「プラスワン休暇」で年休の計画的取得を促進しましょう!

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公開日:2018.5.14

飛び石連休中の平日や、年末年始休暇や土日の前後などに年次有給休暇を取得することで連続休暇を「プラス1日」するプラスワン休暇が、厚生労働省により推進されています。プラスワン休暇は、従業員にとってワークライフバランスの向上に繋がるのみならず、企業にとっても年次有給休暇の計画的取得の促進や生産性の向上など、様々な利点があります。今回はプラスワン休暇の活用による効果や、実際の取得方式について解説します。

プラスワン休暇とは

有給休暇の取り組みと計画的付与制度

年次有給休暇の付与は、労働基準法によって定められている使用者の義務です。週労働日が5日以上の一般の労働者で、6ヶ月の間継続して勤務し、その期間の日数ベースで8割以上出勤した者に対して、使用者は最低10日の年次有給休暇を付与しなければなりません。しかし有給休暇が形式上付与されても、実際の職場での取得率が一向に上がらないという問題がありました。

そこで、有給休暇取得率を少しでも上げるため、1987年の労働基準法改正に際して年次有給休暇の計画的付与制度が定められました。この制度は、年次有給休暇の最低でも5日分の取得日は労働者が自分で決めるものとし、残りの分については使用者側が取得日を指定することができるというものです。

プラスワン休暇

今回厚生労働者が推進しているプラスワン休暇は、この年次有給休暇の計画的付与制度を用いて、通常よりも長い連休を確保すること呼びかけるキャンペーンです。労働者のワークライフバランスの調和促進のため、労働者と使用者が協調して土日・祝日と年次有給休暇を組み合わせて連休を実現させることが目指されます。

厚生労働省は1つの目安として、2~3日の休暇に年次有給休暇を1日付加する形での連休を実現させることを提案しています。例えば、祝日ではない月曜日に休めるように計画休暇を設定すれば、労働者は土日と合わせて3連休を取得することができます。土日に限らず、飛び石になっている休日の間の日を年次有給休暇とすることで、通常よりも長い休暇を確保することもできます。

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制度利用のメリット

経営戦略と休暇のバランス

プラスワン休暇や年次有給休暇の計画的付与制度を用いることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。まず直接的な効果として、労働者が周囲の目を気にせずに年次有給休暇を取得し休むことができるというメリットがあります。

年次有給休暇の計画的付与制度には職場で一斉に休むものと、ローテーションでそれぞれが定められたタイミングで休むものがありますが、いずれにせよそれは定められたものであり、労働者は自分で休みたいと周囲に伝える必要がなくなります。労働者はつい職場の空気が気になって、本来は自らの権利であるはずの有給休暇の取得をためらいがちですが、このように制度として取得日を定めれば労働者の休みやすさは格段と向上するでしょう。使用者の側としても、労働者の休暇が予め決まっているので、最初からそれを踏まえて事業計画を立てることができます。

働きやすい環境整備

こうした直接的効果は、思わぬ副次的効果をも生み出します。適度な休みを取ることで生産性の向上が期待され、また労働者が休みやすい環境を制度として整えることは、労働者の会社への満足度も向上させることができるでしょう。より長期的に考えても、「休みやすい会社」というイメージの形成は、ワークライフバランスがより重視されている近年の傾向を踏まえると、企業のパブリックイメージに対してプラスに働き、特に求職者に対して効果が出るでしょう。

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計画的付与制度の利用方法

計画的付与制度を利用できる日数の上限

計画的付与制度の概要については先にも触れましたが、ここで改めてその要件を詳しく見てみましょう。

計画的付与制度は、年次有給休暇を規定する労働基準法第39条において定められています。その第5項に、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる」と明記されています。

したがって、年次有給休暇のうち5日は労働者が計画休暇とは関係なく自由に取得できる有給休暇として残すことが必要です。逆にいえば、有給休暇から5日間を差し引いた残りの日数は計画的付与制度を利用することができます。年次有給休暇の日数が20日付与されている労働者は15日が計画的付与制度の対象とすることができます。

労働者と使用者の合意が必要

また、法令にあるように、制度の利用には労働者と使用者の合意が必要です。労働組合があるならば労働組合と話し合って、いつどのように誰が休むのかを決定することになります。

労使協定締結後には、就業規則にその旨を定めておく必要があります。この決定は労使協定として両者を拘束するので、計画的付与制度によって付与された年休については、使用者が一方的に変更することはできません。労働者もその休暇日には休まなければならず、その定められた日の代わりに別の日に年休を取得することは特段の事情がない限り認められないと考えられます。

付与の仕方にも様々なものがある

計画的付与だからと言って、全社員が同じ日に休む必要はありません。企業や事業場の全員が一斉に休業する方式の他にも、より部署などのより小さなグループごとの交替制付与方式も選択肢の1つです。前者は製造業など一斉に仕事を止めた方が効率的な業種、後者は流通業やサービス業など、全体休業日を増やすことが難しい業種に適しています。

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まとめ

飛び石連休中の平日や、年末年始休暇や土日の前後などに年次有給休暇を取得することで、連続休暇を「プラス1日」するプラスワン休暇。厚生労働省は年次有給休暇の計画的付与制度の利用をもっと進めるためにこのプラスワン休暇を推奨しています。プラスワン休暇や年次有給休暇の計画的付与制度は、ワークライフバランスの向上に繋がるだけではなく、企業にとっても多くのメリットがあります。ただし使用者が一方的に決められるものではないということには注意が必要で、労働者側とよく話し合い、双方のニーズに適した制度を導入することが求められていると言えるでしょう。

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