後中小企業にも適用される可能性があるため、他人事と捉えずに対応しましょう。今回は、中途採用比率の公表が義務化される背景や対象企業とその項目、改正によるメリット・デメリットを解説していきます。

中途採用比率の公表義務化とは

中途採用比率の公表義務化の背景

中途採用比率は、正社員の採用者数に占める中途採用者の割合を示します。
かつての日本では終身雇用制を採用する企業も多く、できる限り一つの企業で働き続けたいと思う労働者が一般的でした。それにもかかわらず、なぜ中途採用が重要視されるようになったのでしょうか?
中途採用比率の公表が義務付けられた背景には、人生100年時代において職業生活の長期化が見込まれるということがあります。長い人生においては、年齢と共にライフスタイルも変化するため、ライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるようにすることが望ましいという意識が高まっているのです。そのため、労働者が希望する職種や良質な雇用環境の職場に円滑に就職できるように、中途採用環境の整備が進められています。

公表が義務化される企業

常時雇用している労働者数が301人以上の大企業に対して公表が義務付けられます。中小企業では、近年すでに中途採用が以前より活発化していることや、中小企業の事務的負担などを踏まえて、現行の法律においては、中小企業は中途採用比率の公表義務化の対象には含まれていません。

公表が義務化される項目

正社員の採用者数に占める中途採用者の割合を直近3事業年度分公表する必要があります。これは、経年的に企業における中途採用実績の変化を把握するためです。なお、情報の公表方法は企業のホームページを利用するなど、求職者が閲覧しやすい方法が望ましいとされています。

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改正による中途採用比率公表義務化のメリット

多様性をアピールできる

正社員の中途採用実績の高さを示すことによって、求職者に対し、働き方の多様性に対応している企業であることをアピールできます。入社後の処遇を不安に感じる求職者は多いため、自身が働く姿がイメージしやすい企業には就職希望者が集まりやすい傾向があります。そのため、正社員の中途採用比率を公表する際は、中途採用実績のみを示すのではなく、中途採用への企業の考え方や、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇などの情報もあわせて公表するとより効果的でしょう。

企業側と求職者のマッチング精度が上がる

企業の内側の様子は、入社してみてからでないとはっきりとはわかりません。そのためしばしば採用のミスマッチが起こります。このようなミスマッチを避けるためには、中途採用比率の公表とあわせて、中途採用後の働き方の好事例の紹介、社内の取り組み、考え方などの情報公開をすることによって、企業側と求職者のマッチング精度の向上を目指すことが大切です。また、企業の理念に共感してくれる労働者は、企業経営にとって何物にも代えがたい貴重な存在ともいえます。このような就職希望者と出会うためにも、透明性のある職場情報を公表することは重要です。

優秀な人材の確保に繋がる

かつて終身雇用が一般的な認識だった時代においては、企業は従業員の教育・研修に長期的に責任を担う必要がありました。もちろん、現在でも従業員教育へ責任を持つことは企業にとって重要な心得の一つですが、中途採用を行うことで自社では培えなかった経験や能力を備えた人材に出会う機会が生まれます。中途採用をするうえでは、その人材が技術や専門性に卓越しているかどうかも重要ですが、組織全体を多様性のある人材構成にすることにも大きな意味があるといえるでしょう。自社の人材とは異なる価値観や業務方法を知ることで、組織の風通しが良くなり、新たな発想が生まれやすくなります。常に技術革新が求められるIT分野などでは、このような多様性のある組織作りを心がけることで、より優秀な人材の確保に繋がる可能性があります。

 

改正による中途採用比率の公表義務化のデメリット

求職者が中途採用比率を重視するとは限らない 

中途採用比率の公開については、企業や求職者にとって有意義なものとなるか否かについて、懐疑的な意見も散見されます。改正法施行前の現在においては、中途採用比率を公表することで、どの程度の効果を得られるか定かではないからです。求職者にとっても、企業選びの際にその企業の中途採用比率に注目するべきだという認識は深まっていない中、どのような情報を開示すべきか悩む企業もあるでしょう。手探りの中、より多くの求職者を惹きつけるように工夫し、他社と差別化を図らなければならない点も課題になります。現時点においては、中途採用比率の公表のための手間やコストとそこから得られる効果が見合わないと考える企業は少なくないようです。

データの集計に手間やコストがかかる

中途採用比率は直近3事業年度分を公開する必要があります。情報開示をするためには、データ整理や公開作業のための手間やコストをかけなければなりません。このような、決して少なくない手間やコストをかけることに対し、デメリットであると考える企業は多いようです。

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まとめ

今回の改正によって、労働者が自立の意思をもって、より自分が働きやすい職場を選択していく意識が高まることが期待されています。一方で企業側には、これまでのように「人材を採用する」、「教育する」という考え方だけではなく、優秀な人材に選ばれる職場づくりを目指す必要があるでしょう。少子高齢化によって労働人口の獲得が困難になるこれからの時代には、労働力の流動性を高め、労働者と企業がともに質を高め合うことが重要になってきます。このような流れを理解し、今回の中途採用比率の公表義務化を機会として、新しい人材活用と組織作りについて考えてみると良いでしょう。

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