長期休暇を取りやすく——サバティカル休暇のメリットとは

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公開日:2018.10.17

規定された期間以上継続して勤務した従業員に対し、最低1ヶ月の長期休暇を与える制度をサバティカル休暇制度といいます。サバティカル休暇では、休職とは異なり復帰後のポジションが保証されています。そのため、従業員は安心して長期休暇を取ることができ、ワークライフバランス向上へとつなげることが出来ます。今回は、サバティカル休暇導入のメリットと導入事例について紹介していきます。

サバティカル休暇とは

サバティカル休暇とは、使い方に制限が設けられていない長期休暇のことで、ヨーロッパ各国においては盛んに導入が進められている制度です。ただし、サバティカル休暇を認める日本企業のなかには、使い方に制限を設けたり、元々の職務と何らかの形で関係したことを行うよう義務づけたりする場合もあります。また、有給か無給かも企業によって異なります。サバティカル休暇と一口にいってもこのように実態は様々ですが、本記事ではさしあたり、最低1ヶ月の長期休暇を与える制度とします。

サバティカル休暇制度は多くの場合、規定された期間以上継続して勤務した従業員に適用されます。サバティカル休暇は長期の休暇となりますが、休職とは異なり、通常復帰後のポジションが保証されています。

 

経済産業省が導入を呼びかけ

2018年3月に出された「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)という有識者研究会の報告書において、経済産業省はサバティカル休暇の導入を企業に呼びかけています。その目的は労働者の学び直しを支援することです。このことは、社会人になってからの学び直しとしての教育であるリカレント教育の文脈で述べられており、柔軟な勤務時間や学費補助など、働きながら学べる環境づくりの必要性も同時に説かれています。

 

サバティカル休暇のメリット

従業員に休暇を取らせることができる

日本では従業員の有給休暇の消化率が極めて低いことが知られています。長期で休むことが出来、なおかつその後のポジションも保証するサバティカル休暇制度を設けることで、従業員がまとまった休みを取ることが見込まれます。休みを取ることによって従業員のワークライフバランスが向上し、結果として従業員の時間あたりの生産性が向上することも期待できます。その一方で、有給休暇をこれまで取らなかった従業員が長期休暇を取るようになるのかという点には不安が残るため、企業側が従業員に対して制度の内容と意義について説明を十分に重ねることが求められます。

企業の外の知見がもたらされる

サバティカル休暇によって、従業員は職務から離れて企業の外の世界をじっくり見られるので、これまで企業にはなかった外部の知見がもたらされる可能性が期待できます。企業の競争力を高めるためにイノベーションの必要性がしばしば叫ばれていますが、企業内のみのリソースを用いて議論を重ねているだけでは、イノベーションは簡単に生まれません。企業の外の視点を取り入れ、それを企業の中の視点と組み合わせることが重要です。

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サバティカル休暇の事例

MSDの場合

世界的な製薬・ワクチンメーカーであるMSDは、2016年からディスカバリー休暇という名称でサバティカル休暇を導入しています。これは勤続1年以上の従業員が取得可能な休暇で、年間最大40日まで取得可能です。一般的なサバティカル休暇とは異なり、例えば週休3日を長期的に続けるなどの形で長期休暇を分割する柔軟な休み方も可能となっています。この休暇の趣旨は、従業員各々の自律的なキャリア形成のもと個々の力を最大限に引き出し、企業の競争力を高めることです。この趣旨に合致していれば、理由を問わずディスカバリー休暇を取得することができます。

もともと試験導入だったものを2018年6月に本格導入しており、プレスリリースによれば、試験導入中には資格取得や大学院通学、海外ボランティア参加などで11名が利用したということです。

ヤフーの場合

検索ポータル大手のヤフー株式会社は、2013年にサバティカル休暇制度を導入しています。対象は勤続10年以上の正社員で、期間は最短2ヶ月間、最長3ヶ月間の休暇制度です。このサバティカル休暇は有給であることが特徴で、「休暇支援金」として基準給与1ヶ月分が支給されます。また、余っている有給休暇と合わせてサバティカル休暇を取ることも可能です。有給休暇とサバティカル休暇を同時に取ることで、「休暇支援金」だけではなく有給分の給与も受け取ることができます。

アトラエの場合

「Green」などを運営していることで知られる人材ベンチャーのアトラエは、「サバティカル3」という名称でサバティカル休暇制度を導入しています。勤続3年以上の全従業員及び役員が取得可能で、休暇の期間は1ヶ月です。3年ごとに1ヶ月の有給休暇を付与する形を取っており、有給のサバティカルとなっています。

アトラエはサバティカル休暇制度導入の目的について、従業員のエンゲージメント向上による生産性及び従業員の定着率の向上を狙ったものとしています。「エンゲージメント向上」という表現からもわかるように、従業員の能力を高めるというよりは、従業員の愛社心や働きがいを向上させることを目的にしたものといえます。そのため、利用方法も特に定めておらず、留学やインターンなど自身の知見を広めるものだけではなく、育児や介護など家族の時間を作る目的でもサバティカル休暇が取得できます。

 

まとめ

育児や介護など特定の理由にのみ長期休暇を認める企業は増えてきましたが、サバティカル休暇制度を導入している企業はまだまだ多くありません。しかしその効果は大きく、この記事で取り上げたようにいくつかの大手企業も導入しています。人手不足が深刻化する中で企業の魅力を上げ、さらに社内でのイノベーションを促進するためにも、サバティカル休暇制度の導入を検討してみるのはいかがでしょうか。

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