【2023年4月解禁】給与のデジタル払いについて解説

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公開日:2023.4.7

給与のデジタル払いとは、企業が銀行口座ではなく、電子マネーやスマートフォンの決済アプリなどを利用して給与を振り込むことができる制度のことです。2023年4月には、このデジタル払いが解禁されることが決定しています。しかし、導入するためには条件があるため、自社が対象なのかを確認し、メリット・デメリットを理解したうえで導入すべきか検討しましょう。今回は、給与のデジタル払いに関しての概要、対象となる条件とメリット・デメリット、導入する際のポイントを解説します。

給与のデジタル払いが注目されている

給与のデジタル払いとは

給与のデジタル払いとは、企業が給与を銀行の口座を介さずに、スマートフォンの決済アプリや電子マネーに振り込める制度です。厚生労働省は2022年に労働政策審議会分科会において、電子マネーや決済アプリなどの資金移動業者への給与の支払いを可能とする省令改正案を承諾しました。2023年4月からは改正法が施行され、給与のデジタル払いが解禁されます。
給与の支払い方法については労働基準法に規定があり、原則として通貨により賃金全額を直接労働者に支払わなければならないと定められています。また、労働者の同意を得た場合には銀行など金融機関の口座への振込みが可能とされています。そして時代の流れとともに、2023年の改正法で認められた給与の支払方法が、電子マネーなどによるデジタル払いです。

給与のデジタル払いが解禁される背景

給与のデジタル払いが解禁される背景としては、キャッシュレス決済が普及したことがあげられます。日本では、キャッシュレス決済の比率を2025年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目標に設定しています。2021年のキャッシュレス決済比率は堅調に上昇しており、過去最高の32.5%を記録しました。しかし、世界各国のキャッシュレス決済比率と日本の現状を比較すると、まだまだギャップがあります。主要各国では40%~60%台となっているため、日本はこれからさらなるキャッシュレス決済の普及が見込まれるはずです。こうした日本の状況を後押しするために、給与のデジタル払いという方法が解禁されようとしています。

対象となる条件

給与のデジタル払いの対象となる資金移動業者には条件が設定されています。まずは資金決済法に基づき、金融庁に第二種資金移動業として登録している業者でなければなりません。第二種資金移動業については、1件あたりの送金が100万円以下に規制されています。さらに、厚生労働省から指定資金移動業者の指定も受ける必要があります。ほかにも、最後に口座残高が変動した日から少なくとも10年は口座残高が有効であることなど、細かい条件あるため詳しくは厚生労働省のWebサイトなどを良く確認しましょう。

   

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給与のデジタル払いのメリット・デメリット

メリット1:銀行口座がなくても給与支払いできる

給与のデジタル払いが可能になれば、銀行口座がなくても給与の支払いを行えるようになります。銀行口座の開設はハードルが高く、特に日本で増えている外国人労働者の方にとって大きな問題です。日本の外国人労働者の数は2022年には180万人を超えており、さまざまな職種で活躍しています。しかし外国人労働者が日本国内で銀行口座を開設することは、簡単ではありません。銀行口座の開設には日本に住所があることや、長期滞在ビザを持っていて日本での滞在期間が6ヶ月以上であることなど、さまざまな条件がネックになります。そこで、デジタル払いという給与の受取手段を増やせれば、外国人労働者が働きやすい環境を整えられます。

メリット2:従業員のニーズを満たせる

給与のデジタル払いという選択肢を増やすことで、従業員のニーズを満たすことができます。厚生労働省の調査で約40%の利用者がデジタル払いを「検討する」と回答しており、一定のニーズがあることが明確になりました。2022年6月時点でコード決済の月間アクティブユーザー数は約5,110万人おり、キャッシュレスによる会計は今後さらに広がっていくと推測されます。給与のデジタル払いを実現することで、キャッシュレス時代のニーズに応えられ、従業員の利便性も高まるでしょう。

メリット3:振込手数料を削減できる可能性がある

給与をデジタル払いにすることで、銀行振込手数料の削減というメリットも期待できるでしょう。現在、ほとんどの企業は給与を銀行振込で行っています。給与の振込では手数料が発生するため、従業員の人数により大きな負担になっているケースが少なくありません。一方、デジタル払いにおける資金移動業者のアカウントへの送金には、銀行振込ほど手数料がかからない傾向があります。

デメリット:運用に手間がかかる

給与のデジタル払いを実現させるうえで、運用の手間が増える可能性があります。理由としては、銀行振り込みとデジタル払いの二重運用を行うケースがあるためです。給与の一部をデジタル払いしてほしいというニーズがあっても、給与全額のデジタル払いを希望する従業員は少ないでしょう。デジタル払いへ完全移行する可能性は少なく、銀行口座とデジタル払いの二重化が進むことが予想されます。管理運用で取扱う情報も増えるため、企業としては運用面で手間が増えることを認識しておかなくてはなりません。

 

給与のデジタル払いの導入ポイント

就業規則を見直す必要がある

給与の支払方法に関するルールは、就業規則において必須とされる記載事項のひとつです。給与のデジタル払いを導入する際には、必ず就業規則で規定しなければなりません。給与のデジタル払いという項目を追記して、対象の労働者や対象となる賃金の範囲を明記しましょう。
また、実際の運用においては労使協定も締結する必要があります。労使協定の内容としては、対象となる労働者、賃金の範囲とその金額、取扱資金移動業者の範囲、実施開始時期などが想定されます。従業員が強制されることなく、自由意思で給与の受け取り方法を選択できるよう十分に配慮しましょう。

給与システムが対応可能か確かめる

現在使用している給与システムが、デジタル払いに対応可能か確認しましょう。例えば、クラウド型の給与システムについては、バージョンアップによる法改正対応が予想されます。アップデートの有無を確認して、内容に給与のデジタル払いが含まれることを確かめましょう。一方、自社で管理や運用を行うオンプレミス型の場合にはシステム改修などの対応が求められます。計画的な準備が必要なため、早めの対応を心がけましょう。

従業員情報を適切に収集・管理する

従業員情報を適切に収集・管理するための準備を進めましょう。給与のデジタル払い導入において、企業が新たに収集・管理が必要となる主な情報は以下のとおりです。

  • 希望する賃金の範囲
  • 資金移動業者名
  • アカウントID
  • 振込開始時期

なお、給与のデジタル払い導入以降は、多くの企業において銀行口座などへの振込みと併用による運営が考えられます。今まで以上に多くの個人情報を企業は保持することになり、より徹底した管理が求められますので注意が必要です。

 

まとめ

給与のデジタル払い解禁がきっかけとなり、日本ではさらなるキャッシュレス化が進んでいくことでしょう。企業ではデジタル払い導入に向けたシステム改修など、解決すべき課題も多数あります。しかし、給与のデジタル払いを実現できれば企業と従業員にとって、さまざまなメリットがあることも事実です。従業員のニーズを把握して、給与のデジタル払いの導入に向けた準備を進めてみてはいかがでしょうか。

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