パワハラ防止が法制化、企業が取るべき対応とは?

カテゴリ:コラム 投稿日: 2019.1.30 tag: , ,

職場でのパワーハラスメント防止のため、厚生労働省は、企業のパワハラ防止措置を法制化する方針を表明しました。具体的には、パワハラの加害者への懲戒規定を定めたり、相談窓口を設置したりすることが義務づけられる見込みです。今回は、法律の具体的な内容と企業がとるべき対応について解説します。

パワーハラスメントとは

職場におけるパワハラの厚生労働省による定義は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」となっています。

上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当することや、業務上必要な指示や注意・指導の範囲内と認められる場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当するという点に注意しましょう。

 

パワハラ防止措置

パワハラ防止措置とは

厚生労働省は、企業に対してパワハラの防止策作りを命じる法律の整備を進めています。具体的には、相談窓口の設置や、発生後の再発防止策を企業に義務づけるものです。違反した企業への罰則規定は設けない方針ではあるものの、悪質な企業は公表するなどして、パワハラ防止策の実施が促進されることを目指しています。厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会では、2018年9月から防止対策についての議論が有識者や労使代表者らを交えて重ねられており、12月には法律制定に向けた報告書がまとめられました。現在、2019年の通常国会での関連法案の提出が見込まれています。

パワハラ防止措置が法制化される背景

パワハラの問題は業種・職種を問わず表面化しており、例えば人事行政をつかさどる人事院への苦情相談では、パワハラに関する相談の割合が年々増加しています。パワハラは職場内秩序を乱し、生産性や働く意欲を下げ、各組織の正常な業務運営を妨げる可能性があり、解決しなければいけない問題です。

現在、パワハラに対しては、民事裁判で加害者らへの慰謝料や損害賠償を請求する例が多いです。しかし、裁判で被害を立証するハードルは高く、すべての被害者が訴訟に勝てるわけではありません。また、民事裁判以外では、嫌がらせやいじめ、上司とのトラブルが原因でうつ病などの精神疾患にかかった人を対象に、診療費の給付や休業補償をする労働者災害補償保険の認定もありますが、こちらもすべてが認定されるわけではありません。

このように企業にとっても労働者にとっても大きなリスクとなっているパワハラを抑制し、減少させるためには、被害者の事後救済だけではなく、被害を予防する必要があると厚生労働省は考え、今回法整備が検討されています。

法整備を進める背景はもうひとつあります。それは、海外ではフランスやスウェーデン、ベルギーなどがパワハラ防止措置を企業に義務付けているのに対し、日本ではパワハラ防止措置に対する企業の法的な義務がないことです。同じハラスメントでもセクシュアルハラスメント(セクハラ)は男女雇用機会均等法、マタニティーハラスメント(マタハラ)は育児・介護休業法などで企業に防止措置が課せられていることもあり、パワハラに対する防止措置の義務づけが期待されています。

企業が行うべき措置

新たな法律が企業に求める防止措置の具体的な内容は今後指針が定められる予定ですが、現時点では、パワハラ防止措置を義務づけたうえで、働き手の相談に乗る社内の窓口を設けたり、事実関係をすみやかに調査・確認したりすることが想定されています。パワハラが起きたら速やかに被害者を保護し、加害者の処分を行うなど、適切な人事措置を求めることも検討されています。

パワハラ被害が生じてしまった場合は、再発防止策をつくり、被害者や加害者のプライバシーを守り、事実確認などに協力した関係者に不利益が及ばないような仕組みづくりが求められます。法律に違反した企業は是正指導や是正勧告などの行政指導の対象となり、悪質な場合は社名の公表をされる可能性があるため、企業は今後の動向を見定め、しっかりと制度を整える必要があります。

法整備の懸念点

法整備をめぐっては、パワハラと「指導」との線引きが難しく、過度なパワハラ防止措置による人材育成の阻害を懸念する声もあります。しかしそれ以上に、パワハラを防止しない場合のリスク(例えば職場の雰囲気が悪くなることや労働者の心の健康を害することによる生産性の低下、企業の安全配慮義務違反を問われ損害賠償を請求される可能性等)が大きいと考えられているため、法整備が推進されています。懸念の声に対しては、パワハラにあたるものとそうでないものの具体例を盛り込み、線引きを明確にする方針です。

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まとめ

増加するパワハラ被害の声や世論を受けて、厚生労働省はパワハラ防止措置の法整備を進めています。パワハラ防止措置が企業に義務づけられた場合、相談窓口の設置や、発生後の再発防止策の作成、加害者の処分等の適切な人事措置の整備をする必要があります。パワハラ防止措置が法的に義務づけられる時に備え、今から対応策を考えておきましょう。

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