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産業競争力強化法改正によって何が変わる?

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公開日:2021.4.5

産業競争力強化法は日本の産業競争力を強化するために、産業活動における変革を後押しする法律で2021年2月に閣議決定されました。新型コロナウイルス感染症の影響や脱炭素化、急激な人口減少に対応する、成長の源泉となる4点の強化措置を盛り込んだ法改正が閣議決定されました。今回は産業競争力強化法の概要や本改正法の変更点、今後のM&A事情について解説します。

産業競争力強化法の概要

産業競争力強化法は、低迷が続く日本経済を再興するために、産業競争力の強化を目的として、2014年に施行された法律です。この法律が一部改正することになりました。改正法は2021年4月1日より施行される予定です。今回の法案改正のきっかけは、日本経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルス感染症の流行拡大です。このウイルスの性質上、流行は一過性のものではなく、今後も長きに渡るウイルスとの戦いが続くともいわれています。私たちは「ウィズコロナ」時代への適応が求められているといえるでしょう。経済社会においても、この危機から抜け出すためには、新たな日常に適した構造変化を目指さなくてはなりません。改正法では長期視点に立った企業の変革を後押しするため、さまざまな措置が強化されます。

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成長の源泉となる4点の強化措置

「グリーン社会」への転換

日本は、地球温暖化防止のための取り組みの中で、「2050年にはカーボンニュートラル、脱炭素化社会の実現を目指す」ことを目標にしています。改正産業競争力強化法においても、企業の環境保全の取り組みを支援する措置が強化されました。

  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
    脱炭素化効果が高い製品の生産設備や、脱炭素化を促進させる設備に対して、対象資産の取得価額の50%の特別償却と、取得価額の5%(温室効果ガスの削減に著しく資するものは10%)の税額控除の選択適用を受けることができます。
  • 金融支援
    CO2削減のための取り組みを進めるために必要な資金について、指定金融機関から融資を受ける場合、一定の目標を達成することを条件に金利を最大0.2%引き下げる成果連動型の利子補給を受けることができます。そのほかにも、財政投融資を原資として、低利の融資を受けることができます。

「デジタル化」への対応

企業のデジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を押し進めるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資促進税制が創設されました。クラウド技術を活用したハードおよびソフトのデジタル関連投資について取得価額の3%の税額控除が受けられます。この税額控除は、グループ外の他法人とデータ連携や共有が行われる水準の取り組みの場合は、5%が適用されるとしており、財政投融資を原資とした低利融資も受けられるので、企業のデジタル化への対応を後押しする制度となっています。

「新たな日常」に向けた事業再構築

コロナ禍の影響で赤字経営に陥った企業が、カーボンニュートラル・DX・事業再構築などへの施策を盛り込んだ、「新たな日常に向けた取り組みの計画」を策定し、その計画の内容が関連機関の適用水準を満たした場合に、以下のような支援を受けることができます。

  • 繰越欠損金の控除上限の特例
    2020年度もしくは2021年度の欠損金を繰り越す際、黒字転換から最長5年間に限り、現行の50%から最大100%に控除上限が引き上げられます。
  • 金融支援
    財政投融資を原資とした低利融資が受けることができます。

中小企業の足腰の強化

中小企業の事業基盤を強化し、海外市場での競争に勝ち抜くための措置が講じられています。関連法によるさまざまな支援施策の対象を拡大し、M&Aを通じた企業の強化を後押しするなど、事業継続力強化や取引適正化を推進することで、中小企業の足腰を固めます。コロナ禍により苦境に立たされる中小企業を支えるとともに、「ポストコロナ」を見据えた多様な支援が特徴です。

 

産業競争力強化法におけるM&Aの認定要件

産業競争⼒強化法では、産業競争⼒の強化に関する施策として、産業活動における新陳代謝の活性化を促進するための措置を講じています。⽣産性向上を⽬指す企業が、事業再編への取り組みについて再編計画を作成し、その計画が認定されれば、M&Aに対して税制優遇や⾦融⽀援などの措置を受けることができます。

事業再編計画

事業再編計画は、3年以内(⼤規模な設備投資を⾏うものに限り5年)に以下のような項目について計画を策定する必要があります。

  • 新商品の生産や販売を開始することのほか、生産・販売方法や、原料の調達方法の改善などの前向きな取り組みによって、それぞれ規定の水準以上の効果が⾒込まれること
  • 生産性の向上について、一定の水準を上回ること
  • 財務の健全性についての条件を満たすこと
  • 事業構造の変更について、以下のうちいずれかを行うこと
  1. 合併
  2. 会社の分割
  3. 株式交換・株式移転
  4. 事業または資産の譲受け・譲渡
  5. 出資の受入れ
  6. 他の会社の株式・持分の取得
  7. 会社の設立
  8. 有限責任事業組合に対する出資
  9. 施設・設備の相当程度の撤去

今回の改正では、事業構造の変更要件に「関係事業者(子会社など)による株式などの買い増し」が追加された点です。企業の収益⼒や資本効率などの改善が強く求められており、買い増しの重要性が高まっていることを背景に変更が加えられました。

特別事業再編計画

特別事業再編計画は、今回の改正で新設された制度です。株式対価M&A(自社株式を対価として他の会社を買収するM&A)により、新事業活動で新需要を開拓することと、それによって大きな生産性向上を実現できる計画が認定を受けられます。新事業活動として認められる事業には、以下のようなものがあります。

  • 著しい成⻑発展が⾒込まれる事業分野における事業活動
  • プラットフォームを提供する事業活動
  • 中核的事業へ経営資源を集中する事業活動

事業構造の変更の認定要件としては、ほかの会社の株式や持分の取得することで、以下の3点すべてを満たす必要があります。また、下記に加えて、事業再編計画の1〜9などを実施することも可能です。

  • 他の会社を関係事業者とすること
  • 対価として自社の株式のみを交付すること
  • 対価として交付する株式の価額が余剰資金の額を上回ること

 

今後のM&A事情

現行の会社法では、株式対価M&Aについては、対象会社を100%子会社化する場合でなければ利用できない点や、現物出資の手続が複雑でコストがかかる点がネックとなり、活用されていませんでした。そこで、事業再編の円滑化を促進することを目的として、新たに「株式交付制度」が創設(2021年3月1日施行)され、株式対価M&Aが会社法上の再編類型の1つとして位置付けられるようになりました。今後のM&Aは非上場企業に対する株式対価での買収がより促進され、日本企業の世界基準での競争力が向上していくことでしょう。

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まとめ

日本はバブル崩壊以降、低成長が続き、いわゆる「失われた 20 年」から脱出できないでいます。産業競争力強化法は、このように低迷を続ける日本経済を再興させるために制定されました。そして今、新型コロナウイルスという新たな問題が、日本の多くの企業の前に立ち塞がっています。この未曽有の事態を乗り越えるためには、古い経済社会システムから脱却し、構造変化を目指す必要があるでしょう。
今回の改正は、新しい時代への変革を目指そうという意図があり、未来に向けた先進的な取り組みや、新しい組織づくりを目指す企業への支援策が充実しています。これらの支援策をうまく利用し、企業の成長に繋げましょう。

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