これだけは押さえておきたい! 改正障害者雇用促進法

公開日:2016.10.24

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障害者雇用促進法が改正され、2020年4月から一部の規定が施行されています。これにより、雇用の分野における障害者に対する差別が禁じられ、各企業において、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置を講じることが義務づけられました。

今後、企業はどのようなことに留意すればよいのでしょうか? 今回は、改正障害者雇用促進法について説明します。

 

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法は、障害のある人が障害のない人と同様その能力と適性に応じた雇用の場に就き、地域で自立した生活を送ることができるようにするための措置を総合的に講じることで、障害者の職業の安定を図ることを目的として定められた法律です。

障害者雇用促進法では、障害者の雇用の機会を保障するため、「障害者雇用率制度」を設け、企業に対して法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することを義務づけています。現在の民間企業の法定雇用率は2.0%とされており、企業は雇用する労働者の2.0%に相当する障害者を雇用することが義務づけられています。

また、障害者雇用促進法では、障害者の雇用に伴う経済的負担の調整や障害者の雇用の促進および継続を図るため、「障害者雇用納付金制度」を設けています。これにより、法定雇用率を満たさない企業から納付金を徴収し、その納付金をもとに雇用義務数より多く障害者を雇用する企業に対して調整金を支払ったり、障害者を雇用するために必要な施設等に助成したりしています。

障害者雇用促進法は、2013年に改正されました。そのうちの一部の内容について、2016年4月から施行されています。

 

2016年度改正での変更点

今回の障害者雇用促進法の改正では、新たに以下のような規定が定められました。各企業においては、これらの規定を遵守することが求められます。

雇用の分野における障害者に対する差別の禁止

募集・採用、賃金、配置、昇進など、雇用に関するあらゆる局面で、障害者であることを理由とする不当な差別的取扱いが禁止されることになりました。

例えば、障害者であることを理由として募集や採用の対象から排除することや、採用の基準を満たす人の中から障害者でない人を優先して採用することなどは、差別に該当するため禁止されます。

また、障害者であることを理由として賃金を引き下げる、研修を受けさせないようにする、食堂や休憩室の利用を認めない、などの差別的取扱いをすることも禁止されます。

なお、積極的差別是正措置として障害者を有利に取り扱うことなどは、障害者であることを理由とする差別には該当しないとされています。

 

合理的配慮の提供義務

企業は、合理的配慮として、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を提供する義務を負うことになりました。合理的配慮としては、以下のような措置が考えられます。

 

募集・採用時

・視覚障害者のため、点字や音声などで採用試験を行う

・聴覚障害者のため、筆談などで面接を行う

・肢体不自由者のため、面接の際にできるだけ移動が少なくて済むようにする

・知的・精神障害者のため、面接時に就労支援機関の職員等の同席を認める

 

採用後

・視覚障害者のため、拡大文字や音声ソフト等を活用する

・聴覚障害者のため、業務指示や連絡に際して筆談やメール等を利用する

・肢体不自由者のため、机の高さを調節するなど作業を可能にする工夫を行う

・知的障害者のため、図などを活用した業務マニュアルを作成する

・精神障害者のため、出退勤時刻や休暇・休憩に関し、通院や体調に配慮する

 

企業は、合理的配慮として、これらの措置を過重な負担にならない範囲で提供する義務を負うこととなります。なお、合理的配慮は障害者一人ひとりの状態や職場の状況などに応じて求められるものが異なります。具体的にどのような措置をとるかについては、障害者と企業がよく話し合ったうえで決めることが大切です。

 

相談体制の整備、苦情の自主的解決

企業は、相談窓口を設置するなど、障害者からの相談に適切に対応するために必要な体制を整備することが求められることとなりました。また、企業は、障害者に対する差別や合理的配慮の提供に関する事項について、障害者である労働者から苦情の申し出を受けたときは、その自主的な解決を図ることが努力義務となりました。

なお、自主的解決が図れない場合は、都道府県労働局長が当事者からの求めに応じて必要な助言や指導等を行うとともに、必要な場合は第三者による調停が行われることになります。

 

今後の見通し

今回の障害者雇用促進法改正では、法定雇用率の算定基礎の対象に新たに精神障害者を加えることも決定しており、この規定は2018年4月より施行されます。すなわち、2018年4月以降、算定基礎の対象への精神障害者の追加に伴って法定雇用率が上昇することとなります(ただし、施行後5年間は猶予期間として、計算式どおりに引き上げないことも可能となっています)。

今後は、企業において精神障害者の雇用も求められるようになるため、今のうちから必要な対策を講じておくことが望ましいといえるでしょう。

 

2020年度改正での変更点

事業主に対する給付制度 

2020年度の改正では事業主に対する給付制度が新設されました。短時間であれば就労可能な障害者等の雇用機会を確保するため、週20時間未満の雇用障害者数に応じて特例給付金が支給されます。ただし支給対象となる雇用障害者の所定労働時間は最低で10時間です。
また、支給額の単価は調整金・報奨金の4分の1程度とされています。

優良事業主としての認定制度

障害者の雇用の促進や安定に関する取り組みなどの優良な中小企業を認定する制度も新たに新設されました。認定事業主になるには、所定の基準項目を満たした上で都道府県労働局またはハローワークに申請をする必要があります。認定を受けることで得られるメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 障害者雇用優良中小企業認定マークを製品や広告に使用できる
  • 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークなどの周知広報の対象となる
  • 日本政策金融金庫の低利融資の対象となる
  • 公共調達などの加点評価を受けられる場合がある

 

まとめ

今回の障害者雇用促進法の改正で、企業には新たに義務が設けられることとなりました。法律の内容をしっかり押さえて対処することが重要です。

厚生労働省では、どのような事項が差別や合理的配慮に該当するかについて、指針や事例集で示していますので、確認してみるとよいでしょう。

また、厚生労働省では、企業の採用基準等が障害者を差別するものとなっていないか、各企業が自主点検をするための資料も公開しています。ぜひ一度、自社の取組を点検してみてください。

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