バーチャル総会とは?開催方法や注意点を解説します

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公開日:2022.8.9

コロナ禍によりバーチャルで行う業務が増加していますが、株主総会もバーチャルで行うことが可能です。またバーチャルで参加する株主と総会の開催地に足を運ぶ株主どちらも「出席」とみなすことができる「ハイブリッド型バーチャル総会」という開催形式もあります。今回はそれぞれのバーチャル総会の開催方法、必要となる手続き、メリット・デメリット、開催の注意点を解説します。

バーチャル総会を導入する企業が増えている

バーチャル総会とは

バーチャル総会とはオンラインで開催される株主総会のことで、企業は専用のサイトなどを通じて株主総会を配信します。株主は会場を訪れる必要がなく、遠隔地で傍聴や質問などを行える点が特徴です。バーチャル総会の分類は大きく分けて以下の通りです。

  • ハイブリッド型バーチャル株主総会
  • バーチャルオンリー株主総会

ハイブリッド型バーチャル株主総会は、リアルの株主総会とバーチャル総会を並行して開催する方法です。一方、バーチャルオンリー株主総会はリアルでの株主総会を行わずに、バーチャルのみで株主総会を開催します。

バーチャル総会のメリット

バーチャル総会を導入すると、さまざまなメリットがあります。主なメリットは以下の通りです。

  • 参加方法の多様化を実現できる
  • 新型コロナウイルスの感染症対策になる
  • 株主重視の姿勢をアピールできる
  • 透明性が向上する
  • 遠方の株主でも参加できる
  • 複数の株主総会の傍聴が容易になる

バーチャル総会は株主の利便性が向上するだけでなく、新型コロナウイルスの感染症対策としても有効なため近年注目を集めています。

バーチャル総会のデメリット

一方、バーチャル総会にはデメリットも存在します。主なデメリットは以下の通りです。

  • 環境整備に手間がかかる
  • 株主にもインターネットなどの準備が必要になる
  • 肖像権への配慮が求められる

バーチャル総会を開催するには安定した通信環境の整備だけでなく、セキュリティ対策も万全にしなければなりません。準備には相応の手間がかかることを認識しておきましょう。

   

バーチャル総会開催のステップ

事前の手続きを実施する

バーチャル総会の実施には、法務大臣および経済産業大臣の確認を受ける必要があります。必要な手続きの流れは以下の通りです。

  1. 法務省経済産業省に事前相談を行う
  2. 所定の申請書と添付書類を準備する
  3. 郵送およびメールで正式申請を行う
  4. 書類審査が実施される
  5. 確認が取れたら確認書が交付される

なお、申請から確認書の交付までは1ヶ月程度の時間がかかるため、ゆとりを持った行動を心がけましょう。

招集事項を決定する

続いて、バーチャル総会の開催に向けて、取締役会が招集事項を決定します。検討が必要な招集事項は以下の通りです。

  • 株主総会の日時
  • 株主総会の場所を定めずに開催する旨
  • 株主総会の目的事項があるときは、当該事項
  • 株主総会に出席しない株主に書面による議決権行使を認める旨
  • 株主総会に出席しない株主に電磁的方法による議決権行使を認める際は、その旨
  • 通信の方法
  • 事前の議決権行使における効力の取扱い
  • 法務省令で定める事項

株主総会の場所を定めずに開催することや通信方法など、バーチャル総会ならではの招集事項を考えなくてはなりません。バーチャル総会をスムーズに開催するためにも、招集事項の内容を良く考えて決めましょう。

招集通知などを発送する

招集事項を決定したら、株主に招集通知を発送しましょう。招集通知には取締役会が決定した招集事項の記載が必要です。加えて、バーチャル総会を開催する場合に、招集事項に追加して通知が求められる項目は以下の通りです。

  • 議事に関する情報の送受信に必要な事項(URL・ログインID・パスワードなど)
  • 通信障害に関する対策の方針概要
  • インターネットの使用に支障のある株主について、その利益確保の配慮に向けた方針概要

招集通知の発送の期限は、公開会社の場合は開催日の2週間前までと定められています。非公開会社の場合は、開催日の1週間前までに完了しなければなりません。ただし、株主総会に出席できない株主の書面議決または電磁的方法での議決を定めた場合は、非公開会社であっても期限は2週間前までです。株主が多くいる企業の場合には負担も大きくなるため、計画的に招集通知の発送を行うようにしましょう。

バーチャル総会の準備をする

リアルで開催する株主総会の用意に加えて、バーチャル総会で特に必要となる準備は以下の通りです。

  • ライブ配信に必要な機器(カメラ・マイク・PCなど)
  • 本人確認の認証システム
  • 質問・動議や議決権行使ができるツール

機器やツールを選定できたら、事前にリハーサルを実施して慣れておくなどの取り組みが大切です。また、準備段階だけではなく配信中や配信後の運用も考えて、機材とシステムについて詳しい知識を持つスタッフも配備しなければなりません。バーチャル総会当日にスムーズな進行を行うためにも、しっかりと準備を進めましょう。

バーチャル総会を実施する

バーチャル総会当日はリアル会場での設営やリハーサルと並行して、配信する映像のテストを行いましょう。テストをパスできたら、事前に決めておいたタイミングで実際の映像配信をスタートさせます。また、本人確認に関連する質問や、視聴環境の技術的な問い合わせの発生も想定されます。こうしたトラブルに対処するためには専用のコールセンターの設置について検討が必要です。バーチャル総会の進行は議長が担当し、招集通知に記載している目的事項の審議と決議を行いましょう。議事録の作成と保存も忘れずに行ってください。

    

バーチャル総会を開催する際の注意点

本人確認を徹底する

バーチャル総会はなりすまし発生のリスクがあるため、本人確認を徹底しなければなりません。バーチャル総会の本人確認では、株主ごとに固有のIDとパスワードなど発行する方法が一般的です。事前に株主に送付する議決権行使書面などに、IDとパスワードを記載して通知を行いましょう。管理や本人確認に不備があると、議決権や発言権を悪用されてしまうケースもあります。株主番号・氏名・ID・パスワードなどをダブルチェックするなど、工夫を取り入れてトラブルを防止しましょう。

通信障害のリスクを認識する

バーチャル総会はインターネットを活用するため、通信手段の不具合のリスクがあります。主に考えられる通信障害の原因は以下の通りです。

  • 会場のネットワークの問題
  • 会場外のネットワークの不具合
  • 株主側のネットワークの問題
  • 災害の発生

通信障害への対策としては、回線の事前チェックやバックアップ回線の用意などが効果的です。リスクを最小限に抑えるために準備を整えましょう。

セキュリティ対策を万全にする

インターネットを介して株主や企業情報を扱う際は、セキュリティ対策を施さなければなりません。例えば、有効なセキュリティ対策は以下の通りです。

  • セキュリティが強固な配信ツールを選定する
  • ウイルス対策ソフトを見直す
  • 株主へセキュリティ対策の注意喚起を行う
  • サイバー攻撃も想定する

当日も専門のエンジニアを待機させるなど、サイバー攻撃も想定して対処を迅速に行える体制を整えましょう。

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まとめ

どこにいても株主総会に参加や出席を行えるバーチャル総会は、株主とのコミュニケーションをより充実させます。従来の株主総会では会場に赴くことが難しかった方でも、バーチャル総会であれば自宅などから気軽に出席可能です。インターネットを経由した双方向のクリアなやり取りを行えれば、株主総会や企業のイメージもより向上するでしょう。この記事を参考にして、バーチャル総会の開催を検討してみてはいかがでしょうか。

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