勤務間インターバル制度が努力義務に! 導入は進んでいますか?

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公開日:2019.3.20 最終更新日:2024.3.15

働き方改革関連法の施行に伴って、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法が改正されました。2019年の改正では、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保する、勤務間インターバル制度の努力義務が法に追加されています。さらに、2020年までの勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標が政府により定められており、制度のより積極的な導入が求められました。今回は、勤務間インターバル制度の概要と2019年の法改正の内容、政府が定める数値目標について解説していきます。

勤務間インターバル制度の概要

「インターバル」は、間隔という意味の英単語です。「勤務間インターバル」制度とはその名称の通り、勤務と勤務の間に一定の間隔を設けなければ新たな勤務に入れないという制度を指します。この制度を導入した企業は、1日の勤務を終了した労働者に、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を取らせなければなりません。このインターバルによって、労働者の生活時間や睡眠時間を確保しようとするのが本制度の目的です。

十分な勤務間インターバルを確保するには、いくつかの方法があります。例えば、ある時刻以降の残業を禁止して、翌日の始業時刻までは勤務を認めないことで、強制的に勤務間インターバルを確保することができます。他にも、残業した分だけ次の日の始業時間を繰り下げるという方法もあります。また、実質的には上記の方法と変わりませんが、規定よりも残業した時間の分だけ次の日の朝働いたとみなす制度を導入することも可能です。

    

働き方改革関連法の改正の内容

働き方改革関連法の施行に伴い、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」という法律が改正されました。この改正ではまず、法規制の対象となる「労働時間等の設定」の定義に「深夜業の回数」「終業から始業までの時間」が追加されました。これにより、労働時間だけではなく、いつ働くかについても法律で触れられることになりました。さらに、事業主の責務として、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保すること、すなわち勤務間インターバルの確保に努めなければならないことが明言されています。

勤務間インターバルは義務化も検討されましたが、結局は努力義務に落ち着きました。努力義務は義務ではないので、企業は勤務間インターバル制度を導入しなくとも法的な責任を問われることはなく、勤務間インターバル制度については法改正前との決定的な違いが起こるとは必ずしも言いきれないでしょう。

     

政府が定める数値目標

相次ぐ過労死を受けて、厚生労働省では「過労死等防止対策推進協議会」が開催されてきました。その結果、2021年7月には「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が閣議決定されています。この変更において、勤務間インターバル制度の周知や、政府として初めての勤務間インターバル制度導入についての数値目標が設定されました。具体的には、以下のような数値が定められています。

  • 2025年までに、労働者数30人以上の企業のうち、制度を知らなかった企業割合を5 %未満とする。
  • 2025年までに、労働者数30人以上の企業のうち、制度を導入している企業割合を15%以上とする。

その他、2021年7月の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更では、勤務間インターバル制度を推進するための取り組みについても記載されています。

      

勤務間インターバル制度導入に関する助成金

中小企業における勤務間インターバル制度の導入を後押しするために、時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)という助成金が用意されています。対象となる企業の出資額や雇用者数には規定がありますが、勤務間インターバルを導入していない事業場であってもすでに部分的に導入している企業であっても、目標設定によって利用可能な助成金です。すでに終了した2018年度の募集では、支給対象となる取組は以下の通りでした。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • テレワーク用通信機器の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

助成金を実際に受けるには、勤務間インターバル制度についての成果目標を設定し、その目標を達成することが必要です。例えば新規導入の場合、事業場に所属する労働者の半数を超える労働者をインターバル制度の対象にした上で、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を就業規則などに定め、実際に実行することが必要です。なお、この助成金は単に就業規則などで、ある時間以降の残業の禁止とある時間以前の始業の禁止を定めることについては対象にしていません。

来年度以降も助成金の募集が出る可能性は高いので、こまめに厚生労働省のホームページを確認することをお勧めします。

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まとめ

勤務間インターバル制度はあくまで努力義務であり、その導入の是非は各企業に委ねられています。しかし、今後インセンティブとして関連の助成金がさらに充実していくことも考えられるので、積極的な導入を検討してみましょう。

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