傷病手当金とは? 病気や怪我による休業で受給できます

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公開日:2018.3.27

健康保険の被保険者が怪我や病気で休業して充分な報酬を受けられない場合、傷病手当金を受給することができます。需給のためにはいくつかの要件を満たす必要があり、健康保険傷病手当金支給申請書の提出が必須となります。今回はそんな傷病手当金について、受給の要件や期間など、押さえておくべきポイントを詳しく解説します。

傷病手当金とは

傷病手当金とは、健康保険に属し、保険を受ける者が病気等の利用で休業せざるを得ない場合に、本人とその家族の生活を一定期間保障する制度です。休業中の被保険者が事業主から充分な給与を受けていないなど、いくつかの条件の下で支給されます。受給するためには、全国健康保険協会のウェブサイト等から入手できる健康保険傷病手当金支給申請書を提出する必要があります。

健康保険傷病手当金支給申請書

手書き用、入力用共に利用可能であり、他にも状況に応じ複数の添付書類が求められます。
必須となる書類は療養担当者の意見書、事業主の証明であり、初回申請時には出勤簿や賃金台帳のコピーも提出します。
また、初回申請時もしくは申請内容に変更が生じた場合には、年金証書のコピー、年金額改定通知書のコピー、休業補償給付支給決定通知書のコピーも必要となり、更にこれに加えて、申請理由が外傷の場合には負傷原因届、保険を受けていた者が死亡した際には(除籍)戸籍謄本または戸籍抄本の提出が義務とされています。

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支給に必要な条件と支給期間、支給額

必要な条件

給付を受けるためには、以下の条件全てに該当していなければなりません。

  • 業務外の病気や怪我の療養を理由とする休業である
    傷病手当金が申請できる休業は、健康保険が給付される療養、自費で受けた診療、自宅療養期間において、仕事の続行が不可能な旨の証明があるものに限られます。ただし業務上の傷病か通勤中の災害が理由である場合、美容整形など傷病ではないものが理由となる場合は給付対象外となります。なお、前者は労災保険の対象です。
  • 仕事の続行が不可能である
    この判定は、医師等の療養担当者の意見や、保険を受ける者の仕事内容を加味した上で判断がなされます。
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事が続行できなかった
    業務外の病気や怪我を理由として休業した日から、連続して3日間(この期間を待期3日間と呼びます)が経過してなお、4日目以降にも仕事の続行が不可能な日があった場合、その4日目より後の休業日に対して支給が開始されます。待期3日間には有給休暇や土日、祝日等の休日も含まれ、3日間の給与支払いの有無は手当支給と無関係です。なお、就労中での業務外の傷病の場合は、その当日が待期の初日になります。一度待期3日間が成立すれば、出勤日がその後どこかで挟まれても休業日についての支給が停止されるわけではありません。
  • 休業中に給与支払いが無い
    ただし例外として、給与の支払い額が手当金の額より低い場合にはその差額が給付されます。

支給期間

傷病手当については、支給を開始した日から最長1年6ヵ月が支給期間とされます。この期間中に新たな傷病が元の傷病と因果関係無く発生した場合は、新たな傷病手当の為に新たに1年6ヵ月の支給期間が開始されます。ただし、支給開始日後にある一定期間出勤した場合でも、その期間は手当が支給されないまま期間のみ加算されます。また期間が1年6ヵ月を超えた場合も、受給の資格が失われ支給は停止します。

傷病手当の受給中、もしくは受給できる状態である最中に退職する場合、退職日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あれば、退職後も引続き支給を受けることができます。ただし退職後、支給期間中に新たに就職した際には受給は停止します。

なお、過去の傷病について遡及的に支給を申請できる期間は2年となっています。

支給額

基本的には、支給開始日以前での継続した12ヵ月間の各月の標準月額給与を平均した金額を30(日)で割り、更に2/3倍した値が、1日当たりの支給額となります。この際、標準月給額には残業手当や通勤手当も含まれます。なお雇用期間が12ヵ月を下回る場合には異なる算出方法がとられ、「支給開始日以前で継続した各月の標準月額給与の平均した金額」と28万円を比較して、より低い方の金額が適用されます。

 

ケース毎にみる支給の有無

障害厚生年金または障害手当金を受給している場合

障害厚生年金とは、障害が中程度に重い場合に企業勤めの者に支給されるものです。障害手当金はこれに該当しない軽度の障害について、その治療が終了した際に厚生年金から支給される一時金を指します。原則として、同じ傷病に対してこれらと傷病手当金の同時受給はできないため、この障害厚生年金を受けることになったとき、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の支給額の1/360が傷病手当金の日当たりの支給額よりも低い場合は、その差額が支給されます。また、傷病手当金の支給合計額が傷害手当金の額を上回った日以降は、傷病手当金の受給を開始することができます。

老齢(退職)年金を受給している場合

退職後に傷病手当金の継続給付を申請している際、老齢(退職)年金を受給している場合は傷病手当金を受けとることができません。ただし老齢(退職)年金の1/360が傷病手当金の日当たりの支給額に満たない時はその差額が支給されます。

労働災害保険から休業補償給付を受けている場合

休業補償給付とは、就業中の傷病で出勤できなくなった場合に支給され、受給の条件は、業務に起因する負傷または疾病によって療養していること、その療養のために仕事の続行ができないこと、賃金を受けていないことです。休業補償給付期間中に業務外の新たな怪我や病気を負っても、休業補償給付が適用されている間は傷病手当金を受給できません。ただし、休業補償給付の1日当たりの支給額が傷病手当金の1日当たりの支給額を下回る場合は、その差額が支給されます。

出産手当金を受給している場合

出産手当金は、出産のための休業期間中に給与が支払われなかった場合に、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で休業した期間に支給されます。こちらも原則として傷病手当金と同時に受けとることはできませんが、平成28年4月月以降は、傷病手当金の額が出産手当金を上回る場合には、その差額を受給できるようになりました。

新型コロナウイルスに感染した場合

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、傷病手当金の対象要件が部分的に拡大されました。これにより、国民健康保険の加入者で給与の支払いを受けている被保険者は、新型コロナウイルスに罹患して就労が困難になった場合に限り、傷病手当金が受け取れるようになりました。
従来の傷病手当金は健康保険組合や共済組合などの被用者保険の加入者にのみ法律で規定されていましたが、この制度改正により国民健康保険の加入者にまで一部対象が広がっており、注目を集めています。

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まとめ

労働者の生活を保障するため傷病手当金は、怪我と病気の双方に適用できる手厚い制度だと言えます。条件さえ満たせば比較的受給しやすいこの制度を知らずに、利用する機会を逃してしまうのはもったいないので、万が一の時に備えて覚えておきましょう。

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