赤字でも税金の支払いは必要? 法人税の繰戻し還付について解説

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公開日:2018.11.26

会計上で赤字が発生した場合、その赤字額を欠損金として処理します。赤字を出した前年が黒字であった場合、前年に支払った税金の還付を繰戻して受けられる制度が存在します。今回は、法人税の還付について対象となる要件や仕訳の方法を解説していきます。

繰戻し還付とは

法人税の繰戻し還付は、赤字を出した企業のための補助制度です。青色申告の確定申告書を提出した事業年度に欠損金、つまり赤字が出た場合、その欠損金額をその事業年度が開始する日以前の1年以内に開始した事業年度に繰り戻して、法人税額分の還付を請求することができます。国税庁の規定によると、この還付の対象は「青色申告書を提出する」もしくは「災害損失欠損金を有する」企業とされていますが、現在のところ1992年4月1日から2020年3月31日までに終了する事業年度については、災害損失欠損金の場合を除き、解散等による欠損金と中小企業者等の欠損金のみに適用が認められています。一般的に利用されることが多いのは後者ですが、後述するように、受け取るには条件が存在します。

災害損失欠損金についての還付

災害が発生した日から1年以内に終了する事業年度、もしくは6ヵ月以内までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額がある場合、その事業年度もしくは中間期間が開始する日以前の1年(青色申告の場合は2年)以内に開始した事業年度のどれかについての法人税額を、災害損失欠損金額に対応する分だけ還付として請求することができます。

解散等による欠損金についての還付

適格合併を除く解散、全事業の譲渡、更生手続の開始等があった場合、それらのあった日以前の1年以内に終了した事業年度、もしくはそれらのあった事業年度についての欠損金額についても、法人税の還付が申請できます。

請求できる額

欠損金が発生した事業年度を欠損事業年度、還付金の元となる所得税が課税された過去の黒字の事業年度を還付所得事業年度とすると、繰戻し還付金の値は以下の式で求められます。

還付所得事業年度の法人税の金額×欠損事業年度の欠損金額÷還付所得事業年度に所得金額

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申請できる条件

災害損失欠損金でも解散等の欠損金でもない場合

2020年3月31日までは還付の対象とされる中小企業とは、具体的には、資本金が1億円以下の企業を指します。なお、資本金が5億円以上の親会社の100%子会社等である場合には、還付金の対象から除外されます。この条件下で、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までのすべての事業年度について、継続して青色申告の確定申告書を提出していること
  • 欠損事業年度の青色申告の確定申告書を提出期限までに提出すること
  • この確定申告書に添えて、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること

災害損失欠損金を申請する場合

以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までのすべての事業年度について、継続して青色申告の確定申告書を提出していること
  • 欠損事業年度の青色申告の確定申告書、または仮決算での中間申告書を提出期限までに提出すること
  • この確定申告書または仮決算による中間申告書に添えて、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること

解散等の欠損金の場合

以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までのすべての事業年度について、継続して青色申告の確定申告書を提出すること
  • 還付請求書を解散等があった日から1年以内に提出すること

 

仕訳の方法

還付金について

この法人税の還付の制度に限らず、国税が還付される場合には、納税した総額に利息に当たる金額が加算された合計額分を受け取ることができます。この利息に当たる部分を還付加算金と言い、利率は毎年変動しています。なお還付加算金の計算方法は、以下の通りです。

還付金額×利率×起算日から支払い決定日までの日数÷365

会計の処理

還付金は勘定科目では雑収入となり、益金ではないため法人税や消費税等はかかりません。しかし還付加算金は同じ雑収入ですが益金として扱われ、確定申告が必要になる他、次年度の法人税の対象ともなります。したがって、会計上で還付金と還付加算金を一緒に処理すると税額などの計算に支障が生じる可能性があるため、還付の際には同時に振り込まれてしまう場合が多いですが、きちんと別々に処理する必要があります。記帳するときは、借方に普通預金等、還付金と還付加算金の総計、貸方には、雑収入、還付金額、続けて、雑収入、還付加算金額と分けて記載します。

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まとめ

知っている人だけが得する制度や補助金は多くありますが、この法人税の還付もその類と言えるでしょう。黒字ならば影響がなく、欠損金が出たときのみ返却されるのですから、利用しない手はありません。会計や法人税の対応が少々増えるとは言え、プラスの方が大きいですから、いつ赤字が出ても対応できるよう、これを機に詳細まで押さえておきましょう。

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