【2024年1月更新】年金制度改正法によって変わるシニア層の働き方とは

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公開日:2021.2.20 最終更新日:2024.2.6
年金制度改正法_イメージ

女性や高齢者の就業が進んでいることに合わせて、年金制度を変更するため、2022年4月より年金制度改正法が施行されました。今回の改正ではパートなどの短時間労働者への年金適用拡大や繰り下げ受給の上限引き上げ、確定拠出年金の要件緩和などが含まれます。特にシニアや短時間労働者の働き方に影響を与えるため、正しく理解し、該当する労働者に説明しましょう。今回は、年金制度改正法の変更点の詳細とそれぞれの施行時期、シニア層と企業への影響について解説していきます。

年金制度改正の変更点と施行時期

2022年施行

厚生年金の適用範囲の拡大

2022年4月の改正で厚生年金の適用範囲が拡大しました。具体的には、常勤者の所定労働時間または所定労働日数の4分の3未満の短時間労働者であっても、一定の要件を満たせば加入できるようになります。
以下は現行制度における、短時間労働者を厚生年金(社会保険)に加入させる要件です。

  • 1週間の労働時間が20時間以上であること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 賃金が1ヶ月8.8万円以上であること
  • 学生でないこと

以前の現制度において、上記の要件を満たした短時間労働者を社会保険に加入させる義務があるのは、被保険者となる従業員が501人以上の事業所のみでした。しかし2022年4月今回、段階的に適用範囲を広げていくという改正がなされました。具体的には、2022年10月からは101人以上の事業所、2024年10月からは51人以上の事業所までが適用になりましたす。また、2022年の改正では、上記のうち「雇用期間が1年以上見込まれること」という要件は撤廃され、フルタイムと同様に2ヶ月以上となります。なお、5人以上の個人事業所で強制適用とされている業種(製造業、鉱業、土木建築業、電気ガス事業、清掃業、運送業など)に、弁護士や税理士などの士業も追加されます。

受給開始時期の選択肢の拡大

以前の制度では、公的年金の受給開始年齢は原則として65歳ですが、希望により60歳から70歳の間で受給開始時期を自由に決めることができました。65歳より前に受給を繰上げた場合、一年繰り上げにつき0.5%減額された年金(最大30%減)が支給され、支給開始年齢を66~70歳に繰下げた場合は一年繰り下げにつき0.7%増額された年金(最大42%増)を、生涯受給することになります。
しかし、近年では健康寿命が延びたことにより高齢者の就労期間も長くなっていることから、年金の受け取り方にも多様な選択肢を設ける改正が行われました。今回の改正では、繰り上げ受給の減額率は0.4%に引き下げられ、60歳で年金を受給開始した場合は24%の減額になります。繰下げ受給の場合の増額率は変わらず0.7%のままですが、受給開始年齢の上限を70歳から75歳に引き上げ、75歳まで受給を繰り下げると年金額は最大でプラス84%になります。この改正は、2022年4月に施行されたもので、対象となるのは2022年4月1日以降に70歳になる方です。

在職中の年金受給についての見直し

以前の制度では、年金の支給繰り上げをしながら働いている60~64歳までの方は、賃金などと年金受給額の合計が月額28万円を超えると、超過分の年金の支給が停止されてしまいました。改正後はこの制度が見直され、年金の支給停止の基準額が月額28万円から47万円に緩和されることになりました。65歳以上で働きながら年金を受給している方は、もともと基準額が47万円となっており、変更はありません。
また以前は、65歳以上で在職中の場合、退職時に年金額が改定されるまでは年金受給額が変わりませんでした。しかし、本改正により、65歳を過ぎてからも働いている場合、毎年10月に保険料の納付額をもとに年金受給額を見直し、年金額の改定が行われることになりました。これを在職定時改定といいます。在職定時改定制度があることで、長く働くメリットを感じることができるでしょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入要件の緩和

確定拠出年金(DC)とは、基礎年金や厚生年金のほかに掛金を積み立てて運用し、その積立額と運用収益をもとに支給される年金のことです。企業型DCと個人型DCがあり、企業型DCは企業が掛金を支払うもの、個人型DC(iDeCo)は個人が掛金を支払うものです。毎月の掛金を所得控除することができる、運用中の利益が非課税になる、年金受給時の税負担も軽くなるなどの、税制上の優遇措置があります。
これまで、企業型DCに加入している方がiDeCoに加入したい場合、各企業の労使の合意が必要でしたが、2022年10月にはこの要件が緩和され、原則加入できるようになります。また、受給開始時期の選択範囲については、これまでは60~70歳の間だったところ、2022年4月からは60~75歳に拡大されました。

   

2023年施行

特例的な繰下げみなし増額制度

特例的な繰下げみなし増額制度とは、70歳に達した日後に、65歳からの本来の年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合に、請求の5年前の時点で繰下げ受給の申出があったものとみなして増額された年金を一括で受け取ることとなる制度です。
この制度は、2023年4月から施行されたもので、従来は、70歳に達した後に本来受給を選択した場合、請求の5年以前の年金は時効により受け取ることができませんでした。しかし、この制度により、70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるようになりました。

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年金制度改正が与える影響

年金制度の改正は、女性や高齢者の労働者が増加していることを受けて、多様な働き方に対応できる年金制度を目指したものです。例えば、短時間労働者を厚生年金に加入させるべき企業の適用範囲を広げることにより、より多くの短時間労働者が社会保険制度を利用できるようになります。これにより、育児や介護でフルタイム勤務が難しい方やシニア世代の働き方にとって、短時間労働という選択肢が加わるでしょう。また、受給開始時期の選択範囲の拡大や、在職中の年金支給停止の基準額の緩和により、シニア世代が仕事を続けやすくなります。
今後、健康寿命が延びることによって老後の経済的な不安を抱える人が増える可能性があります。これからは、従来の「定年」という言葉に縛られず、生きがいとして仕事を続けることで金銭的不安を解消し、いきいきとした老後を目指す姿勢が必要なのかもしれません。本改正は年金制度の面からこのような生き方を応援していく試みに影響を与えるのではないでしょうか。また、企業にとっても、働く意欲のある人材を雇用形態にとらわれずに得ることができたり、経験豊かなシニア世代を採用したりすることによって、生産性の向上を期待することができます。

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まとめ

年金制度の本改正は、主にシニア世代の働き方に選択肢を増やす内容となっています。年金受給可能な年齢になってもまだまだ働ける、というシニア世代はたくさんいることでしょう。企業側も、制度改正に沿って積極的にシニア世代や短時間労働者を人材活用し、企業の発展につなげていきましょう。

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