原体験は「ネクターの売れ残り」。戦略総務が求められる時代に。社長インタビューVol.3~株式会社ゼロイン~

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公開日:2016.4.14

「総務は経営の参謀役となり得る存在」。そう語るのは、今回ご登場いただく株式会社ゼロインの代表・大條充能氏(以下、大條)です。日常業務の遂行がミッションだと思われがちな総務というポジションでも、経営の方向性を意識することで企業発展のエンジンになれるというのが氏の持論。

前職のリクルート社時代、大條氏は総務担当として社員総会など全社員のモチベーションアップに対する盛り上げ施策を考え続け、「お祭り男」として知らない社員はいないほどの存在だったそうです。

現在は総務業務のコンサルティング事業、ビジネスプロセスアウトソーシング(以下、BPO)事業の陣頭指揮に立つ大條氏に、これからの時代に企業の中核を成す「戦略総務」のあり方についてお聞きしました。

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株式会社ゼロイン 代表取締役会長兼社長兼CEO 大條 充能(だいじょうみつよし)氏

自ら「本来の目的」を見いだし、その目的から自分を変える

――1984年に株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に入社されて総務に配属されたそうですが、総務という領域に対する考え方はどのようなものだったのでしょうか。

大條:私が入社した当時のリクルートは、創業者の江副(浩正)の方針から社内の一体感を非常に大切にしていて、その一体感が自社の業績を支えているんだという企業風土がありました。社内コミュニケーションを活性化する取り組みも盛んで、社内イベントやレジャー企画、そして社員総会での表彰式なども活発に行われました。

その中心となったのが総務や広報、人事といった間接部門で、人員配置や設備投資も積極的に行われていました。私はその環境の中で、総務という役割が社員1人ひとりを元気にし、その結果が企業の業績につなげることができるという意識を持つようになったんです。今でいう「戦略総務」のような位置づけでした。

――当時、総務として、具体的にはどのような仕事を担当されていたのですか?

大條:最初は、社内の飲料類自動販売機の管理。先輩から引き継ぎを受けたのは、伝票をチェックして報告する業務でした。でも、そのルーティンに「本当にこれだけでいいのか?」と疑問を持ったんです。そこで、「社員が飲みたいものを飲めることで次の仕事を頑張れる」「それが顧客や自社の利益につながる」、という自分なりの仮説を設定しました。「売り切れの撲滅」を目標にした管理をはじめたんです。

気付いたのは、当時ウーロン茶がすぐに売り切れて、果物のネクターは売れ残っているということ。誰もが知るあのジュースも、外回りから汗をかいて帰ってきた営業が飲むものではなかったようです。そこで、果物のネクターのレーンを減らしてウーロン茶を増やし、売り切れがなくなるようにしました。この結果は社内から驚きの声が上がるほどで、ちょっとしたことが社員の元気につながるんだということを実感しました。

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社員寮の管理という仕事も、結果として大きな手ごたえがありました。従来の寮の管理業務は、設備の修繕依頼を受け付け、対処することが主だったのですが、私は業務の目的について考えました。1980年代当時、リクルート社は大量採用の時代でしたので、住み心地のいい寮があれば、「こんな会社に入りたい」と思わせる要因にもなります。

そこで、共同浴場・共同トイレの寮から、部屋にバス・トイレがあるワンルームタイプにリフォームしたところ、それが学生の人気を集めました。総務という立場から、「採用成功」という経営の方向性を見据えた「目的のある仕事」、つまり戦略的な総務業務の重要性を認識した瞬間です。

業務の数値化・可視化を果たした総務は、さらに上のレイヤーを目指す

――経営に直結した戦略総務の重要性を認識し、業務コンサルティングやBPOを担うゼロインを立ち上げられたわけですが、御社の事業について教えてください。

大條:「総務を通じて会社を元気にしたい」という私の持つ思いと、世の中で考えられている総務にギャップがあるということがきっかけとなり、当社の設立を思い立ちました。当社では、業務の可視化をスタート地点として、業務の最適化や人員配置をご提案しています。

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例えば、当社が日常業務を担うことで顧客企業の総務人員に、より重要な戦略業務に専念してもらうなど、経営課題の視点から総務コンサルティングを提供しています。

総務の業務は属人的になりブラックボックス化しがちです。これを可視化することで不要な業務を削減し、より上位レイヤーの経営課題に人員を割り当てることができます。それが企業全体のパワーにもつながっていくと、私たちは考えています。

――コスト削減という形で表れはするものの、総務の取り組みは成果を数値化しづらい部分もあるかと思いますが、そのことに対してはどのように考えていますか?

大條:これまでの経験から、企業規模や業務内容、業務時間などのデータを解析することで、総務の安定運用に関する数値化が可能になりました。ただ、今後の総務は、コストダウンの結果という数値や、業務最適化による可視化に加えて、さらに上流の経営課題に直結する成果が求められるでしょう。

例えば、2020年まで人員調達の難航が予想される中で、社員のモチベーションアップによる離職防止は経営インパクトがあります。総務の仕事が売上に直結する場面もあるでしょう。総務が経営に対して働きかける役割が大きくなり、戦略性で評価されてほしいと思っています。

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経営に直結するやりがいある仕事「戦略総務」

――今後の総務フィールドで活躍するためには、どのようなことが大切ですか?

大條:総務の仕事は、日常業務、管理業務、戦略業務の3つに分類できます。一般的には日常業務と管理業務の比重が大きいかと思います。でも、これからの総務はより経営課題に近づいた「戦略業務」を担うべきだと私は思っています。社内コミュニケーションの中心となって企業を支えるんだという気持ち、そして経営にも積極的にモノを申すという気概を持って、仕事に取り組んでほしいと思います。

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その際に必要なのは、経営の方向性をしっかりと理解した上で、目的を持って仕事に取り組むこと。そして、経営課題に対して自分に何ができるのか、何を目標にするのかということを、常に考え続けることだと思います。

同時に、自分の業務改善を積極的に行いながら、より戦略的な仕事を担えるように変化させることも大切。その変化が経営の方向性に同調することで、戦略的な総務に近づけるはずです。これからの総務を担う方々には、変化を楽しみ、プライドを持って提案する総務を目指してほしいですね。

  • 会社名 :株式会社ゼロイン
  • 設立   :1998年2月2日(創業:1996年9月30日)
  • 事業内容:従業員の主体的なアクション創出・最大化支援、オフィス構築支援、オフィス運営支援
  • 所在地  :〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル4階

ライター後記お話の中で印象に残ったのは、「総務も営業も同じ。大いなるルーティンワークをこなしながら、成果を出すためにはやり方を変えるしかない」という言葉でした。総務領域でのキャリアアップに関しては、自身の仕事を俯瞰(ふかん)しながら振り返り、改善を繰り返すことで実現するはずとのこと。総務も営業も、創意工夫と変化によって結果を出す仕事です。あとは企業側が、総務の取り組みや成果をいかに評価するか。それが社員のモチベーションを左右し、より戦略的な仕事への意識を向上させるカギなのかもしれません

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