人事・労務担当者が知っておきたい外国人材受入れのポイント

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公開日:2019.5.10

コンビニで働く外国人材をよく目にするのではないでしょうか。現在、日本では多くの外国人材が様々な現場で活躍しており、日常生活のごく当たり前の光景になっています。2019年4月に施行された「改正入管法」によって、日本で活躍する外国人材の受入れが大きな転換点を迎えています。

この「外国人材受入れ」について、全3回にわたって、ご説明したいと思います。第一回の今回は、「改正入管法とは何か?」「企業等にどのような影響が出るのか」「外国人材の受入れを検討する際にどのような観点で準備をする必要があるのか」について、解説します。

改正入管法で何が変わる?

2019年4月から改正入管法が施行されました。メディアでもたびたび取り上げられていますが、「そもそも改正入管法で何が変わるのか」説明できますか?また、自社には、関係ないと思っていませんか?

 そもそも改正入管法のもととなる入管法の正式名称は、「出入国管理及び難民認定法」です。先ほどからたびたび出ている改正入管法は、「出入国管理及び難民認定法」の改正法ということになります。 

では、改正入管法の目的は何でしょうか。今回の改正についてはその目的の一つに「人手不足の解消」があることは間違いありません。日本ではこれまで専門的・技術的分野と呼ばれる分野に限って外国人材を受け入れてきました。こういった専門的・技術的分野の在留資格で日本に入国する外国人材は、いわゆるホワイトカラーの高度人材と呼ばれる人たちです。

もちろんそういった人材も不足しているのですが、今回の改正入管法で新設された「特定技能」という在留資格は、これと異なり、産業の現場を支える外国人材のための在留資格です。例えば、建設分野であれば、2023年までに21万人の人手不足が見込まれています。建設業のように重要なインフラにもかかわらず、担い手が足りないという状況を解消する一つの方法として、外国人材の受入れが可能となりました。より具体的には、産業の現場を支える外国人材を「特定技能」という在留資格で受け入れることができるようになりました。

在留資格とは、日本にとどまり、活動することができる資格です。例えば、留学生は、「留学」という在留資格で日本に来られています。外国人材は、この在留資格で決められた活動を行うために日本に入国し在留することができ、原則として在留資格で認められた就労活動以外の就労活動を行うことができません。2019年3月まで、在留資格は、28種類ありましたが、今回の改正で「特定技能」が開始され、29種類となりました。2019年4月時点で、「特定技能」として認められる業種は、介護・ビルクリーニング・素形材産業・産業機械製造・電気・電子情報関連産業・建設・造船・航用工業・自動車整備・航空・宿泊・農業・漁業・飲食料品製造・外食の14業種です。

これらの業種の中でもすべての職種作業の受入れができるわけではなく、職種作業によって受入れができるものとできないものあります。 「改正入管法対応外国人材受入れガイドブック」に詳細を掲載しています。

特定技能と技能実習について

ところで、「特定技能」と同じような言葉で「技能実習」という言葉を聞いたことがないでしょうか。「特定技能」とは働くことを目的とした在留資格であるといえます。他方で、「技能実習」は、人材育成を主目的として受入れ、習得した技術や知識を母国に持ち帰ってもらう「国際協力」の一環の制度です。技能実習法3条1項には、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」との規定もあります。

外国人材については日本人と異なり在留資格制度によって行い得る活動が決まっています。つまり、外国人材を受け入れるにあたっては、当該外国人材の在留資格が何か、例えば、「特定技能」なのか「技能実習」なのか「留学」なのかを正確に把握することが重要となります。例えば、「特定技能」のうち建設業種で受け入れている外国人材が外食の業種で働いた場合は、在留資格外の活動となるため、違法行為となり得ます。

このことから、外国人材を受け入れるにあたっては、労働法のような通常日本人の雇用の際に気を付けなければならない点に加え、入管法という別の観点でも留意が必要となります。

外国人材の受入れは、組織の多様性を高め、成長・飛躍の原動力となります。組織の成長につながる外国人材を受け入れるには、法令を遵守するというコンプライアンス体制の構築が必要となります。また、外国人材の受入れにあたって、就業規則や人事・研修制度についてデューデリジェンスを行い、外国人材の受入体制を構築することが求められます。 次回は、より具体的に、企業が外国人材を受け入れるにあたって、留意するべきポイントを分かりやすく解説します。

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